6月19日、InfoWorldが「Using Visual Studio Code's 'air-gapped' AI model mode」と題した記事を公開した。社内ポリシーでソースコードの外部送信が禁止されている、あるいはインターネット接続が制限された環境で開発している——そうした開発者にとって、GitHub Copilotのようなクラウド型AIアシスタントは「使いたくても使えない」ツールだった。VS Codeに搭載された「BYOMモード(Bring Your Own Model)」は、そのジレンマを解消する仕組みとして注目されている。
BYOMモードとは何か
BYOMモードとは、VS Code上のAIアシスタント機能に対して、GitHub Copilotなどの外部クラウドサービスではなく、自前でホスティングしたLLM(大規模言語モデル)を接続して使う仕組みだ。VS CodeのLanguage Model API経由でローカルまたはオンプレミスのモデルサーバーと通信するため、コードやプロンプトの内容が外部のサーバーに送信されることはない。
「エアギャップ」とは、ネットワーク的に外部インターネットから完全に切り離された環境を指す用語だ。金融・医療・防衛といったセキュリティポリシーが厳格な業界では一般的な構成であり、BYOMモードはこうした環境下でもAIアシスト開発を実現する手段として機能する。
VS CodeのBYOMモードは、GitHub Copilot Chat拡張機能のインターフェースをそのまま流用しつつ、バックエンドのモデルエンドポイントだけを差し替える形で動作する。接続先として指定するのはOpenAI互換APIエンドポイント(OpenAIのREST API仕様に準拠したHTTPエンドポイント。ローカルモデルサーバーの多くがこの形式をサポートしている)であり、LM StudioをはじめとするローカルLLMサーバーはこの形式で通信を受け付ける。
VS Code上での接続手順
BYOMモードの設定はVS Codeの設定UIから行う。おおまかな手順は以下のとおりだ。
- GitHub Copilot Chat拡張機能をインストールし、Copilotのチャットパネルを開く
- モデルピッカー(モデル選択ドロップダウン)から「Add Model…」または「Manage Models」を選択する
- プロバイダーとして「OpenAI Compatible」を選び、ローカルサーバーのエンドポイントURL(例:
http://localhost:1234/v1)とモデル名を入力する - 設定を保存すると、以降のチャットおよびインライン補完がローカルモデル経由で動作するようになる
VS Code側が要求するのはOpenAI互換のREST APIであるため、LM Studio以外にもOllamaやllama.cppのサーバーモードなど、同仕様に対応したツールであれば代替として利用できる。
まずモデルホストを用意する
ローカルLLMを手軽にサーブする選択肢として記事が挙げているのが LM Studio だ。GUIベースでモデルのダウンロード・起動・管理が完結するアプリで、起動後にローカルサーバーモードをオンにするだけでOpenAI互換エンドポイントが立ち上がる。VS Codeと同一マシンで動かすことも、LAN内の別マシンやオンプレミスサーバー上に立てることも可能だ。
モデルの選び方が重要
モデル選択も工程のひとつだ。能力が高くても、手元のハードウェアで動かせない規模のモデルでは意味がない。VRAM(GPU上の専用メモリ)の容量がボトルネックになるため、記事では次のような基準が示されている。
- 既存のVRAMに収まるサイズを選ぶ。トークンコンテキスト処理のメモリ余裕も見込んでおく必要がある
- コーディング・開発作業に特化したモデルを優先する
記事が具体的なコーディング向けモデルの例として挙げているのは、Qwen2.5-CoderやDeepSeek-Coderといったシリーズだ。これらは比較的小さいパラメータ数でもコード補完・生成の精度が高く、8GB VRAM程度のコンシューマ向けGPUでも動作する量子化版が広く配布されている。モデルの具体的なバリアント選定や量子化形式の選び方については元記事に詳しい。
GitHub Copilotとの使い分け
BYOMモードはCopilotの「代替」として位置づけられているが、すべての面でCopilotを上回るわけではない。クラウド型のCopilotは常に最新・最大規模のモデルへのアクセスが保証されており、セットアップも不要だ。一方、BYOMモードの優位性はデータがローカルから外に出ない点とモデルの選択・切り替えが自由である点にある。コードの機密性が高いプロジェクトや、特定ドメインに特化したモデルを使いたい場面での活用が現実的だ。
エアギャップ構成の実用的な意義
クラウドのAIサービスは便利だが、ソースコードをAPIに送信することをポリシー上禁じている組織は少なくない。VS CodeのBYOMモードとローカルLLMを組み合わせることで、コードがマシンの外に出ないことを保証しながらAIアシスト開発の恩恵を受けられる構成が成立する。
LM StudioやOllamaのようなローカルモデルホストツールが急速に普及しているのも、こうした現場ニーズの高まりが背景にある。VS Codeが標準的な接続インターフェースとしてOpenAI互換エンドポイントを採用したことで、ツールチェーンの選択肢はさらに広がった。
詳細はUsing Visual Studio Code's 'air-gapped' AI model modeを参照していただきたい。




