10月21日、madrobot.blogが「Anthropic made $16.3 billion in six months and lost $80.7 billion, its draft IPO filing shows」と題した記事を公開した。AnthropicのIPO目論見書草案が明らかにした2026年上半期の売上163億ドル・純損失807億ドルという財務数字について詳しく紹介されている。
売上は前年同期比15倍、ただし損失はさらに大きい
AnthropicがSEC(米証券取引委員会)に機密扱いで提出したS-1(IPO目論見書)の草案を、Wall Street Journalが入手・報道した。これが2026年の同社財務数字が外部に伝わった初めての機会となる。
なお、S-1とはSECへのIPO登録申請書類のことで、企業は上場前に機密提出(confidential filing)が認められており、公開版の開示はIPO直前となる。今回報道されたのはその機密提出段階の草案だ。
2026年上半期の売上は163億ドル。2025年上半期の11億ドルと比較すると、約15倍の増収だ。2025年通年の売上が約46億ドルだったことを考えると、その急拡大ぶりが際立つ。
一方、同期間の純損失は807億ドル。この数字は一見すると常軌を逸しているが、内訳を見ると構造が見えてくる。
807億ドルの損失のうち720億ドルは「紙の上の損失」
Reutersの報道によれば、807億ドルの損失のうち約720億ドルは、転換社債などの金融商品の時価評価に伴う会計上の費用だ。転換社債(convertible notes)とは、将来的に株式へ転換できる社債のことで、企業価値が上昇するほど「将来交付すべき株式の価値」が膨らみ、会計上は負債の増加として計上される。要するに、Anthropicの評価額が上がれば上がるほど、この会計上の損失も大きくなる仕組みだ。
これを除いた実質的な損失は約87億ドル。それでも巨額だが、2025年上半期の130億ドルよりは縮小している。なお、Anthropicは独自の調整後指標(非GAAP)では2025年第2四半期・第3四半期に黒字化したと投資家に説明しているとされるが、これが2026年上半期の業績と混在しないよう留意が必要だ。元記事の記述では、当該の黒字化はあくまで2025年時点の四半期単位の話として言及されている。
コンピューティングに約4500億ドルの長期契約
もう一つの注目数字がインフラコストだ。Anthropicは2026年上半期だけで約90億ドルをコンピューティング設備とインフラに支出した。2025年通年の73億ドルをわずか半年で超えている。
さらに、今後10年間のクラウドコンピューティング契約として約4500億ドル分を締結済みだ。内訳はGoogle Cloudに約1110億ドル、AWSに約1100億ドル、Microsoftに約310億ドル。加えて、交渉中の案件を含めると今後数年で最大7500億ドルを費やす可能性があるとも記されている。目論見書では、大手クラウドプロバイダーが要求量を満たせなかったため、サードパーティのデータセンター事業者にも頼らざるを得ないと説明している。
売上の20%が2社に依存
リスク要因として開示された内容も目を引く。2026年上半期売上の約20%が2社の顧客に集中しており(社名は非開示)、2025年は同様に約25%だった。大口顧客への依存は依然として高い。
また、リスク項目にはモデルのアライメント(安全性への整合)の問題や、深刻なAI関連のセキュリティインシデントが発生した場合に損害賠償が保険の限度額を超える可能性についても明記されている。ソフトウェア企業のIPO書類としては異例の踏み込んだ記述だ。
IPOは11月に予定、評価額は約2兆ドル
上場は11月が予定されており、評価額は約2兆ドルとされている。S-1の公開版はそれ以前に開示される見込みだ。今回の数字はまだ機密提出段階のものであり、公開時に変更される可能性がある。
163億ドルという売上の急成長と、コンピューティングへの天文学的な支出コミットメントのどちらに重きを置くか——2兆ドルの評価額が妥当かどうかの判断は、まさにその解釈次第だ。
詳細はAnthropic made $16.3 billion in six months and lost $80.7 billion, its draft IPO filing showsを参照していただきたい。




