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Deep Dive

AIが50年来の未解決問題を次々と解く今、数学者の仕事はなくなるのか — 現場の研究者たちの答え

6月21日、El Paísが「AI-era researchers ask whether math is obsolete」と題した記事を公開した。AIが数十年来の未解決数学問題を次々と解く中、数学という学問そのものの将来と数学者の役割について研究者たちが議論している状況を取り上げている。

6月21日、El Paísが「AI-era researchers ask whether math is obsolete」と題した記事を公開した。AIが数十年来の未解決数学問題を次々と解く中、数学という学問そのものの将来と数学者の役割について研究者たちが議論している状況を取り上げている。


AIが数日で数学を揺さぶった

ここ数日の出来事は、数学界に大きな衝撃を与えた。OpenAIが、20世紀ハンガリーの著名な数学者ポール・エルデシュが1946年から未解決だった予想を否定した。その直後、Google DeepMindが50年以上未解決だった問題を含む9つの問題の解答を発表した。

ブラウン大学教授のハビエル・ゴメス・セラーノは、「今回のOpenAIの成果は、世界トップの学術誌に掲載される水準のものだ。これが最後ではないだろうし、我々は真の変曲点にいる」と述べている。なお彼自身、1年前にGoogle DeepMindと協力してナビエ=ストークス方程式(流体力学の難問で、クレイ数学研究所のミレニアム問題の一つ)に取り組んだ当事者でもある。

一方で、DeepMindの創業者であるデミス・ハサビスは現時点の限界を冷静に指摘する。「今のシステムは、インド人数学者ラマヌジャンのような真の発明・直観には程遠い。エルデシュ予想をいくつ解いても、それは変わらない」。


「取れた」のは解答だけ、数学者の本業は別にある

数学者たちが一番強調しているのは、「難問を解く」ことと「数学を営む」ことは別物だ、という点である。

カリフォルニア大学バークレー校の研究者シーウー・リーは、「AIは数学の進歩を加速させるが、『数学』と『数学者』は切り離して考えるべきだ。AIが古い予想を解いたという見出しを見て、大衆は『AIが数学をすべて解く』と想像するが、それは誤りだ」と述べる。数学者の本来の仕事は、難問を解くための適切な定義や定理を構築し、世界の理解を深める「理論の構築」にある。

マンチェスター大学のトーマス・ブルームも、現状の過大評価に釘を刺す。彼はエルデシュが生涯に出した1000以上の問題を追跡するウェブサイトを運営しており、AIの進捗を測る生きたバロメーターとして機能している。「『急加速』という表現は今のところ大げさだ。AIによる新しい解答はいくつか出ているが、まだ大きな跳躍とは言えない」。


「ツールを使えること」より「嘘を見抜けること」が重要

ゴメス・セラーノは、AIを使う数学者と使わない数学者の差について鋭い見方を示している。

「数学的なトレーニングと流暢さを持つ者は、ツールを使うことで優位に立てる。しかしツールだけあって訓練のない者は、自分でも気づかない質の低い成果を大量生産する。AIの優位性は使えることではなく、いつ嘘をついているかを見抜けることだ」

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのサム・リビングストーンは、すでに影響が学術誌に現れていると指摘する。元記事によれば、「権威ある学術誌では2年前と比べて投稿数が20〜30%増加しており、AI関連の可能性があると見られているが、その大半は質が低いと判断されている」という。


数学界の反応:恐怖、無関心、そしてマニフェスト

数学者コミュニティの反応は他の職種と似ており、恐怖・無関心・そして宣言文(マニフェスト)の三種類に収束している。今回の場合は「ライデン宣言(Leiden Declaration on Artificial Intelligence and Mathematics)」として結実した。同宣言は2025年にオランダ・ライデンで開催された国際会議を機に策定されたもので、科学論文におけるAI使用の開示と、人間による著作の確認を求めている。数学コミュニティが組織的にAI利用の規範形成に乗り出した点で、他分野にも先行する動きとして注目される。

ハイデルベルク大学のペトラ・シュヴェアは「数学という学問と数学者コミュニティは、この変化に影響を受けるだろう。しかし数学者の居場所はなくはない。AIはあくまでツールだ。電卓、コンピュータ、数式処理系(CAS)が登場したときも、同じ脅威論があった」と述べている。

カーネギーメロン大学のジェレミー・アビガッドは、「数学はゲームではなく、世界に意味を与え、互いに議論するための重要な営みだ。AIはその助けになるべきであり、使い方を決めるのは人間だ」と締めくくっている。


数学がチェスのように「AIには勝てない競技」になるのか、それとも高度なアシスタントを得た分野として発展するのかは、まだ誰にもわからない。ただ現場の数学者たちの声を総合すると、問われているのは「AIに仕事を奪われるか否か」ではなく、「AIを正しく疑える訓練を積んだ人間が、数学をどう再定義するか」という問いに移行しつつあると言えるだろう。※編集部の考察

詳細はAI-era researchers ask whether math is obsoleteを参照していただきたい。