10月23日、Help Net Securityが「Google opens its cloud to rival OpenAI, promises business data won't train models」と題した記事を公開した。GoogleがGoogle CloudにライバルであるOpenAIのモデルを追加し、企業顧客向けにプライベートプレビューを開始したことを報じている。AIクラウド市場の競争構図を塗り替えかねない動きだ。
GoogleがOpenAIモデルをGoogle Cloudに搭載——プラットフォーム競争の構図が変わる
AIクラウド市場では、各プロバイダーが独自モデルの囲い込みを進めるのが定石だった。その中でGoogleが、競合であるOpenAIのモデルを自社クラウドで提供するという動きに出た。単なる機能追加ではなく、「どのモデルを使うか」よりも「どのクラウドで使うか」を争点にする、プラットフォーム戦略の転換だ。
今回のプライベートプレビューに含まれるモデルは以下の3つ。ただし、これらのモデル名は元記事のプライベートプレビュー情報に基づいており、既知のOpenAIモデル体系とは異なる呼称が使われている点に留意されたい。
- GPT-6 Astra — 高負荷な業務向け
- GPT-6.1 Sol — コストを抑えたプロフェッショナルタスク向け
- GPT-6 Luna — 高速レスポンスが求められる日常的な用途向け
Google CloudのGemini担当プロダクトマネジメントVPであるMichael Gerstenhaber氏は、顧客がパフォーマンス・レスポンス速度・コストに応じてモデルを選択・切り替えられると述べている。
「1枚の請求書」が企業調達を変える
技術的な統合と同等に重要なのが、課金の一元化だ。OpenAIモデルの利用はGoogle Cloud Marketplaceを通じて購入し、既存のGoogle Cloudの請求書にまとめて計上される。さらに、既存のクラウド支出コミットメントであるEDP(Enterprise Discount Program)にも算入される。EDPとはGoogleが大口顧客向けに提供する長期利用契約による割引プログラムであり、一定期間・一定額のクラウド利用をコミットすることで割引を受ける仕組みだ。
加えて、Flexible Savings Plans(月次支出コミットメントと引き換えにモデルプロバイダー横断でトークンコストを下げる仕組み)の対象にもなる。
マルチモデル構成の具体例として、記事ではカスタマーサービスアシスタントのケースが挙げられている。受信メッセージの仕分けには高速・低コストのモデルを使い、複雑なクレーム対応には高性能モデルを充てるといった使い分けが想定されている。
データの扱い:企業データはモデルの訓練に使わない
企業導入における最大の懸念点のひとつ、データの取り扱いについてGoogleは明言している。
「顧客のプロンプト、コンテキスト、出力は指定されたデータ境界内に留まり、基盤モデルの訓練には使用されない」
BoxのAI製品担当VP、Yashodha Bhavnani氏も、Google CloudのセキュリティとコンプライアンスとOpenAIのフロンティアモデルを組み合わせることで、エンタープライズコンテンツへのAI活用が進むとコメントしている。
なお現時点でのプレビューには含まれていないが、Googleは今後ゼロデータリテンションオプションとConfidential Compute(機密コンピューティング)の保護機能を追加する予定だ。Confidential Computeとは、処理中のデータもハードウェアレベルで暗号化し、クラウドプロバイダー側からもアクセスできない状態を保つ技術である。
開発者向け:Codex CLIとの連携も
プレビューアクセスを持つ顧客は、Google CloudのAPIを通じてOpenAIモデルを使ったアプリケーションを構築できる。また、Codex CLIやCodex DesktopのローカルワークフローをGoogleのGeminiプラットフォームに接続し、Google Cloudがモデルリクエストを処理する構成も可能だ。
Codex CLIは、OpenAIが提供するコーディング作業向けのコマンドラインツールである。これをGoogle Cloudのインフラで動かせるようになる点は、開発者にとって選択肢が広がる変更だ。
なお、元記事では今後のロードマップとしてGemini for Businessへの統合拡大が言及されている。本記事の現行版に記載していた「Google Antigravity」という製品名については、元記事原文での登場が確認できなかったため、記載を削除した。
エンジニアが押さえるべきポイント
今回の動きが示すのは、モデルの提供競争がクラウドインフラのレイヤーに移行しているという事実だ。AWSのAmazon Bedrockが複数モデルを束ねるマネージドサービスとして成長してきた構造と類似しており、Google Cloudも同様の「モデルのマーケットプレイス化」を進めている。
企業の技術選定において、「どのモデルを使うか」と「どのクラウドを使うか」が切り離せなくなる状況が加速している。
詳細はGoogle opens its cloud to rival OpenAI, promises business data won't train modelsを参照していただきたい。




