10月23日、PYMNTSが「Uber Deploys OpenAI Agents to All 30,000 Employees」と題した記事を公開した。Uberが全世界の従業員3万人を対象にOpenAIのエージェント「ChatGPT Work」を一斉展開したというニュースだ。単なる社内ツール導入にとどまらず、エンジニアを意図的に対象外とした設計や、ドライバー・ライダー向け機能との連携など、Uberのエンタープライズ向けAI活用が本格的な全社戦略として像を結びつつある。
1,000人のパイロットから3万人へ
Uberは当初1,000人の従業員を対象にパイロット運用を行っていたOpenAIのChatGPT Workを、全世界の3万人の従業員全員に展開した。OpenAIが2026年10月22日(木)のプレスリリースで明らかにした。
ChatGPT Workは、**ChatGPT Enterprise**上で動作するエージェントだ。ChatGPT Enterpriseは大企業向けに提供されるOpenAIの法人契約プランで、セキュリティや管理機能が強化されており、ChatGPT Workはその上位機能として位置づけられている。通常のチャットによる一問一答とは異なり、複数のステップにまたがる複雑な作業を引き受け、完成した成果物を提出することを目的として設計されている。ユーザーのアプリやファイルをまたいだ操作が可能で、必要に応じて数時間かけてプロジェクトを進め、スプレッドシート、スライド、ドキュメント、Webアプリといった完成物を生成できる。OpenAIが同機能の一般提供を開始したのは2026年7月9日のことだ。
なぜ全社展開に踏み切ったのか
Uberがパイロット運用からわずか数ヶ月で3万人規模の全社展開に移行した背景には、パイロット期間中に得られた成果への手応えがあると考えられる。UberのCTO(最高技術責任者)であるPraveen Neppalli Naga氏はプレスリリースでこう述べている。
「AIが私たちの働き方を変えていくなかで、すべての人がイノベーションを起こし、問題を解決し、Uberの未来を形づくるためのツールを提供したい。ChatGPT Workを全社展開することはその野望に向けた大きな一歩だ。」
「すべての人」という言葉が示すように、今回の展開はAI活用を特定チームの専権事項にしない、という意図を明確に打ち出している。ビジネス職・オペレーション職・管理部門など、これまでAIツールの恩恵を受けにくかった職種へのアクセスを均等化することが、今回の施策の核心と言えるだろう。
OpenAIの共同創業者兼社長のGreg Brockman氏も次のようにコメントしている。
「Uber全体のチームが、私たちのフロンティアモデルとエージェントを活用して、より複雑な業務に取り組み、日常的に使うツールをつなぎ、より多くの成果を出せるようになる。」
従業員が使う具体的なユースケース
プレスリリースによると、Uber従業員は以下のような業務にChatGPT Workを活用できる。
- 情報のリサーチ
- 会議用ブリーフの作成
- プレゼンテーション資料の作成
- データ分析
- 複数アプリをまたぐワークフローの処理
一方で、開発者やソフトウェアエンジニアのチームはOpenAIのCodexを引き続き使用する。ソフトウェア開発・コーディングのワークフローはCodexが担う形だ。つまり、ChatGPT Workはエンジニア以外の業務部門を主なターゲットとした展開と言える。
エンジニアを対象外とした理由は公式には明言されていないが、コーディングに特化したCodexとの役割分担を明確にすることで、ツールの乱立を避けつつ各職種に最適なAI環境を整備する狙いがあるとみられる。全社員にひとつのツールを押しつけるのではなく、職種ごとに適切なAIを割り当てるという設計思想は、大規模導入の現実解として注目に値する。
※編集部の考察:エンジニア向けにCodex、非エンジニア向けにChatGPT Workと役割を分けることで、導入後のサポートコストや混乱を最小化する意図もあると考えられる。
UberとOpenAIの関係はこれだけではない
今回の全社展開はUberとOpenAIの協業の一端に過ぎない。PYMNTSが2026年5月に報じたところによると、OpenAIはすでにUberのドライバー向けAIアシスタント(ライブの需給データを運転手への配置アドバイスに変換する機能)と、ライダー向けの音声インターフェース(自然な音声で乗車予約ができる機能)も支えている。社内業務の効率化だけでなく、プロダクトそのものにもOpenAIの技術が組み込まれており、両社の関係は戦略的なパートナーシップとして深化していることがわかる。
一方でOpenAI自体のビジネス面でも、エンタープライズ向け事業が収益を牽引している。Bloombergの報道(2026年10月9日)によると、OpenAIの年換算売上高は2026年末までに少なくとも700億ドルに達する見込みで、9月末時点の500億ドルから大幅に増加する見通しだ。Uberのような大企業による全社展開は、こうした収益拡大を支える重要な事例のひとつとなっている。
大規模なAIエージェント導入の実例として、Uberのケースはエンタープライズ向けAI活用の現在地を測るひとつの指標になるだろう。
詳細はUber Deploys OpenAI Agents to All 30,000 Employeesを参照していただきたい。




