10月20日、The Decoderが「MiniMax M3.1 Flash shows China's AI price race has no floor in sight」と題した記事を公開した。中国のAIスタートアップMiniMaxが新推論モデル「M3.1 Flash」をリリースし、前世代から13ポイントの性能向上を半額以下のコストで実現。DeepSeekとの価格・性能競争がさらに激化している。
MiniMaxとはどんな企業か
MiniMaxは2021年に設立された中国のAIスタートアップで、テキスト・音声・画像・動画を扱うマルチモーダルモデルの開発を軸に急成長してきた。Tencent、Hillhouse Capitalなどから出資を受けており、評価額は数十億ドル規模とされる。DeepSeekやByteDanceのDoubaoと並び、中国国内外で存在感を高めているプレーヤーの一つだ。日本ではまだ知名度が低いが、グローバルなAPI市場では着実にシェアを拡大しつつある。
前世代比13ポイント向上、コストは半額以下
MiniMaxが新しい推論モデル「M3.1 Flash」をリリースした。Artificial Analysis Intelligence Index(AIモデルの総合性能を測る評価指標)でのスコアは42点。前世代のM3(29点)から13点の向上を果たしながら、タスクあたりのコストは半額以下に抑えている。
同スコアでGLM-5.3-Flashと並び、Gemini 3.8 Flash(41点)をわずかに上回る。ただし、Deepseek V4.1 Flash 1017(45点)には及ばない。
競合との比較:得意・不得意がくっきり分かれる
M3.1 Flashとの比較で特に目を引くのが、**「Humanity's Last Exam」(難易度の高い複合推論テスト)で48%**を記録した点だ。これはDeepseek(43%)やGLM(スコア非開示)を上回る。
物理学の研究レベルの推論を評価するCritPtベンチマーク(71問の複雑な問題で構成)では22%を記録。GLM-5.3-Flash(15%)とGemini 3.8 Flash(18%)を超えるが、Deepseek(24%)には届かない。
事実の正確性を測るAA-Omniscienceテストでは56%の正答率を達成。GLM-5.3-Flash(28%)やDeepseek(43%)を大きく引き離している。
一方、弱点もある。Artificial Analysisの測定では**ハルシネーション率が93%**という高い数値が報告されている。ただしこの数値の解釈には注意が必要だ。Artificial Analysisの定義では、モデルが不確かな質問に対しても回答を拒否せず必ず何らかの答えを返す設計のモデルほど、この指標が高く出る傾向がある。つまり「嘘をつきやすい」という単純な意味ではなく、「どんな質問にも答えようとする積極性の裏返し」として現れる数値でもある。同様の設計思想を持つモデルは他社にも存在しており、この数値だけでモデルの信頼性を判断することは適切ではない。
MiniMax-M3.1-Flashは前世代M3の29点から42点へジャンプしつつ、タスクあたりコストを大幅に削減。| 画像: AA
価格と仕様
- コンテキスト長:最大100万トークン(テキスト・画像の両入力に対応)
- API pricing:入力 $0.15/百万トークン、出力 $0.60/百万トークン、キャッシュ済み入力 $0.015
- タスクあたりコスト:約 $0.22(Deepseekの$0.26より安い)
- 処理速度:前世代M3の3倍
コストが安い理由のひとつは、出力トークン数の少なさだ。ベンチマーク全体での出力トークン数はMiniMaxが約1億8,900万トークンに対し、Deepseekは約2億2,400万トークン。トークン数の節約がそのままコスト削減につながっている。
DeepSWE v1.1では$0.30以下のコストで最大73.7%のスコア。| 画像: MiniMax
APIはplatform.minimax.ioで公開中。デスクトップアプリ「MiniMax Code」も提供されている。オープンウェイトでの公開は10月23日を予定している。
Deepseekとの直接対決:どちらが上か
直近でリリースされたDeepseek V4.1 Flash 1017と比べると、どちらが一方的に勝っているわけではない。
| 指標 | MiniMax M3.1 Flash | Deepseek V4.1 Flash 1017 |
|---|---|---|
| Intelligence Index | 42点 | 45点 |
| Humanity's Last Exam | 48% | 43% |
| CritPt(物理推論) | 22% | 24% |
| AA-Omniscience(事実正確性) | 56% | 43% |
| タスクあたりコスト | $0.22 | $0.26 |
DeepseekはすでにHugging Faceでオープンウェイトを公開しており、MiniMaxは10月23日に続く予定だ。
中国AI価格競争の「底」は見えない
MiniMaxとDeepseekという中国の2大プレーヤーが、性能を高めながらコストを削り続けている。今回のM3.1 Flashは、その傾向を改めて示した一例だ。どちらのモデルも特定の指標でリードしており、単純な優劣はつけにくい。ただ、両者がオープンウェイトを公開し、APIコストを下げ続けるという方向性は一致している。この競争が欧米や日本のAIプロバイダーの価格戦略にどう波及するかは、引き続き注目に値する。
詳細はMiniMax M3.1 Flash shows China's AI price race has no floor in sightを参照していただきたい。




