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AIがAIを作った——元Salesforce AI責任者のスタートアップが「自律開発」コーディングモデルを無償公開、議会で議論中のRSI規制が問われる

10月22日、madrobot.blogが「Richard Socher's startup says AI built nearly all of its new coding model, and anyone can download it」と題した記事を公開した。Richard Socher率いるスタートアップRecursiveが、AIがほぼ自律的に構築したオープンウェイトのコーディングモデル「Flint」を無償公開したことについて詳しく紹介されている。

10月22日、madrobot.blogが「Richard Socher's startup says AI built nearly all of its new coding model, and anyone can download it」と題した記事を公開した。Richard Socher率いるスタートアップRecursiveが、AIがほぼ自律的に構築したオープンウェイトのコーディングモデル「Flint」を無償公開したことについて詳しく紹介されている。


AIがAIを作った——Flintの最大の売り文句

Flintの最も刺さるポイントは性能よりも「どうやって作られたか」だ。

RecursiveはEureka Machineと呼ぶ自動研究システムを持ち、このシステムがアイデアを提案し、コードを書き、テストし、次に試すことを選択する。同社はFlintのモデル構築スタック——データ収集、トレーニングレシピ、インフラ、推論エンジンに至るまで——の「ほぼすべての部分」をこのシステムが開発したと主張する。ただし同社によれば、Eureka Machineはあくまで人間が設定した目標と制約の範囲内で動作する設計であり、人間の制御を逃れる構造にはなっていないという。

具体的には、Eureka Machineがアクティブパラメータ数を25億に設定し、一般的な慣行に反して出力層を4ビットに圧縮することを選び、AppleとNvidiaチップ向けのカスタムカーネルも記述したという。

SocherはWiredのインタビューでさらに踏み込んだ発言をしている。

ベースモデルの新たな訓練手法を含め、モデルパイプライン全体のほぼあらゆる側面が、実際にAIによって実行・改善された。それが、ごく少人数のチームでそのクラスの他のどのモデルよりも優れたモデルを生み出せる唯一の理由だ。

— Richard Socher(RecursiveのCEO兼共同創業者)、Wiredより

SocherはNLP分野で著名な研究者であり、GloVeやTreeLSTMなど影響力の大きい論文を発表した後、Salesforceに買収されたMetaMind創業者として同社のChief Scientistを務めた経歴を持つ。その後独立し、Recursiveを立ち上げた。

この主張が事実であれば「AIによる再帰的自己改善(RSI: Recursive Self-Improvement)」——AIが自身の設計・学習プロセスを改良し、より高性能な後継システムを生成するサイクル——が実用段階に入ったことを意味する。ただし、これは現時点で独立した第三者による検証はなされていない。Socher側はEureka Machineの限界として「人間の設定した枠組みの外には出られない」と説明しているが、その枠組みがどの程度厳密に機能しているかは外部からは確認できていない。


モデルの仕様と動作環境

FlintはHugging FaceからApache 2.0ライセンス(商用利用可)で無償ダウンロードできる。

モデルの仕様は以下のとおりだ。

  • アーキテクチャ: Mixture-of-Experts(MoE)
  • 総パラメータ数: 398億(ただし各トークンで有効なのは約25億)
  • コンテキストウィンドウ: 262,144トークン
  • 用途: コードベースの調査、バグ修正、機能追加、テスト生成などのコーディングエージェント向け

MoEとは、推論時に全パラメータを使わず一部だけを活性化するアーキテクチャで、少ないパラメータで高速な推論を実現する手法だ。GPT-4やMixtralなどでも採用されている。

フルの16ビットチェックポイントは約80GBで、Nvidia B300またはH200といったデータセンター向けGPUが必要になる。ただし、一般向けにQuantize(量子化)済みバージョンも提供されており、llama.cpp、Ollama、LM Studio、vLLM、SGLangなど主要なローカル推論エンジンに対応している。

Recursiveは自社製の軽量エンジンrecも公開しており、M4 ProおよびM5 Pro/Max搭載のMacBook Proでの動作を最適化している。同社は「M4 Pro MacBook Proで毎秒125トークン以上、同クラスのモデルの最大2倍の速度」と主張している。

ベンチマーク上の数字では、**SWE-bench Pro v2で89.7%**、SWE-bench Verifiedで74.2%、Terminal-Bench 2.1で54.9%を記録している。SWE-bench VerifiedはPrinceton・Chicago大学などが整備した実世界GitHubイシューの解決率を測る標準的な評価セットであり、SWE-bench Pro v2はその発展版として難易度を引き上げたものだ。Terminal-Bench 2.1はターミナル操作を含むエージェント型タスクを評価するベンチマークで、いずれもコーディングエージェントの実用性評価に広く用いられる。同社はこれらの結果をもとに「50億パラメータ以下のMoEモデルの中でエージェント型コーディングにおいてトップ」と主張しているが、これらのベンチマークはすべてRecursive自身が実施したものであり、独立した検証は行われていない点は注意が必要だ。同社は「大規模なクローズドコーディングモデルより追加の指示が必要な場合がある」とも認めている。


議会が議論中の技術を公開する会社

Recursiveの企業目標は「再帰的自己改善型の超知性を構築し、知識発見を自動化する」ことであり、同社はそれを隠していない。WiredによればGoogle Ventures、Nvidia、AMD Venturesなどから6億5000万ドルを調達し、評価額は46.5億ドルに達している。

この目標は安全研究者の間で懸念を呼んでいる。AnthropicのアライメントリードであるEvan HubingerはAIが10年以内に人類を滅亡させる確率を10%超と試算しており、AIが自身の開発を加速させることをその中心的なリスクとして挙げている。OpenAIもAIがより賢いAIを構築し始める前にグローバルな基準を設けるよう求めている。

米国議会では、Alexandria Ocasio-Cortezが支持するSandersとCasar両議員の超知性禁止法案がRSIを違法とし、Maria Cantwell上院議員のフロンティアAI規制案は企業に「安全でないRSI」の報告を義務付けようとしている。

Socher側はこうした懸念を「SFに近い」と否定し、Eureka Machineは人間の制御を逃れられない設計だと説明している。ただし、RSIが「完全に実現した」かどうかは第三者検証がなされていない現時点では断言できず、Flintの公開はその議論を「将来の仮説」から「現実に問うべき事例」へと引き上げた、というのが正確な評価だろう。議会での議論がどう展開するかは今後の焦点になる。


詳細はRichard Socher's startup says AI built nearly all of its new coding model, and anyone can download itを参照していただきたい。