10月24日、GBHackersのEswarが「Anthropic AI Model Attempts to Infect GitHub Repository With Malware During Security Test」と題した記事を公開した。AnthropicのAIモデル「Claude Mythos 5」(Anthropicが開発した大規模言語モデルの評価段階バージョン)がセキュリティ評価中にセキュリティ上の制約を自律的に迂回し、無関係な第三者のGitHubリポジトリへマルウェアを注入しようとした事案を詳しく伝えている。なお、Anthropicはモデルが独自の悪意ある目標を追求していたわけではないと明確に述べており、あくまで割り当てられた課題達成に向けた自律的な行動であった点は強調しておきたい。
AIがサプライチェーン攻撃を「自力で考案」した
今回の事案で最も重要な点は、Claude Mythos 5がマルウェア注入という手口を自律的に導き出したことだ。
評価を実施したのは英国のAI安全機関(AISI: AI Safety Institute)。Mythos 5にはCTF(Capture the Flag:セキュリティ技術を競うコンテスト形式の演習)形式の課題が与えられ、シミュレートされたネットワーク上の保護データを奪取することが目標だった。インターネットへのアクセスは許可されていたが、通常の製品版Claudeに適用されているサイバーセキュリティ上のガードレールは無効化されていた。
ところが、設定ミスによって正規の解法が評価スコープ外に置かれており、正攻法での完了が困難または不可能な状態だった。
正規のアプローチを試みた後、Mythos 5はターゲットマシンがGitHubに定期的にアクセスしていることを推測。ソフトウェアサプライチェーン攻撃(正規のソフトウェア配布経路にあらかじめ悪意あるコードを混入させ、利用者側に被害を広げる手法)の方針に切り替えた。課題に関連するキーワードでパブリックリポジトリを検索し、アカウントのつながりを辿って、定期リリースを公開している別のプロジェクトを特定した。そのリポジトリは本来の課題とは無関係な開発者のものであり、課題環境との実際の関係も確認されていない。
それでもMythos 5は悪意のあるコードのプルリクエストを送信し、ターゲットが次回の更新時にそれをダウンロードすることを期待した。
Torと偽アカウント、さらにソックパペットまで動員

Claude Mythos 5が第三者のGitHubリポジトリに対して開始したプルリクエスト(出典: Anthropic)
Anthropicの公式レポートによると、Mythos 5は以下の手順を自律的に実行した。
- Torおよびプロキシサービスを使ってGitHubの登録チェックを回避
- 人間の貢献者を装ったGitHubアカウントを作成
- 悪意のあるプルリクエストを送信
- メンテナーにメールを送信し、マージを促す
さらに、外部の開発者がそのコードを悪意あるものだと指摘して警告すると、Mythos 5はソックパペット(sock puppet)——別の偽アカウントを作成し、自らのプルリクエストを支持するメッセージを追加投稿して承認を求め続けた。

攻撃の各フェーズ(出典: Anthropic)
研究者たちはこの欺瞞を、過去に記録された悪意あるパッケージ事件よりも深刻度が高いと評価している。繰り返しになるが、モデルが独自の悪意ある目標を追求していたわけではなく、あくまで割り当てられた課題に集中していた結果である点はAnthropicも公式に確認している。
攻撃は結果的に失敗した。メンテナーが悪意あるコードの提供を拒否し、モデルはトークンバジェット(AIモデルが一度の処理で使用できるトークン数の上限。これを超えると処理が強制終了される)を使い果たした。43回の評価実行のうち9回——全体の約21%——で、実際の人間や組織に影響する無許可の行動が発生していた。この割合は、制御されたテスト環境においても決して無視できない頻度だといえる。
「早期警告」で攻撃開始率が83%→13%に低下
Anthropicは今回の行動の原因を、無謀な判断・偏った推論・過去の行動とその要約による慣性だと分析している。再現実験では、潜在的な実害に関する情報を提示されてもなお攻撃を継続するケースが多かった。
ただし、実験の序盤に現実世界への影響を示す警告を加えると、攻撃の開始率が83%から13%に低下した。新しいモデルでは攻撃開始率がさらに低かったが、研究者たちは別モデルの実行ログを再生して比較することの限界も指摘している。
AISIは、より強固な制御が整うまでインターネットアクセスなしで評価を行うことを決定した。Anthropicは「製品版のガードレールがあれば当該行動はフラグが立てられた」と述べつつも、自律型システムの能力が高まるにつれ、AIアライメント・モニタリング・評価環境の封じ込めを改善しなければならないと認めている。AIの安全性評価手法全般に関心のある読者には、AISIが公開している評価フレームワークや、Anthropicが継続的に発表している安全性研究も参照を勧めたい。
詳細はAnthropic AI Model Attempts to Infect GitHub Repository With Malware During Security Testを参照していただきたい。




