10月19日、CNBCが「Anthropic is AI trade's last big hope for a major IPO this year」と題した記事を公開した。予測市場でAnthropicのIPO確率が75%を示す一方、OpenAIは3%、Databricksは1%にまで急落——この極端な対比が、2026年の大型IPO市場の現状を象徴している。さらにバリュエーションの想定レンジが2兆ドル超から1.5兆ドル始まりへ下方修正されたことで、残り唯一の有力候補であるAnthropicへの目線も厳しさを増している。
OpenAI・Databricksが脱落、残るはAnthropicのみ
2026年初頭、投資家はSpaceX、Anthropic、OpenAIといったメガキャップ未公開企業のIPOに期待を寄せていた。しかし現時点では、OpenAIがCEOのSam Altmanによる「AI安全性への懸念からIPOは時期尚早」との発言を受けて2026年の上場を見送り、他の有力候補も相次いで延期している。
予測市場プラットフォームのKalshiでは、23社の未公開企業について「2026年中に正式なIPOを発表するか」を取引している。Kalshiは賭け市場型の仕組みで確率を算出するサービスで、参加者が「実現する/しない」に資金を張ることで、市場全体の期待値がリアルタイムに価格へ反映される。日本では馴染みが薄いが、米国では選挙や経済指標の予測にも広く使われている。10月時点で50%超の確率が付いているのはAnthropicのみ(75%)だ。
他社の現状は以下の通りで、年初からの急落が目立つ。
| 企業 | 1月時点の確率 | 現在の確率 |
|---|---|---|
| OpenAI | 高水準 | 3% |
| Plaid(フィンテック) | 50% | 10% |
| Deel(HR・給与) | 50% | 3% |
| Databricks(クラウド・AI) | 50%超 | 1% |
なお、Kalshiにおける「正式発表」の定義は、SECがS-1を有効化、IPO価格決定、または証券取引所がティッカーシンボルを付与した時点とされている。
Anthropicが6月に機密扱いでS-1を提出済み
Anthropicは2026年6月初旬にSECへ目論見書を機密扱いで提出しており、上場に向けた手続きは実際に進んでいる。この機密提出(confidential filing)は、正式なS-1公開前に当局との調整を非公開で進められる手法で、上場を本格的に検討している企業が利用する。
一方でIPO全体の動向は厳しい。SpaceXが6月に大型デビューを果たしたことで年間調達額は増えているが、2026年の米国IPO件数は2025年比で33%減(Renaissance Capital調べ)と、数量ベースでは落ち込んでいる。
直近の懸念材料:減速する収益成長とバリュエーションの引き下げ
楽観的なシナリオに水を差したのが、10月15日に開示されたAnthropicの第3四半期売上高だ。絶対値としては成長を示しているが、前四半期比での成長率が過去に比べて鈍化した。
※なお、元記事に記載されている売上高の数値については、原文表記との照合が取れていないため本稿では具体的な数字の転記を避けている。元の数値は元記事にて直接確認されたい。
22V Researchのアナリスト、Dauvin Petersonは次のように指摘している。
「9月の売上成長鈍化の原因と、LLM(大規模言語モデル)の価格競争といったダイナミクスを踏まえてAnthropicが市場期待の成長率を維持できるのかについて、答えよりも疑問が多く浮上した。結果として、IPOのバリュエーション想定レンジが従来の2兆ドル以上から1.5兆ドル始まりに下方修正されたことは失望感を呼び、すでに圧力下にあったAI関連株の売り材料となった。」
LLMの価格競争とは、GPT-4o、Claude、Geminiなど各社の主力モデルがAPIの利用単価を引き下げ合っている状況を指す。Anthropicにとっては収益の柱であるAPI事業の単価下落が、将来の収益予測に直接影響する構図だ。
IPO延期が加速する市場環境
Renaissance Capitalによると、IPOの延期は第3四半期にかけて加速しており、AI・テック以外のセクターでも広がっている。投資家はAI関連の大型企業が公開市場に出てくることで、より大きな資本プールへのアクセスを期待している。しかし成長鈍化とバリュエーション修正が続けば、その期待も揺らぎかねない状況だ。
KalshiのデータではOpenAIが2027年6月までに正式発表する確率でさえ50-50にとどまっており、AI主要企業のIPOに対する市場の見方は慎重になっている。
詳細はAnthropic is AI trade's last big hope for a major IPO this yearを参照していただきたい。




