6月26日、CNBCが「OpenAI and Anthropic face new AI reality as companies shift from tokenmaxxing to efficiency」と題した記事を公開した。この記事では、企業のAI支出が「使い放題」から「費用対効果重視」へと転換しつつあり、OpenAIとAnthropicのビジネスモデルに逆風が吹き始めている状況について詳しく紹介されている。
「年間AIバジェットを4ヶ月で使い切った」
象徴的なのがUberの事例だ。同社CTOのPraveen Neppalli Nagaが今年4月に明かしたところによると、Uberは年間AIバジェットをわずか4ヶ月で使い果たした。これを受けて同社は今月、AI利用に支出ティアを導入。ベースレベルを月1,500ドルに設定し、それ以上の利用は申請制とした。
同様の動きはスタートアップでも起きている。AIスタートアップ「Lindy」のCEO、Flo Crivello(34歳)は今月、AnthropicのClaudeから中国のDeepSeekへ100%トラフィックを移行した。
「コスト曲線が急落するのを目の当たりにした」とCrivelloはCNBCのインタビューで語った。この判断で数ヶ月以内に数百万ドルのコスト削減を見込んでいるという。約25人規模の同社は、それでもAI支出が人件費を上回ると見ているが、「ビジネスの生存の問題だ」と言い切った。
Crivello自身はAnthropicのファンだと語っており、「価格が再び下がれば戻るかもしれない。でも今は選択肢がある」と述べた。
「トークンマックシング」の終焉
この記事が指摘する構造的変化が、「tokenmaxxing(トークンマックシング)」の終わりだ。これは開発者がコスト度外視でAIにトークンを大量投入し、成果よりも利用量を最大化しようとする行動様式を指す業界用語で、AIコーディング支援の普及とともに特に顕著になっていた。
コンサルティング会社Highspringのプレジデント、Jeff Henryは「あらゆる企業が同じスペンドクラッシュを経験している」と話す。クライアントの中にはROIを証明できるまで支出を抑制しているところや、今後12〜18ヶ月間は大きな意思決定を先送りにしているところもあるという。
企業の対応策として広がりつつあるのがモデルルーティング——タスクの複雑さに応じて最適なモデルを自動選択する手法だ。単純なタスクには安価な小型モデルを、複雑なタスクにのみ高コストのフロンティアモデルを充てることで、全体のAI支出を抑制できる。ただしGleanのCEO、Arvind Jainによれば、現時点でもエンタープライズAI利用の約95%はまだフロンティアモデル(最先端の高コストモデル)で動いており、ルーティングへの移行は道半ばだ。
経費管理スタートアップRampの共同CEO、Eric Glymanはこう指摘する。「ほとんどのCFOは、このコストの急増を年間計画に織り込んでいなかったし、管理するツールも持っていなかった。トークンと知能に対する支出という第三の柱が突然出現した形だ」
IPO前に「ピーク成長率」を刻みたいOpenAIとAnthropicの事情
こうした状況が、両社の上場戦略に影響を与えている可能性がある。
AnthropicとOpenAIはともに6月上旬に非公開でIPO申請を行った。Anthropicの直近のARR(年換算収益)は470億ドルに達しており、前年の通期収益が約100億ドルだったことと比べると急拡大している(ARRはある時点の収益を年率換算した指標であり、通期の実績収益とは性質が異なる点に注意が必要だ)。OpenAIは250億ドルペース(2025年通期は131億ドル)と、こちらも数字上は急成長が続いている。
D.A. DavidsonのアナリストGil Luriaは「AnthropicとOpenAIの現在の成長率は、今後二度と出ない最速の数字だ。それは単純な算数の問題だ」とCNBCに語った。大企業顧客がトークン支出を制限し始める前に上場しておきたいという動機も働いている、とLuriaは分析する。「いつかAI支出が合理化される時期が来る。それが来る前に上場することへの焦りが生まれている」
なお、The New York Timesは6月25日、関係者の話としてOpenAIは上場を来年に持ち越す方向で検討中と報じている。IPOのタイミングについては複数のシナリオが浮上しており、現時点で確定的な見通しは示されていない。
MicrosoftとGoogleが「低コスト」で挟み撃ち
価格競争に拍車をかけているのが、OpenAIとAnthropicの最大スポンサーでもある大手テック企業の動向だ。皮肉なことに、両社に巨額出資してきたMicrosoftとGoogleが、より安価なモデルを市場に投入することで、出資先企業の収益基盤を揺るがしている構図が生まれている。
Microsoftは今月、低コストモデル群を発表し、GitHub CopilotではタスクごとにモデルをルーティングするAuto Model Selectionを導入した。SatyaNadellaは6月のエッセイで「すべての価値が少数のモデルに集中する世界は、政治経済的に許容されない」と明言している。これはOpenAIへの依存度を意図的に下げ、自社のAIスタックを多様化する姿勢の表明とも読める。
Googleは先月の開発者会議でGemini 3.5 Flashを発表。CEOのSundar Pichaiによれば、同等のフロンティアモデルの半額、場合によっては3分の1の価格で提供するという。Googleは自社の検索・広告事業とのシナジーを持ち、AI単体での収益化プレッシャーがOpenAIやAnthropicほど大きくないため、価格攻勢を長期にわたって維持できる体力がある。
AmazonのAI担当トップPeter DeSantisは「AIにはコスト問題がある。すべてを変革するためには、コストが変わらなければならない」と述べ、自社チップを活用した低コストモデル開発を進める姿勢を示した。
PitchBookのアナリストHarrison Roflesは「MicrosoftとGoogleはフルスタックのインフラと能力を持っており、OpenAIとAnthropicの両方を挟み撃ちにできる」と語った。上流ではクラウドインフラとチップ、下流では低価格モデルの提供——この二方向からの圧力が、スタートアップとして独立したポジションを保とうとする両社の競争優位を削ぐ可能性がある。
資金調達の観点でも、Battery VenturesのGeneral Partner、Dharmesh Thakkerは「伝統的な資金源が枯渇しつつある。これらの企業に投資できる機関投資家はすでに投資済みだ」と指摘しており、IPO市場が新たな資金調達の主要手段になりつつある状況が浮かび上がる。
詳細はOpenAI and Anthropic face new AI reality as companies shift from tokenmaxxing to efficiencyを参照していただきたい。




