6月24日、VMblogが「CloudZero Survey Says: 78% of Finance Execs Can't Fully Tie AI Spending to Business Outcomes」と題した記事を公開した。クラウドコスト管理プラットフォームを提供するCloudZeroが実施した調査で、財務幹部の78%がAI支出を事業成果に結びつけられていないという実態が明らかになった。「測れないから投資を止める」という連鎖が、AI推進の現場で静かに広がっている。
AI支出のROIを証明できない——財務部門が直面する構造的な問題
CloudZeroはAIへの投資対効果(ROI)に関する調査レポート「Finding the ROI of AI: The Finance Perspective」を公開した。調査対象は260名のシニアファイナンス職(過半数はCFO)で、浮かび上がったのはAI支出の「見える化」が追いついていない現実だ。
最も端的な数字がこれだ。**今後1年以内にAI支出を事業成果に紐づける能力が必要だと答えた財務リーダーは87%にのぼる。しかし現時点でその能力を持つのはわずか22%**——つまり約78%は、自社のAI投資が何を生み出しているかを説明できない状態にある。
なお本調査はCloudZero自身が実施・公表したものであり、同社はこの課題に対するソリューションを販売している。調査結果の解釈にあたっては、その点を念頭に置いておく必要がある。
「数字を出せ」という外部圧力が高まっている
この問題が深刻なのは、財務内部の課題にとどまらない点だ。
- **取締役会の66%**が、追加のAI予算承認の条件として「投資対効果の証明」を求めている
- **財務リーダーの43%**が、現時点では提示できない数字をすでに求められている
- **46%**が「AI支出の管理が業務で最もストレスの大きい部分」と回答している
AI投資の拡大局面において、「とりあえず投資して後で効果を測る」というアプローチが通用しなくなってきている。取締役会が承認の条件としてROI証明を求める以上、財務部門は「説明できる支出」を今すぐ設計しなければならない立場に置かれている。
主要な調査結果:4つのポイント
1. ROI実装のギャップが大きい
**64%の回答者が「成果ベースのROI計測(=支出をコスト削減や売上増などの具体的な事業成果に紐づけること)ができれば、AI投資の意思決定が根本から変わる」と答えている。また60%**が「現在、測定可能な成果で正当化できる以上のAI支出をしている」という記述に同意または強く同意した。ROIを説明できないまま支出だけが先行している構図だ。
2. 予算管理が構造的に機能不全に陥っている
従来の予算管理手法はAIの支出パターンに対応できていない。AIが全体支出に占める割合が増えるにつれ、予算超過が発生する割合は7%から64%へと急増する。しかも予算超過の規模は、そのプロジェクトが中止されるかどうかの指標にはなっていない。問題は「管理された支出」より「根拠のある支出」への転換にある。
3. リアルタイムデータが投資判断を変える
AI支出データを1日以内に受け取れる財務チームは、月次請求書を待つチームと比べて「積極的に投資する」可能性が2倍、AI支出を少なくとも50%成長させる計画を立てる可能性が4倍に達する。支出の可視化速度が、投資姿勢に直結している。データのリアルタイム性が単なる利便性ではなく、経営判断の質そのものに影響を与えている点は注目に値する。
4. 計測できないと投資が止まる
AI成果を測定できないチームの75%が投資を抑制しており、35%はプロジェクトを完全に中止している。計測の欠如は単なる報告上の問題ではなく、事業推進の足かせになっている。ROIが見えないことは、意欲の問題ではなく構造の問題として組織の前進を阻んでいる。
CloudZeroの見解
CloudZero財務担当バイスプレジデントのDan Carducci氏はこう述べている。
「AI支出を事業成果に結びつける能力は、単なる数字の整合性をはるかに超えた問題だ。初日からAI ROIの可視性を持つ財務チームは、より自信を持ってAIプロジェクトに投資し、想定外のコストに驚かされることが少なく、持続可能なAI推進体制を構築できる。改善は進んでいるが、組織は今すぐ精度の高い計測ツールを必要としている。」
なぜ今、この問題が表面化しているのか
生成AIの普及に伴い、エンタープライズ各社のAI関連支出はクラウドインフラ、モデルAPI、データパイプライン、社内ツール開発など多岐にわたる。支出の「量」は把握できても、それが売上増や業務効率化にどう貢献したかを証明するための計測フレームワークが追いついていないのが実態だ。
この問題は、AI特有の難しさでもある。従来のITシステム投資であれば「稼働率」「処理件数」といった定量指標が確立されているが、AIの場合は効果が間接的・非線形に現れることが多く、因果関係の証明が難しい。ROI計測の標準化は業界全体の未解決課題であり、CloudZeroのようなクラウドコスト分析ツールはその一つのアプローチを提供しているものの、普遍的な手法はまだ存在しない。財務部門と事業部門が共通の計測軸を持てるかどうかが、AI投資の次のフェーズを左右する分岐点になるだろう。
詳細はCloudZero Survey Says: 78% of Finance Execs Can't Fully Tie AI Spending to Business Outcomesを参照していただきたい。




