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ビジネス・マーケット

TSMCの売上高が前年比51%増、AI向け半導体需要が旺盛すぎて「制約は需要でなくキャパシティ」と言わしめる水準に

10月21日、Mitch Ashleyが「TSMC Q3 FY 2026 Earnings Beat and Raise on AI and HPC Demand」と題した記事を公開した。TSMCの2026年度第3四半期決算で最も衝撃的な一文は、CC・ウェイCEOによる「制約要因は需要ではなくキャパシティだ」という発言だ。AI向け半導体の受注が積み上がる一方、製造能力の限界がボトルネックになっているという異例の状況を端的に示しており、同社は売上高前年比50.9%増という記録的な数字を叩き出しながらも、なお需要に追いつけていない。

10月21日、Mitch Ashleyが「TSMC Q3 FY 2026 Earnings Beat and Raise on AI and HPC Demand」と題した記事を公開した。TSMCの2026年度第3四半期決算で最も衝撃的な一文は、CC・ウェイCEOによる「制約要因は需要ではなくキャパシティだ」という発言だ。AI向け半導体の受注が積み上がる一方、製造能力の限界がボトルネックになっているという異例の状況を端的に示しており、同社は売上高前年比50.9%増という記録的な数字を叩き出しながらも、なお需要に追いつけていない。


AI需要がTSMCの業績を押し上げ、売上高は前年比50.9%増

TSMCが2026年9月30日を末日とする第3四半期(Q3 FY 2026)の決算を発表した。連結売上高はNT$1兆4,942億(約US$467億)で、前年同期比50.9%増、前四半期比17.6%増となり、市場コンセンサス(NT$1.45兆〜1.47兆)および自社ガイダンスの上限を上回った。

最大の牽引役はHPC(High Performance Computing:高性能コンピューティング)だ。HPC売上高は前四半期比22%増で、全体売上の**68%**を占める。スマートフォンは同10%増で21%。半導体業界では長らく「PCやスマホが主役」という構図が続いていたが、AIアクセラレーター需要が本格化するにつれ、TSMCの売上構成は急速にHPC中心にシフトしている。

純利益はNT$7兆6,306億ではなくNT$7,630.6億(前年同期比68.7%増)。希薄化後EPSはNT$29.43(ADR換算でUS$4.60)。営業利益はNT$8,764.5億で前年同期比75.0%増と、収益性の改善も鮮明だ。

ウェイCEOは「AIの市場は依然として非常に強い。最近の動向はAIの長期需要見通しにとって非常にポジティブだ」と述べた。


プロセスノード別の内訳:2nmがついに8%に

ウェーハ売上に占める先端プロセス(7nm以下)の比率は**79%**。内訳は以下の通りだ。

  • 3nm:33%
  • 2nm(N2):8%
  • 7nm以下合計:79%

N2ノードは今四半期から本格的な立ち上げ(ランプアップ)フェーズに入っており、8%という数字はその初期貢献を示す。管理層はAIアクセラレーター、エージェント型AIに向けたCPU、ネットワークチップが需要を牽引していると説明した。

AIアクセラレーター向け売上は2024〜2029年にかけてCAGR50%台中〜後半で成長すると従来から見込んでいるが、ウェイCEOはその数字が「保守的すぎる可能性がある」と示唆した。

TSMCは先端ロジック半導体の受託製造において圧倒的なシェアを持つ。競合のSamsungやIntel Foundryも先端プロセスへの参入を図っているが、歩留まりや技術成熟度の面でTSMCとの差は依然大きいとされており、AI向け最先端チップの製造はTSMCに集中しやすい構造が続いている。この独占的地位が、冒頭の「制約はキャパシティ」という発言の背景にある。

※編集部の考察:TSMCへの需要集中は地政学リスクとも表裏一体だ。米中間の輸出規制強化や台湾有事シナリオへの懸念から、米国・日本・欧州への製造拠点分散が急務とされており、後述する海外fab投資はその文脈でも重要な意味を持つ。


グロスマージンへの圧力:N2ランプと海外fab

好業績の一方で、グロスマージンは**66.4%**と前四半期比1.3ポイント低下した。主因はN2の立ち上げコストと海外fab(米国アリゾナ工場など)の稼働に伴うコスト増だ。

Q4ガイダンスではグロスマージンの中央値は66%と、さらに0.4ポイントの低下を見込む。海外fabによるマージン希薄化は2026年通期で約2ポイント、さらに今後5年の後半では3〜4ポイントに拡大する見通しだ。

管理層はこの希薄化を「長期的な需要確保のために受け入れるコスト」と位置づけ、生産性向上とノード間の最適化で一部を吸収できると説明している。ウェイCEOは「長期的な収益性に上限はない」としつつも、急激なマージン改善は見込めないと釘を刺した。


設備投資と製造能力の拡張:2026〜2028年は過去3年を大幅に上回る規模

TSMCは2026年の設備投資計画US$600億〜640億を据え置き、2026〜2028年の累積投資は前の3年間を大幅に上回ると説明した。現在進行中のfabは世界全体で約20棟に上り、台湾の先端プロセス・先端パッケージングfabが13棟、海外が5〜6棟だ。

具体的な計画は以下の通り:

  • N2ファミリーの製造能力を2027年に2倍以上に
  • 次世代のA14ノードはリスク生産を2027年、量産を2028年に予定
  • アリゾナ第2fabの稼働を2027年Q3に前倒し
  • テキサス州への新サイト設置を検討中
  • 5nmの製造装置を3nmに転用し、7/5/3nmノード間でキャパシティを最適化

A14ノードはTSMCが現在開発中の次世代先端プロセスで、N2の後継にあたる。リスク生産とは量産前の試験的製造フェーズを指し、歩留まりや設計検証を行う段階だ。


Q4ガイダンスと通期見通し

Q4 FY 2026のガイダンスは売上高US$263億〜273億(中央値で前四半期比約14%増、前年同期比約58%増)。これは事前のコンセンサスを上回る水準だ。グロスマージンは65〜67%、営業マージンは56.5〜58.5%を見込む(想定レート:NT$31.8/US$)。

通期2026年の売上成長率見通しは米ドル建てで約44%増に引き上げた。管理層は2027年に向けてコンシューマー向けや価格感応度の高い市場には慎重な見方を示す一方、先端プロセスの需要は供給を大きく上回る状態が続くと強調した。

TSMCの制約要因は今や需要ではなくキャパシティであり、同社はその解消に向けて積極的な投資を続けている。


詳細はTSMC Q3 FY 2026 Earnings Beat and Raise on AI and HPC Demandを参照していただきたい。