powered by TechFeed
表示モード
Anthropic

Claude Mythos 5がAIループだけで量子回路設計の人間記録を次々塗り替える — ゲート数を最大17倍削減、一部タスクでは53時間で新手法を自力証明

10月18日、My Electric Sparksが「Claude Quantum Circuit Designs Beat Human Records」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAIモデル「Claude Mythos 5」が量子回路設計において人間の研究者が積み上げてきた最良のベンチマーク記録を8タスク中7タスクで上回ったという研究成果について詳しく紹介されている。

10月18日、My Electric Sparksが「Claude Quantum Circuit Designs Beat Human Records」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicのAIモデル「Claude Mythos 5」が量子回路設計において人間の研究者が積み上げてきた最良のベンチマーク記録を8タスク中7タスクで上回ったという研究成果について詳しく紹介されている。


ゲート数を最大17倍削減——何が起きたのか

2026年10月16日、Anthropicはシンプルな事実を公表した。Claude Mythos 5が、量子回路設計の8つのベンチマークタスクのうち7タスクにおいて、既存の最良論文を上回る設計を生成したというものだ。

評価スコアは「キュービット数 × ゲート数」で計算される。量子コンピュータの実機においてキュービットは希少かつ壊れやすく、特にトフォリゲート(量子コンピュータ上で最もコストの高い演算のひとつ)の削減は実用化に直結する。スコアが小さいほど、現存するハードウェアに近い設計になる。

具体的な数字を見ると、その改善幅は顕著だ:

  • ガウス関数タスク:ゲート数 24,000 → 1,583、キュービット数 362 → 139
  • HHL回転タスク:ゲート数 16,000 → 1,348
  • リード・ソロモン復号タスク:ゲート数 510万 → 44万(キュービット数は665 → 19)
  • クーロンポテンシャル・格子ゲージタスク:既存最良手法と比較したゲート数でそれぞれ9.9倍、7.7倍の削減

上記を含む6タスクで総合スコア(キュービット数 × ゲート数)が4〜39倍改善されている。


ループで動く研究——人間なしで53時間

仕組みはシンプルだ。研究チームは各タスクを平易な英語でClaude Mythos 5に与える。Claude Mythos 5はPythonで量子回路を構築するコードを生成し、別の検証器が回路の正しさを確認してスコアをフィードバックする。Claude Mythos 5はそのスコアをもとに再試行する。このループに人間は介在しない。

最も注目に値する結果のひとつが楕円曲線演算におけるモジュラー逆数計算だ。暗号研究者が注目するこのステップで、Claude Mythos 5は従来手法(分岐経路の履歴を全保存する必要がある)を捨て、新たな代数的恒等式を導出した。さらにその証明を**Lean(定理証明支援システム)で検証している。結果として、キュービット数は12%増えたものの、ゲート数は17倍削減された。このタスクの実行だけで53時間**を要した。

リード・ソロモン復号の設計変更はさらに具体的だ。旧設計は量子機械上で毎回余分なラウンドを必要とする「拡張ユークリッド復号」を使っていた。Claude Mythos 5は代わりに毎ラウンド同一ステップで動く「Berlekamp-Massey復号」を採用し、高速シミュレータを自ら書いて4億3百万回のサンプル復号を実行した。


この進捗の大きさを測る参照点

研究チームが引用するFeMoco(窒素固定酵素)シミュレーションの例が、量子回路最適化の難しさをよく示している。2017年時点では50兆トフォリゲートが必要とされていた。その後8年間、世界トップチームが段階的な研究の積み重ねによって3億4千万ゲートまで落とした。これは15万倍の削減だ。今回のClaude Mythos 5の結果は、そうした年単位の最適化作業がループで自動化できることを示している。


研究体制と留意点

本研究はAnthropicのSTEM Fellowsプログラムに参加するHarvard大学博士課程のAndi Guが主導した。Anthropicの物理学者Alek Kemeny、Harvard研究者のSusanne YelinおよびMikhail Lukin(量子コンピュータ企業QuEraの共同創業者でもある)と共同で執筆した46ページの論文は、2026年10月15日にarXivに投稿されている。

ただし、重要な留意点が2点ある。

  1. 実機での動作検証は行われていない。 すべての結果は通常のコンピュータ上のシミュレーションによる理論的推定だ。
  2. 査読はまだ通っていない。 独立した検証を待つ段階にある。

暗号への含意についても過大評価は禁物だ。楕円曲線の点加算は離散対数問題への量子攻撃に関係しており、現代暗号の根幹に触れる話ではある。しかしこの論文単体では何も破られていない。対象となるハードウェアは依然として数年先の話だ。


なぜ量子回路設計がAI研究に向くのか

多くの科学研究はAIが「それらしい答え」を出しても機械的に検証できない。量子回路設計は違う。普通のコンピュータで答えの正しさを検証できる。 この検証可能性がフィードバックループを成立させ、AIによる科学研究が特にフィットする領域になっている。

詳細はClaude Quantum Circuit Designs Beat Human Recordsを参照していただきたい。