10月24日、Tech Startups.comが「Big Tech's AI spending boom hides $3.6 trillion in off-balance-sheet commitments」と題した記事を公開した。Google・Meta・Microsoft・Amazonなどビッグテック8社が貸借対照表に計上されていない総額約3.6兆ドル(約360兆円、1ドル=100円換算)に上るAIインフラ関連の簿外コミットメントを抱えている実態について詳しく紹介されている。
四半期決算に映らない「本当の投資額」
ビッグテックが各四半期に報告するデータセンター建設費やチップ購入費は、AIインフラへの実際のコミットメントのほんの一部に過ぎない。
ZeroHedgeが10月21日に公開したチャート(Morgan Stanley Researchのフレームワークをもとに作成)によれば、Google・Meta・Microsoft・Amazon・Nvidia・Oracle・Broadcom・SpaceXの8社合計で、約3.6兆ドルの簿外コミットメントが積み上がっている。
「簿外コミットメント(off-balance-sheet commitments)」とは、将来の支払い義務が発生しているにもかかわらず、現時点では貸借対照表の負債として計上されていない契約上の義務のことだ。未開始のリース(まだサービスが始まっていないデータセンターの賃貸契約など)や将来のチップ購入契約、財務保証などが代表例となる。
FourWeekMBAが10月22日にSECの開示書類をもとに実施した独自分析では、8社合計の数値を約3.56兆ドルと推計している。内訳は以下の通りだ。
- 購入コミットメント:約2.03兆ドル(チップ、設備、クラウド容量、エネルギーサービスなど)
- 未開始リース:約1.25兆ドル(稼働前のデータセンターや電力インフラなど)
- 保証・投資・条件付き購入など:約2,870億ドル
Morgan Stanleyは8月時点で、主要クラウドプロバイダー5社とNvidia・Broadcomを合わせた7社の関連コミットメントが3.1兆ドル超に達すると報告しており、今回の数値はさらに膨らんでいる形だ。なお、BroadcomおよびSpaceXについては、SECへの開示形式や非上場ステータスの関係から、FourWeekMBAの社別内訳テーブルには個別の数値が掲載されていない。8社合計の3.56兆ドルにはこれら2社分が含まれているが、読者が社別に数値を追う場合は元記事の原典開示書類を参照されたい。
MetaのSEC開示が示す増加スピード
各社の中でも規模感を最もわかりやすく示しているのがMetaだ。
2026年9月末時点のSEC提出書類によると、Metaはクラウドキャパシティ・サーバー・ネットワーク・エネルギー・ハードウェアなどを対象とした解約不能な契約上のコミットメントが4,545億ドルに上る。さらに、データセンターや電力インフラ、コロケーション施設などを対象とした未開始リースが3,557億ドル存在し、これらは2026年末から2036年にかけて開始予定(契約期間は最長30年)とされている。
この2つのカテゴリーを合算すると8,102億ドルとなり、前四半期比で約1,820億ドル増加した。条件付きクラウド購入義務の147億ドルを加えると、約8,250億ドルに達する。
各社の内訳
FourWeekMBAの分析に基づく各社の概算コミットメントは以下の通りだ。
| 企業 | 主な開示内容 | 概算額 |
|---|---|---|
| Alphabet(Google) | 購入・契約義務8,110億ドル+未開始リース852億ドル | 約8,962億ドル |
| Meta | 解約不能契約4,545億ドル+未開始リース3,557億ドル+条件付き購入147億ドル | 約8,250億ドル |
| Microsoft | 購入コミットメント1,941億ドル+リース4,435億ドル(開始済み含む) | 約5,580億ドル |
| Nvidia | 将来コミットメント3,660億ドル+追加560億ドル+保証最大1,085億ドル | 約4,260億ドル |
| Oracle | 未開始リース2,880億ドル+購入義務342億ドル | 約3,220億ドル |
| Amazon | 無条件購入義務1,301億ドル+未開始リース1,372億ドル | 約2,860億ドル |
各社の数値はSEC提出書類(10-Q/10-K)に基づく。Alphabetの概算額は購入・契約義務8,110億ドルと未開始リース852億ドルの合計である約8,962億ドルとして記載した。Microsoftのリース総額には貸借対照表上にすでに計上済みの義務が含まれており、単純合算には注意が必要だ。BroadcomおよびSpaceXの個別数値は本表に含まれていないが、8社合計には算入されている。
3.6兆ドルは「負債」ではない
重要な点として、この3.6兆ドルは通常の意味での「借金」ではない。将来の支払い義務が契約上確定しているものから、条件次第で発生するもの、まだ正式契約に至っていない報道ベースのものまで、性質の異なる複数カテゴリーが混在している。
また、未開始リースの将来払いは多くの場合「未割引(undiscounted)」、すなわちお金の時間価値を考慮せずに積み上げた総額であり、現時点の負債と単純に比較できるものではない。
Reutersが8月に報じたところでは、Microsoft・Meta・Oracle・Amazon・Alphabetの5社だけで、未開始施設に対する将来リース支払い額が合計約1.09兆ドルに達している。一方、貸借対照表上に認識済みのリース負債は約2,850億ドルにとどまっており、その差は歴然だ。
リスクが顕在化するのは、AIの売上成長がこれらのコミットメントに追いつかなかった場合だ。稼働率が低い高コストインフラを抱えることになれば、マージンやキャッシュフロー、将来の投資判断に圧力がかかる。
記事は最後にこう問いかけている。
「AIの最大の問いはもはや『ビッグテックがいくら使う気があるか』ではなく、『AIは企業が積み上げている兆ドル規模のコミットメントを正当化できるだけの収益を生み出せるか』だ。」
詳細はBig Tech's AI spending boom hides $3.6 trillion in off-balance-sheet commitmentsを参照していただきたい。




