11月4日、Futurismが「Sam Altman Crows That AI Is Now Smarter Than the Brightest Human Scientists」と題した記事を公開した。OpenAIのSam AltmanがAIは人類最高峰の科学者を超えたと発言し、その根拠をめぐって波紋が広がっている。
Altman「今年に入り、AIは最も優秀な科学者より賢くなった」
アブダビで開催された会議に登壇したOpenAI CEOのSam Altmanは、UAE国営紙The Nationalの編集長との対談の中で次のように述べた。
「今年の初めは、AIはほとんどの場合、われわれの最優秀な科学者ほど賢くはなかった。しかし今は、ほとんどの場合において彼らより賢い」
注目すべきはこの発言の文脈だ。Altmanはこの対談を「AIではなく人間が未来をコントロールすべき」という主張の場として使っており、AIの危険性を強調しながら同時にその能力を誇示するという、やや矛盾した構造になっている。
「PhD級」発言の経緯と今年の"証拠"
Altmanは以前からAIの知能を人間の学者と比較する発言を繰り返してきた。GPT-5のリリース時には「PhD(博士)レベルの知能」を持つと喧伝したが、実態が伴わないとして広く揶揄された経緯がある。
ところが今年、その主張が一部実現したように見える出来事があった。OpenAIは数学界の著名な未解決問題群である「ミレニアム懸賞問題」のひとつ、ナビエ・ストークス方程式の解法を発見したと発表した。
ミレニアム懸賞問題とは、クレイ数学研究所が2000年に選定した7つの未解決問題で、各問題の解決者には100万ドル(約1.5億円)の賞金が設定されている。ナビエ・ストークス方程式は流体の運動を記述する偏微分方程式で、乱流の予測など工学・物理学上の重要課題と直結しており、数学史上もっとも難解な問題のひとつとされてきた。もし本当に解かれたなら、それ自体は歴史的な快挙といえる。
数学者コミュニティとの対立
しかし発表直後から騒動になった。ある数学者がOpenAIは自分の研究を不当に利用したと告発し、さらにScientific Americanの検証では「OpenAIは解くべき問題を間違えたのではないか」との指摘も出た。OpenAIが取り組んだのはナビエ・ストークス問題の亜種であり、ミレニアム懸賞問題が要求する条件を満たしていない可能性があるという。
さらにOpenAIはその後、数百本もの数学的証明を一気に公開した。著名な数学者たちは、自分たちがOpenAIの大量出力の無報酬校正者として扱われているとして強く反発した。数学コミュニティとの関係が険悪になっているまさにそのタイミングで、Altmanが「AIは科学者より賢い」と宣言したことになる。
「正しい」だけでは使えない
問題はそれだけではない。AIが出力した証明は技術的には正しいように見えるが、その自然言語による記述はほぼ理解不能だと数学者たちは指摘している。研究者がそれを解読し活用できるようになるまでに、数年単位の時間がかかる可能性がある。
「正しい答えを出せる」ことと「科学の進歩に貢献できる」ことは別の話だ。AIが答えを出しても、人間がそれを理解・検証できなければ、その知識は実質的に使えない。 これはAIの「賢さ」をどう定義するかという根本的な問いでもある。数学者コミュニティとの摩擦は、AIの出力を既存の科学的プロセスにいかに統合するかという未解決の課題を浮き彫りにしており、Altmanの強気な宣言とは裏腹に、現場レベルでの導入は一筋縄ではいかない状況だ。
AIの能力をめぐるOpenAIの主張は、科学コミュニティとの対立を深めながらも過激さを増している。Altmanの発言が単なるマーケティングなのか、それとも本質的な転換点の表明なのか、見極めにはまだ時間がかかりそうだ。
詳細はSam Altman Crows That AI Is Now Smarter Than the Brightest Human Scientistsを参照していただきたい。




