10月21日、BleepingComputerが「OpenAI says GPT-6.1 Sol is dramatically better at migrating legacy code」と題した記事を公開した。この記事では、OpenAIの新モデル群がCOBOLやFortranといったレガシー言語のコード移行において大幅な性能向上を達成したことについて詳しく紹介されている。
レガシーコード問題:捨てられない遺産
レガシーコードの現代化は、長らくエンジニアの頭を悩ませてきた問題だ。COBOLは世界のオンラインバンキングシステムの40%以上、対面クレジットカード決済の**80%、ATM取引の95%**を支えており、今すぐ捨てるという選択肢はない。しかし、COBOLを読み書きできるエンジニアは年々減り続けている。
こうした背景のもと、OpenAIは公式ブログにて、GPT-6.1 SolおよびGPT-6 Astraがレガシー言語の移行タスクにおいて前世代から桁違いの精度向上を達成したと発表した。なお、GPT-6.1 SolはAPIコスト効率を重視した推論特化モデルであり、GPT-6 AstraはOpenAIが新設したベンチマークで比較対象として用いた上位モデルという位置付けだ。両者は同一ファミリーに属するが、用途と推論コストが異なる。
COBOLからRustへ:97.9%の移行精度
OpenAIが発表した内容の核心は、GPT-6.1 SolがCOBOLプログラムをC++、Java、Kotlin、Python、Rustに移行するタスクにおいて、前モデルと比較して桁違いの精度を叩き出したという点だ。
「GPT-6.1 Solは低い推論コスト設定で86.6%の精度を達成した。同じ設定でのGPT-5.6 Solの精度は**5.4%に過ぎず、APIコストは61%で済む。高い推論コスト設定では精度は97.9%**に達し、評価が飽和に近づく」
— OpenAI 公式ブログ
5.4%から86.6%という跳躍は、単なるチューニングの改善ではなく、質的な変化と見るべき数字だ。
MultiLangBench:20言語でSQLiteエンジンを一から実装
性能測定のために、OpenAIはMultiLangBenchという独自ベンチマークを新設した。内容は「SQLite互換のデータベースエンジンを20のプログラミング言語でゼロから実装する」というもので、言語ごとの実装能力を直接比較できる設計になっている。従来のコーディングベンチマークの多くがPythonやJavaScriptなどメジャー言語を中心に評価してきたのに対し、MultiLangBenchはCOBOLやFortranといった「低リソース言語」を正面から評価対象に据えた点に意義がある。
レガシー言語の移行支援という観点では、GitHub CopilotやAmazon Q Developerもコード変換・モダナイゼーション機能を提供しているが、COBOLを含む低リソース言語への対応や、こうした体系的なベンチマーク評価の公開はOpenAIが先行している。
このベンチマークでGPT-6 Astraが記録したテスト通過率は平均**87.4%。前世代のGPT-5.6 Solの26.8%**から大幅に向上した。言語別の内訳は以下の通りだ。
| 言語 | GPT-5.6 Sol | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
| COBOL | 10.9% | 72.1% |
| Fortran | 21.4% | 83.5% |
| OCaml | 25.6% | 85.8% |
| Visual Basic | 27.5% | 89.4% |
COBOLが10.9%から72.1%というのは特筆すべき数字だ。COBOLはPythonやJavaScriptと比べてモデルが学習できるコードや文書が圧倒的に少ないにもかかわらず、ここまで精度が上がった理由についてOpenAIは詳細を明かしていない。
Fortranも同様で、気象予報や原子炉の安全解析などの分野で今もなお現役の言語だ。
実務への影響:「専門家によるレビューは依然として必要」
OpenAI自身も「本番環境への移行には専門家によるレビューとテストが引き続き必要だ」と明記している。97.9%の精度は実用的に高い水準だが、金融・インフラ系システムにおける残り2.1%のエラーは致命的になり得る。あくまで移行作業の補助ツールとしての位置付けだ。
それを踏まえてもなお、これまでCOBOL移行プロジェクトが抱えていた「そもそも動くコードに変換できない」という根本的な課題を突破しつつあるのは確かだ。5.4%から86.6%への改善は、ツールとして使えるかどうかのボーダーラインを大きく超えた変化を意味する。人手不足が深刻化するCOBOL領域において、AIによる移行支援が現実的な選択肢として浮上してきたと言える。
詳細はOpenAI says GPT-6.1 Sol is dramatically better at migrating legacy codeを参照していただきたい。




