10月31日、Bruno Ferreiraが「Anthropic's Claude AI blocks video game cloning and reverse-engineering」と題した記事を公開した。AnthropicのAIモデル「Claude」がビデオゲームのクローン生成やリバースエンジニアリングに関する作業を拒否するようになった問題を報じており、悪意のある用途だけでなく正当な開発業務まで巻き込まれているとして、開発者コミュニティで波紋を呼んでいる。
Anthropicが直接的な公式声明を出していない中で、今回の制限が特に問題視されているのは、その対象範囲の広さだ。ゲームクローンを狙った明らかな悪用だけでなく、自社ゲームのアンチチート開発、既存ゲームのメカニクスを参考にした正規実装、テーブルトップゲームのパッチ作業といった、著作権侵害とは無縁の業務まで拒否されるケースが続出している。影響を受けた開発者によるissueがClaude CodeのGitHubリポジトリに急増しており、記事公開時点でその数は顕著な増加傾向を示しているという。
Twitterユーザー「Chasm」が共有したとされるルールテキストによると、今回の制限の趣旨は次のように記述されている。
「ユーザー自身のデザインやアセットを使ったオリジナルゲーム、ジャンルゲームは構築してよい。ただし、名前を変えたり『オリジナル』と称していても、既存の特定ゲームを再現するものは構築しないこと。」
Anthropicはこのルールテキストの存在を公式には確認していないが、開発者からの報告の一貫性はその実在を強く示唆している。
問題はゲームにとどまらない。Redditなどでは以前からゲームとは無関係のリバースエンジニアリング作業が拒否されたという報告も散発的に上がっていた。Windowsのクラッシュダンプ解析、SamsungのTV上のジャンクウェア除去、リバースエンジニアリング支援ツールに関するリクエストの拒否などが具体的な例として挙げられている。
タイミング的に関連が疑われるのが、10月6日にAnthropicが導入した「Cyber Verification Program」だ。高度なサイバーセキュリティ機能へのアクセスを、「Project Glasswing」と呼ばれるAnthropicの審査プログラムに参加・承認された組織に限定するという仕組みで、即日施行されている。セキュリティ研究者や企業が高度なサイバー関連の作業をClaudeで行うには、事前に同プログラムへの登録・承認が必要になる。ただし、このプログラムの施行から24日が経過した後に拒否報告が急増しているという時系列のズレは記事内でも指摘されており、別途サイレントなポリシー変更が並行して行われた可能性も否定できない。
こうした制限が導入された背景には、AIを悪用したゲームクローンの氾濫という実害がある。AdobeスイートやMicrosoft Office 365のAIクローン、コンソールゲームのデコンパイル・リコンパイルが相次いでいるほか、特に深刻なのがインディーデベロッパーへの恐喝だ。Steam Next Fest(Steamが定期開催するゲームデモ公開イベント)に出展した小規模スタジオに対し、「デモをクローンして完成版として先にリリースするぞ」と脅すスキャムが報告されている。法的対抗手段を持ちにくい資金力の乏しいインディースタジオが主な標的になっているとされ、こうした実害がAI各社の規制強化を後押ししているとみられる。なお、OpenAIも同様に、TVのソフトウェアクリーンアップを試みたユーザーのアカウントを停止した事例があると記事は言及している。
ネット上での反応は端的だった。ClaudeやChatGPTで対応できない作業については、オープンウェイトのローカルLLMを使えばよいという声がRedditやXで広がっている。同時に、フロンティアAI各社が世界中の著作物を学習データに活用しておきながら、今度は著作権侵害を懸念してユーザーの手を縛っているという皮肉も指摘されており、制限の線引きの妥当性を問う声は収まっていない。Anthropicからはこれらの件について公式声明は出ていない。
詳細はAnthropic's Claude AI blocks video game cloning and reverse-engineeringを参照していただきたい。




