10月30日、Los Angeles Timesが「Google parent loses $511 billion in market value as AI pressures search and ad sales」と題した記事を公開した。Googleの親会社Alphabetが第3四半期決算の失望を受けて1日で時価総額5,110億ドルを失ったこの事件は、単なる業績悪化ではなく、AIへの巨額投資が既存の収益モデルを構造的に侵食しつつあることを市場に突きつけた。
AIが「収益を生まない検索」を増やしている
今回の株価急落の直接的なトリガーは、第3四半期の決算ミスだ。パートナーへの支払いを除いた売上高は1,112億ドルで、アナリスト予測を下回った。広告収益の伸びは5四半期ぶりの低水準となり、YouTubeの広告売上112億ドルも市場予測を下回った。
株価は13%下落し、281.37ドルまで沈んだ。これはAlphabetの上場以来最大の時価総額消失であり、同日にクラウド事業が予測を超える好決算を発表したMicrosoftとの対比は際立っている。
問題の核心は、Chief Business OfficerのPhilipp Schindlerが決算説明会で認めた一言だ。「AI Modeでのクエリは収益化効率が低い」。
ここでいう「AI Mode」とは、Google Searchに新設されたタブ形式のAI回答機能で、ユーザーが検索結果のリンクをクリックせずに答えを得られるため、広告主が課金するクリック型の検索広告との相性が根本的に悪い。AI Modeの利用が拡大するにつれ、高単価の検索広告クリックが減少するという構造的な問題が、今回初めて決算数字として表面化した。
Investing.comのシニアアナリスト、Thomas Monteiroはこう指摘する。
「Alphabetにとってこの四半期は正念場だ。PichaiとそのチームがAIの収益化モデルを修正しなければ、近い将来いくつかのコアビジネスでのリーダーシップを失うリスクがある。GoogleがAIで検索広告に匹敵する課金モデルを示せない限り、すべての設備投資計画は野心ではなく請求書に読める」
1兆ドルを超える将来債務
Alphabetのバランスシートはさらに厳しい現実を示す。第3四半期末時点で、コンピューティングリソースやエネルギーの調達に関する将来のコミットメント総額は9,240億ドル。未開始のデータセンターリースなどを含めると総額1兆ドル超となった。
設備投資は今年だけで最大2,050億ドルに達する見通しで、前年比2倍以上だ。しかもAlphabetは2四半期連続でフリーキャッシュフローがマイナスとなった。上場以来、これが起きたことは一度もなかった。
Motley Foolのテックアナリスト、Anders Bylundはこう述べる。
「検索はAlphabetの現金収入の大半を生み出している。しかし2四半期連続のフリーキャッシュフローのマイナスは、純粋なAIの収支計算が今は機能していないことを示している」
JPMorganのDoug Anmuthらのアナリストも同様の見解だ。「数百億ドルをAIインフラに投じているハイパースケーラー(=AWS・Azure・Google Cloudのようにクラウドインフラを超大規模に運営する事業者)が、コア事業で期待外れの結果を出したときの誤差の余地を、今回の結果と株価反応が示している」。
唯一の明暗:Google Cloud
暗い決算の中で唯一の好材料はGoogle Cloudだ。売上高307億ドル、営業利益111億ドルで、それぞれアナリスト予測(289億ドル、98億ドル)を上回った。
ただし、ここにも皮肉な構造がある。Monteiroが指摘するように、CloudのトップカスタマーにはAnthropicのようなAIスタートアップが名を連ねる。つまり「Alphabetは自社でAIを使って稼ぐよりも、競合他社にAIを売って稼いでいる」という状況だ。
AIモデル開発でも課題が残る
コーディングツールの領域では、AnthropicやOpenAIに後れを取っているという懸念も社内で高まっているという。Alphabetは決算説明会の数時間前に新AIモデルを発表し、Sundar PichaiはGeminiシリーズの優位性を強調した。だが社内からは「まだ完全に追いついていない」との声も漏れているとされる。
また、持ち分法投資(他社株式を一定割合保有し、損益を自社決算に取り込む会計手法)も第3四半期の足を引っ張った。SpaceXへの出資を主因として87億ドルの損失を計上した(前四半期は逆にAnthropicやSpaceXへの投資で多額の利益を計上していた)。市場環境次第で損益が大きく振れるこの構造も、業績の安定性を損なう要因として注目されている。
詳細はGoogle parent loses $511 billion in market value as AI pressures search and ad salesを参照していただきたい。




