10月24日、Omar Sohailが「NVIDIA GPUs Are Become Appreciating Assets In The Rental Space, With Models As Old As The A100 Reaching Up To A 143% Price Premium Due To AI Token Consumption」と題した記事を公開した。※元記事タイトルに"Are Become"という文法的な誤りが含まれているが、これは元記事の表記をそのまま引用したものである。この記事では、AIによるトークン消費の急増を背景に、NVIDIAのGPUレンタル価格が旧世代モデルを含めて軒並み上昇している実態について詳しく紹介されている。
H200が2026年初来で+143%——「減価しないGPU」が現実になりつつある
通常、ハードウェアは時間とともに価値が下がる。ところがNVIDIAのデータセンター向けGPUは今、その常識に逆らう動きを見せている。
クラウドGPUのレンタル価格データを収集するOrnn Dataのデータをベンチャーキャピタルのa16zが引用・報告したところによると、2026年1月1日を基準として、主要GPUのレンタル価格は以下のように上昇した。
| GPU | リリース年 | レンタル価格上昇率 |
|---|---|---|
| H200 | 2024年 | +143% |
| B200 | 2024年 | +111% |
| RTX PRO 6000 | 2025年 | +73% |
| H100 | 2022年 | +54% |
| A100 SXM4 | 2020年 | +9% |
最も上昇幅が大きかったのはH200で、2026年1月1日時点から記事執筆時点(10月24日)までの期間でレンタルコストが2倍以上に達した計算だ。最新世代のB200も111%と高い伸びを示している。一方でA100 SXM4は+9%にとどまるが、それでも「リリースから6年が経過したGPUが値上がりしている」という事実は際立っている。
価格推移の内訳——一本調子の上昇ではない
グラフを詳しく見ると、単純な右肩上がりではないことがわかる。
- Q1(1〜3月): 大半のGPUが底値圏。H100とB200はいずれも1月水準から約23%下落した
- 4〜5月: AIトークン消費が春に急増したタイミングで反発。H100は5月初旬まで横ばいが続いた後、数週間で急騰
- H200: 5月末にスパイク→約25%の押し戻し→その後10月に向けて再上昇
旧世代GPUが「再評価」される理由
注目すべきは、最新GPUだけでなくA100 SXM4(2020年)やTesla V100のような旧世代GPUまで需要が高まっている点だ。
記事では、Tesla V100を例に挙げている。NVLinkとはNVIDIAが開発したGPU間高速インターコネクト技術で、複数のGPUをひとつの大きな論理デバイスとして扱えるようにするものだ。このNVLinkボードを使ってV100を4枚構成にすると、元記事によると、AppleのM5 UltraやNVIDIAのDGX Sparkといった最新チップを推論性能で最大230%上回るベンチマーク結果が出ているという。この性能ゆえに、中規模LLM(大規模言語モデル)の実行用途として人気が高まっており、VRAMが多い32GB版のV100は**$200のプレミアム**で取引されるケースも出てきた。
ただし記事は、V100が選ばれるのは主にコンシューマー・個人用途であり、エンタープライズではないと指摘している。
データの限界——見えていないものもある
記事自体も認めているが、このデータにはいくつかの留意点がある。
- 需要の内訳が不明: AIトークン消費の増加が原因とされているが、エージェント型ワークロードによるものなのか、エンタープライズ採用の拡大によるものなのかは示されていない。価格上昇の主因が特定できないため、今後の動向予測も難しい
- 供給側の情報がない: データセンターのキャパシティや電力制約がレンタル価格に与える影響は考慮されていない。仮に新規データセンターの稼働や電力インフラの整備が進めば、需要が続いても価格が頭打ちになる可能性もある
- 対象プロバイダーの範囲: Ornn Dataが集計するクラウドプロバイダーの範囲や、スポット価格とオンデマンド価格の区別についても、記事内では明示されていない
需要と供給の両面が揃って初めて価格変動の全体像が見えるが、今回のデータは需要側の代理指標にとどまる。こうした留意点を踏まえつつも、複数世代のGPUにわたって一貫して価格上昇が観測されているという事実は、単なるノイズではなく構造的な変化を示唆している可能性が高い。
GPUが「使えば価値が下がる消耗品」ではなく「保有・貸し出しで価値が上がる資産」になりつつあるという構造変化は、AIインフラの調達・コスト設計を考えるエンジニアや事業者にとって無視できない動向だ。






