10月24日、My Electric Sparksが「Anthropic IPO Loss Hits $80.7B Before Listing」と題した記事を公開した。AnthropicがIPO目論見書草案で2026年上半期に807億ドルの純損失を計上したことが明らかになった件を伝えている。
807億ドルの損失、ただし720億ドルは「紙の上の話」
数字だけ見れば衝撃的だが、内訳を見れば印象は変わる。
損失の約720億ドルは非現金の会計上の費用である。これはAnthropicが調達した転換型金融商品(将来的に株式に転換できる仕組みの資金調達手段)の価値が上昇したことに伴う会計処理で、実際にキャッシュが流出したわけではない。残りの約87億ドルが実態を伴うコストだ。
参考として、前年同期(2025年上半期)の純損失は約130億ドルだった。数字の跳ね上がりはほぼ会計処理の変化によるものであり、事業の悪化を直接示すものではない。
なお、2025年通年の純損失は約420億ドルで、これもその大部分が同種の転換型金融商品に絡む費用だったとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。
売上は1年で15倍に急拡大
損失の話と対照的なのが売上の伸びだ。
2026年上半期(H1)の売上は163億ドル。前年同期が11億ドルだったため、1年で約15倍に増加した計算になる。さらにAnthropicは投資家向けに、2026年第3四半期の売上が168億ドルに達したと伝えている。元記事によれば第2四半期単体は116億ドルとされており、上半期合計163億ドルとの関係については正式なS-1ファイリングの公開時に詳細が明らかになる見込みだ。同社は調整後ベースで第3四半期に黒字転換したとも主張しているが、この点も正式開示を待つ必要がある。
本当のコストはインフラ投資
現金ベースで見たとき、最も重い負担はコンピューティングへの支出だ。
Anthropicは2026年上半期の6ヶ月間でインフラとコンピューティングに約90億ドルを投じた。前年同期の23億ドルから約4倍になっている。AIモデルのトレーニングはGPUを大量に消費する。報道によれば、同社は以下の契約を締結済みだ。
- Googleクラウド:約1,110億ドル(長期コミットメント総額)
- Amazon Web Services:約1,100億ドル(同)
- Microsoft:約310億ドル(同)
- 加えて、チップ調達のためにBlackstoneとの90億ドルのファイナンシング契約も締結している(関連記事)
これらは複数年にわたるクラウド利用・調達コミットメントの累計額であり、将来支払いの予約枠として計上されているものだ。将来コミットメントの総額は少なくとも5,180億ドルに達する見込みとされている。
IPOのスケジュールと評価額
IPO手続きは急ピッチで進んでいる。Anthropicは2026年6月にSECへの非公開申請(コンフィデンシャル・ファイリング)を済ませており、S-1の公開申請は10月23日(金)にも行われる可能性があると、計画を知る関係者3人が明かした。SECの規則では公開申請からロードショー開始まで15日間が必要なため、ロードショーは11月9日の週に始まる可能性がある。上場先はNasdaq、主幹事はモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガンの3行だ。
評価額については、当初2兆ドルという見方もあったが、損失規模が知れ渡った現在は1.5兆ドル前後を見込む投資家が増えているという。調達額は最大1,000億ドルを目指しており、実現すれば史上最大規模のIPOの一つになる。
AI企業の財務構造をどう読むか
今回の開示で改めて可視化されたのは、フロンティアAI(最先端の大規模AIモデル)の開発がいかに資本集約的かという実態だ。売上が急拡大しながらも、インフラへの先行投資がそれを上回るペースで膨らむ構造は、クラウドインフラ黎明期のAWSやAzureの初期フェーズにも似ている。ただし、そのスケールは桁違いだ。
Anthropicはコメント要請に即座に応じていないとReutersは伝えている。正式なS-1が公開されれば、調整後利益の算出方法も含めてより詳細な財務データが明らかになる。
詳細はAnthropic IPO Loss Hits $80.7B Before Listingを参照していただきたい。




