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Deep Dive

「1万エージェント展開は狂気だ」——老舗エンタープライズSaaS創業者が警告する、AIエージェント大量展開の落とし穴

6月24日、Computer Weeklyが「Pegasystems CEO and founder Alan Trefler on AI agent 'madness'」と題した記事を公開した。Pegasystems創業者兼CEOのAlan Trefler氏が「数千のAIエージェントを野放しにする哲学は狂気だ」と警鐘を鳴らし、エンタープライズにおけるAIエージェント導入の危うさについて論じている。

6月24日、Computer Weeklyが「Pegasystems CEO and founder Alan Trefler on AI agent 'madness'」と題した記事を公開した。Pegasystems創業者兼CEOのAlan Trefler氏が「数千のAIエージェントを野放しにする哲学は狂気だ」と警鐘を鳴らし、エンタープライズにおけるAIエージェント導入の危うさについて論じている。


「1万エージェント展開は狂気」——Treflerの主張

Trefler氏の主張の核心はシンプルだ。主要エンタープライズソフトウェアベンダーが「AIエージェントを数千、場合によっては1万以上稼働させる」方向に企業を誘導しており、その哲学は狂気だ、というものだ。

「[ソフトウェア企業は]すでに数千、場合によっては1万以上のエージェントを稼働させると認めている。その哲学は狂気だと思う」
— Alan Trefler, Pegasystems

Trefler氏が問題にしているのは、AIエージェントの予測不可能性だ。AIは誤ると派手に誤る。記事中ではAI生成コンテンツが引き金となった消費者トラブルの事例が引き合いに出されており、保険の給付審査や融資審査といったミッションクリティカルな業務で同様の失敗が起きれば、企業へのダメージは計り知れないと指摘されている。

主要ベンダーは「コントロールタワー」と呼ばれる監視・管理機能を導入し始めているが、Trefler氏はそれで十分とは見ていない。「バラバラに切り離された取り組みが、重要な業務を動かそうとするのは避けるべきだ。顧客を不当に異なる扱いをするかもしれないし、法規制に違反するかもしれない」と述べている。


アナリストの見解:用途次第で話は変わる

IDCでエージェント型オートメーションとAI技術を担当するリサーチVP、Neil Ward-Dutton氏は、Trefler氏の主張に一定の理解を示しつつも、留保をつける。

保険金請求の資格審査のような高頻度・業務クリティカルなワークフローについては「エージェント群に任せるのは完全な狂気。絶対的な惨事になる」と同意する。

一方で、マーケティングキャンペーンの構築、広告コピーの翻訳、商品カタログの更新確認といった重要度の低い業務では、AIエージェントの活用は現実的だという。デスクトップエージェント型の製品群がその典型として挙げられている。※編集部注:Claude CoworkMicrosoft Scoutはその代表例だが、元記事への明示的な言及は確認できていない。

また、Ward-Dutton氏は「ServiceNow、Salesforce、Microsoftも、表向きの宣伝とは裏腹に、独自のガードレールを導入し始めている」と指摘する。確定的(ルールベースの)ワークフローとAIエージェントを組み合わせるハイブリッドアプローチは、業界全体で収束しつつあるトレンドだという。SalesforceのAgentForceや、Pegasystemsの競合にあたるドイツのCamundaも同様の方向性を採っている。


PegasystemsのアプローチとBlueprint

Pegasystemsの回答は「AIをエージェントとして使うのではなく、業務プロセスの設計に使う」というものだ。

2年前に公開したAI搭載の設計スタジオBlueprintは、ITスキルを持たない業務担当者でもビジネスプロセスやワークフローを設計できるツールだ。かつてはPegaの専門家チームが1〜2週間かけてホワイトボードとPost-itでプロセスをマッピングしていた作業が、今では半日で完了できるという。

Trefler氏はAIエージェントのコスト問題にも触れている。「AIエージェントがコストになる理由は、毎回ゼロから考え直すからだ。次のステップを考え、入力を評価し、目標を確認する。これを毎回繰り返す」。Pegaのアプローチでは、AIが事前に設計されたワークフローに「スナップ(接続)」するため、この再思考コストが発生しない。

成果の実例として、MetLifeはメキシコの引受業務にPegaを導入し、保険証券発行にかかる日数を45〜60日から30〜40日に短縮(約40%削減)。スコットランドの国民健康サービスNHS 24は、Pega・AWS・Coforgeと連携してスタッフ向け医療相談支援システムを構築し、問い合わせ対応時間を平均10分短縮した。

Blueprintを使ったプロジェクトの80%は90日以内に本番稼働しているとTrefler氏は述べている。


AI投資の淘汰と収束を予測

Trefler氏はAI投資全体の持続可能性にも懐疑的だ。カリフォルニア州ハイウェイ101を走ると、見たこともないAI企業の看板が延々と続く——「私はこの業界にいるのに、その80%を知らなかった」と述べている。

彼は2000年の光ファイバーケーブルバブル崩壊を引き合いに出す。当時も過剰投資による企業淘汰が起きたが、敷設された光ファイバーは20年かけて使われていった。AIも同様のサイクル——淘汰と収束を経て技術が定着していく過程——をたどると予測している。

AIトークンのコスト問題についても、Trefler氏は「麻薬の売人が最初は安く売りつけて依存させ、後から値段をつり上げるのと同じだ」と表現している(原文の比喩表現をそのまま引用している)。AIの価値を消費トークン数で測るのは的外れであり、唯一意味のある指標はコスト削減か収益増加か、という点だとTrefler氏は主張する。


Pegasystemsについて

1983年創業のPegasystemsは、エンタープライズ向けBPM(ビジネスプロセス管理)およびCRMソフトウェアを提供する老舗ベンダーだ。現在、年収20億ドル規模に達しつつある。Deutsche Telekom、Lloyds Banking Group、Daimler Trucksといった大企業を顧客に持ち、現在はAccenture、EY、Infosys、AWSといったパートナーを通じて、従来の1,000社から「Gartnerユニバース」と呼ぶ12,000組織への拡大を目指している。

詳細はPegasystems CEO and founder Alan Trefler on AI agent 'madness'を参照していただきたい。