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Anthropic

カナダ大手紙4社がAnthropicを提訴 — 1,350万件の記事を無断学習、ライセンス契約ゼロが致命傷か

10月20日、madrobot.blogが「Canada's biggest newspapers are suing Anthropic over 13.5 million articles」と題した記事を公開した。AIとジャーナリズムの衝突が新たな局面を迎えた。他のAI企業が報道機関とライセンス交渉を進めるなか、Anthropicは契約を一件も結ばないまま1,350万件の記事を学習に使用したとされる——この「ライセンス契約ゼロ」という事実が、訴訟の核心となっている。

10月20日、madrobot.blogが「Canada's biggest newspapers are suing Anthropic over 13.5 million articles」と題した記事を公開した。AIとジャーナリズムの衝突が新たな局面を迎えた。他のAI企業が報道機関とライセンス交渉を進めるなか、Anthropicは契約を一件も結ばないまま1,350万件の記事を学習に使用したとされる——この「ライセンス契約ゼロ」という事実が、訴訟の核心となっている。


誰が、誰を訴えたのか

2026年10月6日、Torstar(トロント・スター紙の親会社)、The Globe and Mail、Postmedia、The Canadian Pressの4社が、オンタリオ州高等裁判所にAnthropicおよびそのカナダ法人を相手取った訴状を提出した。

訴状によれば、AnthropicはClaudeの開発・運用のためにこれらの報道機関のウェブサイトから大量の記事を無断でスクレイピングし、現在も継続中だという。取得した記事数の内訳は以下の通りだ:

  • The Canadian Press:約420万件
  • Postmedia(PNI Maritimesを含む):約350万件
  • Torstar(Metrolandを含む):約350万件
  • The Globe and Mail:約230万件

合計1,350万件、いずれも2021年以降に取得されたとされる。

この4社グループは、2024年11月にも同じくオンタリオ州でOpenAIを相手取った訴訟を起こしており(現在も未解決)、Anthropicへの提訴はその続編にあたる。


4つの法的請求

訴状が掲げる主な請求は4点だ:

  • 著作権侵害:カナダ著作権法に反してClaudeの学習・運用に記事を複製した
  • 契約違反:ClaudeBotなどのクローラーが各サイトの利用規約(個人利用に限定)を無視した
  • 技術的保護手段の回避:ペイウォールやログイン認証を迂回してコンテンツを取得した
  • 不当利得:Anthropicが報道機関の損失を代償に不当な利益を得た

さらに訴状は、Claudeがユーザーへのレスポンスとして記事をそのまま、あるいは要約・言い換えて出力することで、読者を自社サイトから遠ざけ、広告収入や購読者数を減少させていると主張している。


ライセンス契約の欠如が核心

訴状の重要な論点は、Anthropicが他のAI企業と異なり報道機関とのライセンス契約を一切締結していない点だ。訴状は「他のAI企業は各国の出版社と誠実に交渉し、コンテンツクリエイターに適正な対価を支払う市場ベースの解決策を実現してきた」と指摘し、Anthropicが「合法的にコンテンツを取得する道を選ばず、あからさまに知的財産を盗用した(brazenly misappropriate)」と断じている。


請求額は最大数十億カナダドル規模

報道機関側が求める救済措置は2つ:

  1. 侵害1件あたり最大C$2万(カナダドル)の法定損害賠償(実損証明の代替)および懲罰的損害賠償
  2. 書面による同意なしに現在・将来の著作物を使用することを禁じる永久差止命令

1,350万件に法定上限を掛けると単純計算で数十億カナダドル規模になりうる。Broadcast Dialogueも「潜在的に数十億ドル」と報じている。


法的背景:米国の「フェアユース」はカナダでは使えない

元記事によれば、Anthropicは米国で著作者らから起こされたクラスアクションを15億ドルで和解したとされる(海賊版サイトから取得した書籍の保持が問題視された経緯があるとのことだが、訴訟詳細は元記事の記述に基づくものであり、公式確認情報については原典を参照されたい)。いずれにせよ、米国法の「フェアユース(fair use)」はカナダには存在せず、カナダで認められているのはより適用範囲の狭い「フェアディーリング(fair dealing)」のみだ。加えて、米国の連邦控訴裁判所はすでにあるAI企業がパブリッシャーのコンテンツで学習したケースでフェアユースを否定する判決を下しており、Anthropicにとって有利とは言えない状況だ。

タイミングも皮肉だ。Anthropicはちょうどノバスコシア州に初のカナダ国内データセンターを設置すると発表したばかりで、カナダとの関係を深めようとしている矢先の提訴となった。


なぜ日本のエンジニアにも関係するか

この訴訟はAnthropicに対する初の大手報道機関訴訟であり、「ニュース記事でのAI学習にライセンスが必要か」という問いにオンタリオ州裁判所が答えを出す可能性がある。日本でも生成AIと著作権の関係は議論の途上にあり(著作権法30条の4の解釈問題)、カナダでの判決は各国の法整備に影響を与えうる先例となる。

なお、Anthropicは各媒体の取材要請にコメントせず、まだ答弁書も提出していない。訴状の主張はいずれも法廷で審理されたものではない。


詳細はCanada's biggest newspapers are suing Anthropic over 13.5 million articlesを参照していただきたい。