11月1日、My Electric Sparksが「Liquid AI LFM3 Models Launch for Phones, Laptops and Single Board Computers」と題した記事を公開した。Liquid AIがスマートフォン・ラップトップ・シングルボードコンピュータ向けに設計した軽量AIモデルファミリー「LFM3」の発表を詳しく紹介している。4ビット量子化でテキストモデルがわずか1GBのメモリで動作し、Raspberry Pi 5上での実行を想定している点が最大の特徴だ。ライセンスは年間収益1,000万ドル(約15億円、1ドル=150円換算)未満であれば商用利用も無償だが、それ以上の組織は別途契約が必要になる。
テキストモデルがわずか1GBで動作、Raspberry Pi 5でも実行可能
エッジデバイス向けAIの文脈で、1GBのメモリ使用量というのは一つの基準点になりつつある。Liquid AIが10月27日に発表したLFM3ファミリーは、4ビット精度でテキストモデルが約1GBというフットプリントを実現しており、スマートフォンやRaspberry Pi 5上での動作を想定している。
モデルの重みはHugging FaceでGPUサーバー向け・llama.cpp・Apple MLX・ONNX形式で公開されており、単一GPUでファインチューニング可能な設計になっている。
ベースとなるのはLFM3 1.7B Baseという共通チェックポイントで、22兆トークンで学習されている。この1つのバックボーンから6種類のモデルが派生する構成だ。
6モデルのラインナップ
| モデル | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| LFM3 1.7B | テキスト・エージェントツール呼び出し | コンテキスト長256Kトークン |
| LFM3 VL 2B | ビジョン | 画像・動画・ドキュメント・画面読み取り |
| LFM3 Audio 2B | 音声 | 18言語の音声理解・生成 |
| LFM3 Omni 2B | マルチモーダル | テキスト・画像・動画・音声を統合 |
| d1 2B | 決定モデル | テキスト・画像への型付き出力 |
| d1 Omni 2B | 決定モデル(音声追加) | 上記に音声入力を追加 |
決定モデル(d1系)は一般的な生成AIとは性質が異なる。ルーティング、分類、ドキュメント抽出、評価タスクを想定したもので、長文の返答ではなく構造化された形式で出力する。スループットと出力フォーマットの一貫性が重要なビジネスワークフローに向いている。
手に持ったRaspberry Pi 5。LFM3が想定するターゲットデバイスの一つ。Photo: BlackDevice
ベンチマーク数値は要注意
Liquidは自社評価として、テキストモデルが29のベンチマーク平均で49.37を記録し、元記事中で「Qwen 3.5 9B」と表記されるモデル(47.24)を上回ると主張している。なお「Qwen 3.5」という型番は一般的なQwenシリーズの命名規則(Qwen2.5など)と異なるが、本記事では元記事の表記をそのまま踏襲している。ビジョンモデルについてはGemma 4 12Bからわずか1ポイント差と述べている。
ただし、発表時点で独立した第三者検証は存在しない。記事はこの数字をベンダークレームとして扱うよう明示的に注意を促している。
加えてLiquid自身も、テキストモデルについて「エージェント的なコーディングや複雑な多段階推論には推奨しない」とドキュメントに明記している。小型モデルは深さよりも速度とローカル実行を優先した設計であり、長い推論チェーンが必要なタスクには向かない。
ライセンスに年間収益1,000万ドルの壁
モデルの性能と同じくらい重要なのがライセンス条件だ。LFM3はLFM Open License v1.0(Apache 2.0ベース)で公開されているが、年間収益1,000万ドル以上の組織は商用利用にLiquidとの別途契約が必要になる。
- 研究・非商用利用:制限なし
- 年間収益1,000万ドル未満の商用利用:無償
- 年間収益1,000万ドル以上の商用利用:Liquidとの個別契約が必要
- ファインチューニングモデルのオープンソース化:義務なし
なお「1,000万ドル」の円換算額は適用時点の為替レートによって変動するため、商用展開を検討する際は原文のドル建て基準を確認されたい。Hugging Face上のモデルページにライセンスファイルが同梱されているため、商用展開前に内容を精査することを推奨する。
言語カバレッジの確認も必要
テキストモデルは16言語、音声モデルは18言語に対応している。ただし英語ベースのベンチマーク数値が他言語の品質を保証するものではなく、特定言語市場向けに構築するチームは自前でのテストが前提になる。
デスク上のRaspberry Pi 5とラップトップ。LFM3が想定する小規模セットアップ。Photo: Tech Edu Byte
まとめ
LFM3の本質は「AIモデルをデータセンターの外に持ち出す」という方向性にある。狭く速いタスクに絞れば、ポケットの中のデバイスや現場の機器でも実用的なAI処理が可能になる、というのがLiquidの主張だ。ただし、その評価は発表時の数字ではなく、独立したテストとライセンス運用の実績によって決まる。
詳細はLiquid AI LFM3 Models Launch for Phones, Laptops and Single Board Computersを参照していただきたい。




