10月22日、madrobot.blogが「Meta is creating a new class of shares to pay for its AI race, and Zuckerberg keeps control」と題した記事を公開した。MetaがAI投資の資金調達のために新たな無議決権株(クラスC株)を創設し、ザッカーバーグが経営支配権を維持したままAI競争を加速させる構造について詳しく紹介されている。
クラスC株の新設——議決権を渡さずに資金を引き込む
今回の最大のポイントは、Metaが新たな株式クラスを設ける点だ。無議決権のクラスC株を上場させ、資金調達・従業員報酬・M&Aの対価に使える手段を増やす。株主はすでに書面同意で承認済みで、2027年1月19日に新定款が発効する予定だ。
仕組みはシンプルだ。クラスAおよびクラスBの既存株主は、保有株1株につき1株のクラスC株を株式配当(stock dividend)として受け取る。株式配当とは現金ではなく株式を対価として分配する形式で、既存株主の持ち分比率は希薄化しない。MetaはクラスAが実質的に2対1の株式分割後のように取引されると見込んでいる。
肝心なのは議決権に変化がない点だ。ザッカーバーグは1株10議決権のクラスB株を通じて過半数の議決権を握っている。無議決権の株をいくら発行しても、彼の支配力は揺るがない。
このような複数クラス株式構造(Dual-class share structure)はMetaに限った話ではない。GoogleはクラスA・B・Cの三層構造を2014年に導入し、SnapはIPO時にクラスA株主に議決権を一切与えない設計を採用している。いずれも創業者や経営陣が市場から資金を調達しつつ経営判断の主導権を手放さないための仕組みだ。Metaのクラス C株創設は、この流れに沿った判断といえる。
ただし、ザッカーバーグが自由にクラスC株を換金できるわけではない。SECに提出されたFounder Alignment Agreementによると、彼が受け取るクラスC株のうち自由に売却できるのは20%のみ。残り80%を売るには、対応するクラスAまたはクラスBを同数売却・転換する必要がある。つまり、大量の現金化は議決権の放棄を伴う設計だ。
Q3決算は予想超過——ただし法的費用が重くのしかかる
Q3の売上高は前年比26%増の644億ドルで、自社予想レンジ(610〜640億ドル)の上限を超えた。
しかし問題は費用側だ。98億9000万ドルの法的費用が営業利益を37%押し下げ、130億ドル弱まで落ち込んだ(一時費用を除けば229億ドル)。この費用は、52の州司法長官がMetaを相手取って起こした訴訟——プラットフォームが青少年のメンタルヘルスに悪影響を与えたとする集団的な法的追及——との和解合意に伴い計上されたものだ。米国の大半の州が原告に名を連ねた異例の規模の訴訟であり、その和解金がこの時期に一括計上された形となる。
設備投資がキャッシュフローを超過
AIインフラへの投資規模を示す数字が際立っている。
- Q3の設備投資(ファイナンスリース支払いを含む):349億1000万ドル
- 同期間の営業キャッシュフロー:327億9000万ドル
- フリーキャッシュフロー:マイナス21億2000万ドル(前年同期はプラス106億3000万ドル)
2026年通年の設備投資見通しは1350億〜1450億ドル(下限を従来の1300億ドルから引き上げ)。大半はオハイオ州のPrometheusスーパークラスターなど、GPU100万基規模のデータセンター建設に充てられる。
2027年の具体的な数字は示されていないが、Metaは「引き続き積極的な投資を継続する」と明言している。一方でVR/ARを手がけるReality Labsの赤字は、今年の180〜190億ドルから来年は約150億ドルに縮小する見通しで、その分の予算がAIに振り向けられる。
AI投資の現在地——「Muse Wonder」はOpenAIに追いついたとMetaは主張
ザッカーバーグはQ3について以下のように述べた。
今四半期、パーソナルな超知性をすべての人に届けるための重要なマイルストーンを達成した。最初のフロンティアモデルであるMuseとMuse Wonderを発表した。投資は実を結びつつある。コア事業は好調で、あらゆる面でスピードが上がっている。
ここで登場する「Muse」および「Muse Wonder」は、Metaが社内に設立したMeta Superintelligence Labs(メタ超知性研究所)が開発するフロンティアAIモデルだ。同研究所はOpenAIやGoogle DeepMindと正面から競合することを明確に掲げた組織として位置づけられており、著名AI研究者の積極採用でも注目を集めている。MuseはMetaが初めて「フロンティアモデル」と公称した大規模言語モデルで、Muse Wonderはその上位・強化版にあたるとされる。
MetaはAIがすでに「広告収益の大幅な上乗せ」をもたらしていると説明する。Q3の広告インプレッションは前年比10%増、広告単価は14%増だった。
ただし、Meta Superintelligence Labsへの投資については、「コア事業よりもリターンの実現に時間がかかる」と自ら認めている。
構造の本質
今回の株式再編が示すのは一つのことだ。MetaのAI投資は事業が生み出すキャッシュを超え始めており、外部から資金を引き込む新たな仕組みが必要になったという現実だ。クラスC株はその手段として機能しながら、ザッカーバーグの支配権を温存する設計になっている。広告事業の成長がこの構造を支えている間は問題ないが、フリーキャッシュフローが既にマイナスに転じた事実は、投資の規模感を端的に示している。
詳細はMeta is creating a new class of shares to pay for its AI race, and Zuckerberg keeps controlを参照していただきたい。




