6月26日、The Next Webが「Claude is winning over paying consumers in a market ChatGPT has owned, credit card data shows」と題した記事を公開した。企業向けAPIの雄というイメージが強いAnthropicだが、数千万人規模のクレジットカード取引データという第三者の実購買記録が、一般消費者市場での勢力図の変化を裏付けつつある。ChatGPTは依然として圧倒的な規模を誇るが、そのシェアは2025年3月に初めて50%を割り込んだ。
クレジットカードデータが示す「本物の支払い」の変化
ユーザー数やアプリDLではなく、実際にお金を払った人数の動向を追ったのが、クレジットカード取引分析企業Indagariの調査だ。約2,800万人の米国消費者から得た匿名化トランザクションデータ(数十億件規模)を分析した結果、ClaudeのAI有料ユーザー数と収益は2025年1月以降で約75%増加したことが示された。対象にはサブスクリプションとAPIトークンの支払いが含まれる。絶対的な収益額の算出はできないが、トレンドの方向性を捉えるには十分な規模だとIndagariは説明している。
この数字が示す意味は大きい。これまでAnthropicの強みは開発者向けAPIにあると見られていた。しかし今回のデータは、エンタープライズのAPIユーザーだけでなく、一般の有料消費者層においても存在感を高めているという事実を示している。なお、Anthropicのコーディング特化AIアシスタントClaude Codeは2025年5月に一般公開されており、開発者層への普及加速がサブスクリプション収益を下支えしている可能性がある。
「Claude」がDataCampで最多検索ワードに、「AI」を抜く
別の角度からも同様の傾向が確認されている。約2,000万ユーザーを抱えるオンライン教育プラットフォームDataCampによれば、「Claude」が同サイトの最多検索ワードとなり、「AI」という単語すら上回った。自主学習ユーザーの間では、ClaudeコースへのニーズがChatGPTの3倍に達しており、直近30日間のコース需要は18倍に増加している。
ただし、DataCamp上での企業研修プログラムではChatGPTコースが依然として圧倒的に多い。エンタープライズと個人消費者の間で選好が大きく乖離しているという構図は、両社を比較する上で重要な視点だ。個人がClaudeを積極的に学ぼうとする一方、企業の公式研修カリキュラムはまだChatGPT中心のままという"ラグ"が生じている。
ChatGPTはまだ圧倒的、だがシェアは50%を割った
ChatGPTのリードは依然として大きい。2025年5月に月間アクティブユーザー10億人を突破しており、これはどのアプリも達成したことのないスピードだ。Sensor Towerのデータでは、Claudeは全プラットフォームで成長しているものの、ChatGPTとの差は依然として大きい。新規ユーザーの継続率もChatGPTの方が高いが、この差は縮まりつつあるとされる。
一方で、ChatGPTの市場シェアが2025年3月に初めて50%を下回ったことは、独占的な優位が揺らぎ始めたシグナルとして注目されている。ユーザー総数が増え続けながらもシェアが低下するのは、AI利用市場全体が急拡大する中でClaude・Geminiなど競合が相対的に速いペースで伸びているためだ。絶対値では過去最大でも、相対的なポジションは変化しているという構図である。
政府との摩擦と、逆説的な消費者流入
市場の変化と並行して、Anthropicは政治的な摩擦にも直面している。元記事によれば、米国政府がAnthropicのモデル「Fable 5」および「Mythos 5」の稼働停止を命じたとされる。この経緯について元記事は詳細な背景を提供していないが、Anthropicが2025年3月にトランプ政権による大量監視・自律型兵器へのモデル利用を公式に拒否したことと連続した文脈で語られている。
皮肉なことに、この拒否を表明した際、サインアップ数はむしろ急増した。今回のモデル停止後も消費者の流入は続いており、政府との対立が有料ユーザー獲得に逆効果となっていないことが今のところデータから読み取れる。倫理的な立場を明確にしたことが、一部の消費者層に支持されている可能性がある。
IPO前の消費者収益は投資家に向けたシグナルになる
この市場動向が持つ意味は、ビジネス面でも大きい。AnthropicはIPOの機密申請を6月に行い、評価額は約965億ドルに達する見込みだとされる。OpenAIも上場を準備しており、両社の上場に向けて投資家はAPIや企業契約だけでなく、予測可能なサブスクリプション収益が生まれる消費者市場での成長を確認したいはずだ。その意味で、今回のクレジットカードデータや検索トレンドは、Anthropicが「開発者向けの会社」を超えつつあることを示す材料として、投資判断にも影響し得る。
Anthropicはこのデータに対するコメントを拒否した。同社はサブスクライバー数を公開していないが、2026年に入ってから複数の独立した調査が同じ方向を指している。
詳細はClaude is winning over paying consumers in a market ChatGPT has owned, credit card data showsを参照していただきたい。




