10月23日、SiliconAngleが「Ex-OpenAI science chief Kevin Weil launches Warp Sciences with $215M for drug chemistry」と題した記事を公開した。元OpenAI科学責任者のKevin Weilが創薬向けAI化学スタートアップ「Warp Sciences」を2億1500万ドルの資金調達とともに立ち上げた。「AIはソフトウェアや数学を劇的に加速させたが、物理科学はまだその恩恵を受けていない」——この課題を、ロボットと実験データの組み合わせで解こうとするアプローチが注目を集めている。
ロボットが化学者の動作を学習する仕組み
Warp Sciences Inc.は、バイオテック・製薬企業向けに創薬化学の受託研究(CRO=Contract Research Organization)サービスを提供するスタートアップだ。CEOのKevin WeilはOpenAIで科学部門を統括していたが、6か月前に同社を離れ、本プロジェクトを立ち上げた。
同社のアプローチで際立つのは、物理実験データでAIモデルを訓練するループを核に据えている点だ。熟練した化学者の指導のもとでロボットに実験作業を学習させる。SiliconAngleの元記事では、カメラとセンサーグローブを装着した化学者の動作をロボットが習得する仕組みが紹介されており、これによって実験室でのルーティン作業をAI主導で量産できる体制を構築する。
まず手がけるサービスは「リード最適化アナログ合成(Lead Optimization Analog Synthesis)」だ。有望な化合物の派生体を複数合成して顧客の科学者に提供し、候補化合物の絞り込みを支援する作業である。創薬の前臨床段階でよく発生するルーティン色の強い工程で、海外(特に中国)への外注が一般的だった。
Weilはローンチ発表で、「化学・生物学は実際に化合物を合成してテストすることで進歩する。科学向けAIモデルには『スケールした実世界データ』が必要だ」と述べた。モデルの設計よりも実験データの量産を優先するという考え方が、Warpの事業構造全体を規定している。
なぜ今、米国内にCROを作るのか
共同創業者でCSO(最高科学責任者)のSol Reisbergは、Terremoto Biosciencesで創薬化学を率いていた人物だ。過去に海外の受託研究パートナーと仕事をした経験から、知的財産の漏洩リスクを強く懸念するようになったという。
この懸念は業界全体の動向とも連動している。2024年にBiotechnology Innovation Organizationが調査した124社のバイオテック企業のうち、74%が中国企業との前臨床・臨床サービス契約を結んでいた(Reuters報道)。しかし、2024年に成立した**BIOSECUREアクト**により、連邦政府の契約・助成金と指定中国バイオテク企業との取引が制限されるようになった。米国内の代替CROへの需要が高まる地政学的な追い風が、Warpの事業タイミングを後押ししている。
Warpは米国内のラボで、海外パートナーと同水準の品質を「上乗せマージンなしの価格」で提供することを目指す。Reisbergが言う「価格プレミアム」を払わずに済む国内の選択肢をつくる、というのが事業の根幹だ。
なお、Warpはあくまで契約製造業者であり、自社で創薬プログラムを持たない。「私たちは自社の薬を開発しない」とCOO(最高執行責任者)のDJ Patilは明言している。
創業チームと資金の厚み
共同創業者4人のバックグラウンドが揃っている点も特徴的だ。
- Kevin Weil(CEO)― 元OpenAI科学責任者
- Sol Reisberg(CSO)― 元Terremoto Biosciences 創薬化学責任者
- DJ Patil(COO)― ホワイトハウス初代最高データサイエンティスト、Devoted Health共同創業者
- Mano Paluri(CTO)― MetaのAIリサーチグループ創設メンバー、元Meta Superintelligence Labs VP
資金調達ラウンドはLightspeed Venture Partnersがリードし、Institutional Venture Partners、Lux Capital、Menlo Venturesなど合計19社が参加。個人投資家としてはCoinbase CEOのBrian ArmstrongとOpenAI CFOのSarah Friarも名を連ねる。
「設計」より「実験データ量産」を先に解く
AI創薬の文脈では「モデルがどんな分子を設計するか」に注目が集まりがちだが、Warpが切り取ったのは「実験データをどう量産するか」という上流の問題だ。物理実験なしにAIモデルは学習できない、という現実的な課題に正面から向き合う構成となっている。ロボットによる動作学習と米国内CROというポジショニングの組み合わせは、同分野における一つの解法として注目に値する。
詳細はEx-OpenAI science chief Kevin Weil launches Warp Sciences with $215M for drug chemistryを参照していただきたい。




