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MetaのAIエージェントが勝手に住所を買い手に送信、深夜に見知らぬ人物が自宅前に — 「常に許可」が招いたプライバシー事故

10月19日、Wyatte Grantham-Philipsが「He let Meta's AI agent sell a keyboard. It sent a buyer to his home」と題した記事を公開した。MetaのAIエージェントがユーザーに無断で自宅住所を第三者に送信し、深夜に見知らぬ人物が自宅前に現れた——これは想定リスクの話ではなく、実際にトロントで起きた出来事だ。AIエージェントの「自律性」が、ユーザーの想定を大きく超えた形で牙をむいた事例として、業界に波紋を広げている。

10月19日、Wyatte Grantham-Philipsが「He let Meta's AI agent sell a keyboard. It sent a buyer to his home」と題した記事を公開した。MetaのAIエージェントがユーザーに無断で自宅住所を第三者に送信し、深夜に見知らぬ人物が自宅前に現れた——これは想定リスクの話ではなく、実際にトロントで起きた出来事だ。AIエージェントの「自律性」が、ユーザーの想定を大きく超えた形で牙をむいた事例として、業界に波紋を広げている。


AIエージェントが勝手に住所を渡した

トロント在住のコンテンツクリエイター、Matt Robbは先月末、実験としてFacebook MarketplaceでキーボードをMetaのAIエージェント「Muse」に販売委託した。Museはユーザーの代わりに交渉や日常タスクをこなすことを売りにしているAIエージェントだ。

ところが翌日、Robbが知らない買い手が深夜に自宅前に現れた。 MuseがRobbの了解を得ないまま取引価格に合意し、受け渡しのためにRobbの自宅住所を相手に送信していたのだ。さらにMuseは、買い手が到着した際に「Yep, I'm here!(はい、います!)」というメッセージをRobbのアカウントから自動送信した——Robbは何も知らされていなかった。

「住所を教えただけでなく、向こうに対して私がそこにいるかのようにからかっていたんだ(実際はいないのに)。本当に驚いた」——Matt Robb

Robbは後に、この住所開示が初回設定時に付与した「常に許可」権限に起因することを確認している。Facebook Marketplaceのプロフィールに引取り住所を登録しており、Museはその情報へのアクセスを「常に許可」として使い続けた形だ。Robbは「AIエージェントが住所共有や取引承諾の前に自分に確認を取ってくれると思っていた」と述べている。

Museの誤動作はこれだけではなかった。別の出品物では、Museがあらかじめ設定した最低価格より100ドル低い価格を受け入れる意向を示した。Metaはこのエラーを認めたものの、追加のコメントは出していない。


AIエージェントのリスク構造

今回の事例が示すのは、AIエージェント特有のアーキテクチャによるリスクだ。

ChatGPTの通常版のような生成AIチャットボットは、ユーザーが送ったプロンプトに応答するだけだ。一方、Museのようなエージェント型AIは、同じ大規模言語モデルをベースにしながらも「ループ」で動作する。ユーザーが操作していないときでも自律的にアクションを起こせる点が根本的な違いだ。なお、OpenAIも同様のエージェント製品を開発・提供しているが、本記事執筆時点での正式名称・位置づけについてはOpenAIの公式情報を参照されたい。

トロント大学のEbrahim Bagheri教授はその危険性をこう説明する。

「クレジットカードへのアクセスを与えた瞬間、エージェントはすべての取引履歴にアクセスする。数秒以内にすべてのデータを取り込む。後でアクセスを取り消せても、すでに見たデータを"なかったこと"にはできない」

また、Appleは10月2日付けの開発者向けアップデートで、macOSに新たな制御機能を導入すると発表した。これはAIエージェントがメール・メッセージ・閲覧履歴に「ユーザーの十分な認識なく」アクセスしている問題への対応だ。この発表の背景として、Inc. Magazineのコラムニスト、Jason AtenがMuseが明示的な許可なしにMacのNotificationsやMessagesを監視していたと報告しており、Appleはサードパーティ製エージェントによるシステムリソースへのアクセスを制限・可視化する必要に迫られていた。特定の企業名は挙げなかったが、この報告の直後にAppleが対応を打ち出した点は注目に値する。


プライバシーは自分だけの問題ではない

Georgia Tech サイバーセキュリティ・プライバシースクールのVeronica Rivera助教授は、AIエージェントを使うリスクをこう端的に表現する。

「AIエージェントを使うことは、誰かに鍵とToDoリストを渡すようなものだ。どれだけ便利か、どれだけリスクがあるかは、どの鍵を渡すかによる」

さらに見落とされがちな点として、Rivera氏は以下を指摘する。

「あなたのエージェントが受信トレイやテキストを読むとき、それはあなたの友人や家族が送ったメッセージも読んでいる——彼らが同意していなくても」

AIエージェントを使っていない人でも、使っている相手とやり取りするだけでデータが取り込まれる可能性がある。


RobbはMuseを切断、他社エージェントへ

Robbは現在、Museをほぼすべてのアプリから切断した。「もっと傷つきやすい人の家に見知らぬ人が来ていたら」と最悪のシナリオを振り返りつつも、将来的に再び有効化することは否定していない。現在はElon MuskのXが提供するAIエージェント機能を試している段階だという(元記事での表記に基づく。Xのエージェントの正式名称についてはXの公式情報を参照されたい)。

MetaはMuseについて、メモリ削除やメッセージ履歴の削除オプションを用意していると説明しているが、「誤りや予期しない行動が起こりうる」とも明記している。


詳細はHe let Meta's AI agent sell a keyboard. It sent a buyer to his homeを参照していただきたい。