10月19日、Dick Weisingerが「China's AI Export Rules Exempt APIs」と題した記事を公開した。この記事では、中国が大規模AIモデルなど23カテゴリの技術を輸出規制対象に追加する草案を発表したが、API経由のサービス提供は適用除外とされている点について詳しく紹介されている。
API経由なら規制対象外——意図的な適用除外の設計
今回の規制草案で最も注目すべき点は、API・アプリ・ウェブサイト経由で提供される海外向けサービスは明示的に適用除外とされていることだ。
中国の商務部と科学技術部は10月16日、大規模AIモデル・自律型エージェント(AIが自律的に目標を設定し、複数のステップにわたってタスクを実行するシステム)・サーバークラスター技術(大規模モデルの学習・推論に用いる複数サーバーの連携構成)を含む23カテゴリのAI関連技術を輸出制限または禁止リストに追加する草案を公表した。パブリックコメントの締め切りは11月15日。
この草案が対象とするのは物理的な技術移転、すなわちモデルの重み(weights:ニューラルネットワークの学習済みパラメータ群であり、モデルの知的資産の核心をなす部分)や設計図そのものを海外に持ち出す行為だ。一方、SaaSやクラウドAPIとして海外ユーザーに提供するサービス、さらにすでに公開済みのオープンソースモデルは規制対象から外れる。
規制の意図は明確だ。記事では「中国のモデルプロバイダーがクラウドインターフェースを通じて海外で展開するビジネス上のシェアを守りつつ、基盤となるモデルの重みやハードウェアクラスターの設計に対する管理を維持するため」と説明されている。西側諸国が中国のAIサービスを遮断しにくくしながら、コア技術の流出は防ぐという二段構えの設計であり、記事はこれを「抜け穴」ではなく政策上の意図的な整合設計として評価している。
規制の全体像
草案全体では40カテゴリの技術が対象で、AI以外にバイオ医薬品や太陽光発電も含まれる。内訳は禁止14件・制限26件。
また、正式施行前から技術の国境越え移転を把握するため、対象技術の輸出事前登録制度が10月16日から開始されている。規制の実効性を担保する仕組みを先行して整備している点は、今回の草案が単なる方針表明にとどまらず、執行を見据えた制度設計であることを示す。
曖昧さが残る部分
草案にはまだ不明確な点がある。
- オープンソースリリースに適用される「簡略承認手続き」の定義が明示されていない
- 外国法人に移転された知的財産権の追跡・執行メカニズムが未詳
オープンソースモデルを適用除外としながら「簡略手続き」の詳細を未定のまま残している点は、実務上の解釈余地を生む可能性がある。パブリックコメント期間中にどこまで具体化されるかが注目される。
米中AI規制競争の文脈
今回の動きは、米中間のAI・半導体技術をめぐる規制競争が激化する中で出てきたものだ。米国は2022年以降、先端半導体および半導体製造装置の対中輸出規制を段階的に強化しており、Nvidiaの高性能GPU(A100・H100等)の輸出制限や、その規制回避を防ぐための包括的な規制網の整備が進んでいる。中国側の規制整備は、こうした米国の動きへの対抗措置としての側面を持つ。
注目すべきは、中国がAPIによるサービス提供を意図的に除外した点だ。これは、DeepSeekやBaidu(百度)などの中国系AIプロバイダーが海外市場でクラウドサービスとして展開するビジネスモデルを保護しながら、モデル本体の設計資産が海外企業の手に渡ることを防ぐ政策的な均衡点といえる。規制と市場展開を同時に成立させる構造は、中国のAI産業政策の方向性を端的に示している。
中国のAI政策・規制の全体像については、China AI Policy and Regulationも参照できる。
詳細は「China's AI Export Rules Exempt APIs」を参照していただきたい。




