10月31日、Pragmatic Engineerが「The Pulse: Anthropic kills the coding interview」と題した記事を公開した。AnthropicのあるエンジニアリングマネージャーがLeetCode形式のコーディング面接を自チームの採用から取り除いたことを明かし、AI時代のエンジニア採用のあり方に対する問いが改めて浮上している。同記事ではこの動きに加え、AI関連コストの最適化やAmazonのエンジニア評価制度の変化など、開発現場を取り巻く複数のトレンドが取り上げられている。
AnthropicのエンジニアリングマネージャーがDSA面接を廃止
AnthropicのClaudeチームに所属するあるエンジニアリングマネージャーが、担当チームのエンジニア採用においてコーディング問題——いわゆるLeetCodeスタイルの問題——を出すのをやめたと明かした。これはAnthropic社全体の公式方針変更ではなく、当該マネージャー個人の判断によるものである点には留意が必要だ。ただし、組織内で一定の影響力を持つマネージャーがこの決断を公表したこと自体、採用手法をめぐる議論を加速させる契機になっている。
LeetCodeスタイルの面接とは、グラフ・木構造・動的計画法といったデータ構造とアルゴリズム(DSA)に関する問題を短時間で解かせる手法だ。GoogleやAmazonが広めて以来、ソフトウェアエンジニア採用の事実上の標準となってきた。このマネージャーは、DSA面接からは実務遂行能力に関する有用なシグナルがほとんど得られないと判断し、自チームの採用プロセスから除外することを決めたという。
この判断の背景には、AIツールの急速な普及がある。コード補完や実装提案を担うGitHub CopilotやClaudeのようなツールが日常的な開発作業を支援する現在、アルゴリズムを暗記して白紙に手書きで解く能力が実務でどれほど問われるか、という疑問は以前にも増して切実だ。「実務と乖離している」という批判はエンジニアコミュニティで長らく根強かったが、AI企業の採用現場から具体的なアクションが出てきたことで、議論は新たな局面に入りつつある。
記事によれば、同社の他チームや、AIネイティブなスタートアップにも同様の流れが波及する可能性があるとされている。もしこの動きが広がれば、採用側・求職側の双方にとって採用プロセスの前提が大きく変わることになる。
incident.ioはAI費用を3分の1以下に削減
インシデント対応プラットフォームを手がけるincident.ioは、AIへの支出を大幅に最適化したことを公表した。2024年8月時点で開発者1人あたり月4,500ドルだったAI関連コストが、現在は1,600ドルにまで低下している。削減率にして約65%だ。
この数字が注目に値するのは、単純なAI投資の縮小ではなく、ROI(投資対効果)を精査した上でのコスト最適化という点だ。どのAIツールに費用をかけ、どこを削るかという判断は、規模を問わず多くの開発組織が直面している課題であり、この具体的な数値は実践的な参照点になる。AI活用の費用対効果をどう測定し、どう意思決定するかは、2024年後半の開発現場における重要な経営テーマの一つになっている。
AmazonがAI活用をエンジニア評価に正式組み込み
Amazonは、SDE(ソフトウェア開発エンジニア)およびSDM(ソフトウェア開発マネージャー)の職務期待値にAI活用を正式に組み込んだ。背景には、AI使用率と生産性の間に相関関係が見られたという社内調査の結果があるとされている。
この変更はincident.ioのコスト最適化とは対照的な方向性を示している。incident.ioがAIへの支出を精査して絞り込む一方、Amazonはエンジニアに対してAIをより積極的に活用することを組織的に求める方向に動いた。「AIをどう使うか」という問いに対して、企業によってアプローチが異なり始めている点は興味深い。
あわせてAmazonは、SDEおよびSDMに対して「顧客に近い立場であること」も評価に組み込んだ。エンジニアが顧客視点を持つことを指標化する動きは、AI時代における開発者の役割変化——実装の実行者から、価値設計の担い手へ——を示す一例といえる。
Microsoftが6万人に早期退職を打診
Microsoftは約6万人の社員に対し、年末までに退職する選択肢を提示した。ただし退職パッケージの条件は特別魅力的なものではないとされており、記事では実際に退職を選ぶ人数は「数千人規模にとどまるだろう」と見ている。
採用の常識が変わりつつある
今回の記事で最も注目すべきはAnthropicの動きだ。DSA面接は「優秀なエンジニアを選別する客観的な手法」として長く機能してきたが、AIツールが実務の多くをサポートする現在、アルゴリズムの暗記力を問う面接の意義は問い直しを迫られている。Anthropicの一マネージャーの決断が業界的な注目を集めた背景には、同じ問いを抱えながらも動けずにいた採用担当者が多い、という現実があるだろう。
incident.ioのコスト最適化、AmazonのAI活用義務化、Microsoftの人員整理。個々のトピックは独立しているように見えるが、いずれも「AIが当たり前になった職場で、エンジニアに何を求め、どう評価するか」という共通の問いに対する各社の答えとして読むことができる。
詳細はThe Pulse: Anthropic kills the coding interviewを参照していただきたい。




