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Deep Dive

AIの効果を「削減した時間」で測るのをやめよ — MicrosoftやAppleで30年超のキャリアを持つDave Coplinが語る「効率性」より「効果性」を問うべき理由

6月27日、Amanda Hetlerが「AI ROI: Focus on outcomes, not hours saved」と題した記事を公開した。この記事では、AIのROIを「節約した時間」ではなく「ビジネスアウトカム(成果)」で測るべき理由と、その実践的な考え方について詳しく紹介されている。

6月27日、Amanda Hetlerが「AI ROI: Focus on outcomes, not hours saved」と題した記事を公開した。この記事では、AIのROIを「節約した時間」ではなく「ビジネスアウトカム(成果)」で測るべき理由と、その実践的な考え方について詳しく紹介されている。


「時間削減」で測るAI ROIは、なぜ間違いなのか

記事の中心となるのは、Dave Coplinのインタビューだ。CoplinはMicrosoftやAppleで合計30年以上のキャリアを持ち、現在は「Chief Envisioning Officer」として非技術系の経営層にテクノロジーの可能性を伝える立場にある。2026年6月に米ラスベガス(Las Vegas)で開催されたInfo-Tech Research Groupのイベントで基調講演を行った。

Coplinの主張はシンプルかつ辛辣だ。

「時間削減で何かを節約したことには興味ない。その節約した時間で何をするのかを教えてほしい。どうやって顧客により多くの価値を届けるのか、従業員のエンゲージメントをどう高めるのか」(意訳)

これまでのデジタルトランスフォーメーション(DX)がことごとく「成果を言語化できなかった」のは、測定指標が「節約時間」や「削減人件費」に偏っていたからだとCoplinは指摘する。時間は測定が容易だが、アウトカムは主観的だ。そのため、特に中間管理職や若手マネージャーは、判断の難しいアウトカム評価を避け、数字で出やすい時間指標に逃げてしまう。


「効率性」ではなく「効果性」を問え

Coplinが強調するのが、efficiencyとeffectivenessの違いだ。

  • Efficiency(効率性): 同じことをより速く、より安くやる
  • Effectiveness(効果性): 正しいことをやっているかどうか

Coplinはイギリスの大手ホスピタリティ企業の取締役会メンバーでもある。その企業では「われわれはホスピタリティ業ではなく、エンターテインメント業だ」という認識を共有しているという。

提供物はビールや食事ではなく、顧客が施設で得る「体験」だ。ビールのコストを下げる方向にフォーカスすれば、顧客サービスや空間の質という本質を見失う。AIトランスフォーメーションも同じ構造だとCoplinは言う。「より安く、より速く」という効率の文脈でAIを評価し続けるかぎり、組織の能力が本当に向上しているかどうかは見えてこない。

AI ROIの正しい問いは「何時間削減できたか」ではなく、「顧客は喜んでいるか。従業員はより多くの価値を届けられるようになったか」だ。


IKEAの事例:人をAIと戦わせない

AI導入による雇用喪失への不安に対し、Coplinが引用するのがIKEAの事例だ。IKEAは工場のオートメーション化を進めた際、余剰となった作業員を解雇せず、店舗でインテリアデザインコンサルタントとして再訓練した

「humans vs. machine」ではなく「human + machine」の構図を作れるかどうかは、組織文化の問題だとCoplinは言う。また、多くの経営幹部がAIを「高機能なGoogle検索」として使い、コンテキストも与えず、問いも曖昧なまま使っている実態を問題視する。結果として「まあまあ使える」という評価で止まり、組織の能力を本当に底上げするところまで至らない。


シャドーAIは「問題」ではなく「シグナル」

記事後半では**シャドーAI**(IT部門の管理外で従業員が個人的にAIツールを使うこと)への対処が論じられている。

Coplinの視点は独特だ。シャドーAIは「リスク」ではなく、「従業員がテクノロジーに本気で興奮しているサイン」だと捉える。IT部門が30年かけても「テクノロジーに少しでも関心を持ってもらう」ことに苦労してきた歴史を踏まえれば、現在のビジネス部門から「もっとやらせてくれ、アイデアがある」という声が上がっている状況は、むしろ歓迎すべきだという。

ガバナンスの名の下にシャドーAIを「禁止・遮断」すれば、そのエネルギーとモメンタムを失う。IT部門とビジネス部門は「どちらかがどちらかに奉仕する」関係ではなく、ビジネス部門は何をすべきかを知っており、IT部門はテクノロジーで何ができるかを知っている——この相補関係を活かした共同ガバナンスが必要だとCoplinは結論づける。

リスク管理についても、「100%の保証は出せないが、何%の確信が必要か」をCFOやCEOと明示的に議論することを推奨している。テクノロジーリスクは今やIT部門だけの問題ではなく、ビジネスリスクとして全社で共有すべきものだ。


詳細はAI ROI: Focus on outcomes, not hours savedを参照していただきたい。