powered by TechFeed
表示モード
Deep Dive

AIの競争優位はもうモデルの性能ではない — データインフラが次の戦場になる理由(Oxylabs CEO)

6月27日、The Next Webが「AI won't be powered by better models alone, says Oxylabs CEO Vytautas Savickas」と題した記事を公開した。プロキシサービスやWebスクレイピングAPIを主力とするデータインフラ企業OxylabsのCEO、Vytautas Savickas氏が、AIの競争優位はモデルの性能向上だけでなく、リアルタイムデータへのアクセスを支えるインフラにシフトしつつあると主張している。あくまでOxylabs CEOの主観的見解を軸にした取材記事だが、その論点は示唆に富む。

6月27日、The Next Webが「AI won't be powered by better models alone, says Oxylabs CEO Vytautas Savickas」と題した記事を公開した。プロキシサービスやWebスクレイピングAPIを主力とするデータインフラ企業OxylabsのCEO、Vytautas Savickas氏が、AIの競争優位はモデルの性能向上だけでなく、リアルタイムデータへのアクセスを支えるインフラにシフトしつつあると主張している。あくまでOxylabs CEOの主観的見解を軸にした取材記事だが、その論点は示唆に富む。


「AIはもはやモデルの問題ではなく、インフラの問題だ」

Oxylabs CEOのSavickas氏は、AI業界の最大の転換点はモデルの改善ではなく、その「周辺」にあると主張する。

「過去3年間、AIはより良いモデルの話だった。次の章は、モデルを取り巻くすべてのもの、インフラ、システム、そしてAIが現実世界で動作するためのライブ情報の話だ」

AI Engineer World's FairでSan Franciscoに数千人のエンジニアが集まるなか、Savickas氏の視点は会場の空気とはやや異なる方向を向いている。


AIインフラの3つの波

Savickas氏は、AIの主要な技術的ブレークスルーが、その都度インフラへの要求を根本から変えてきたと整理する。

  1. 第1波:基盤モデルの訓練。大量の多様な公開データが必要だった。
  2. 第2波:RAG(Retrieval-Augmented Generation)の登場。5分前に何が変わったかをAIが把握する必要が生じた。「昨日の世界」では足りなくなった。
  3. 第3波:エージェント時代。AIが検索し、比較し、検証し、購入し、ユーザーに代わってタスクを完了するようになっている。

「公開ウェブは数十億人の人間のために構築された。今、私たちはそれを数十億のAI駆動のインタラクションに対応させようとしている。それはインフラに求めるものを根本から変える」

RAGは、学習済みの知識に外部の最新情報を動的に組み合わせる手法で、LLMの「知識の鮮度」問題への対処として広く使われているが、Savickas氏はその先のエージェント時代においては、ウェブへのリアルタイムアクセス基盤そのものが競争の核心になると見ている。


ハルシネーションの本質はモデルではなくデータの鮮度

Savickas氏のハルシネーション論は単純明快だ。

「モデルが嘘をつくのは、必ずしもそのモデルが賢くないからではない。多くの場合、古く、不完全で、検証不能な情報を使って推論しようとしているからだ」

Oxylabsは今回のAI Engineer World's Fairにあわせ、San Francisco市内に「**Models Hallucinate. Fresh Data Doesn't.**」というメッセージを掲示した。

「意図的にシンプルにした。でも、本質的なことを表している。AIには推論だけでなく、現実が必要だ」

この切り口は、ハルシネーション対策をファインチューニングやモデルアーキテクチャの問題として捉えがちなエンジニアへの問い直しとして機能している。OpenAIやAnthropicといった主要モデルプロバイダーがモデルの推論能力改善にリソースを集中させている一方、「データの鮮度と信頼性」という軸での差別化余地がプレイヤー間で生まれつつあるという見方だ。


エージェントが失敗する理由はモデルではない

エージェント時代のインフラ論として、Savickas氏は具体的な課題を列挙する。

「今日、誰もがAIエージェントの構築を語っている。明日、誰もがなぜそのエージェントが失敗するのかを問うことになる。多くの場合、答えはモデルではない。そのモデルを現実世界に接続するインフラだ」

AIエージェントに求められるのは、推論能力だけではない。ウェブサイトのナビゲート、認証、情報の検証、選択肢の比較、アクションの実行——これらを確実にこなすためには、レイテンシ、信頼性、ブラウザ自動化が不可欠だと同氏は指摘する。

「レイテンシは重要だ。信頼性は重要だ。ブラウザ自動化は重要だ。どれもヘッドラインにはならないが、AIが実際に機能するかどうかはすべてそれで決まる」

Oxylabsはこうした課題に対して、Scraper APIWeb Unblockerといったプロダクト群を提供しており、JavaScriptレンダリングやブラウザ自動化を含むエージェントインフラとしての活用を想定した設計になっている。エージェントがリアルタイムでウェブ情報を取得・検証するユースケースが増えるほど、こうしたインフラレイヤーの重要性は増す。


Oxylabsの立ち位置

Oxylabsはプロキシネットワーク・Webスクレイピング向けAPIを中心に、企業がパブリックウェブから情報を大規模・安定的に取得するためのインフラを構築してきた企業だ。今日のAIブームよりはるか以前から同分野に取り組んでおり、現在は世界150カ国以上で1万5,000社超のクライアントを抱え、160以上の特許を保有。世界最大規模のパブリックウェブデータインフラの一つを運用している。

「AIがこの市場を一夜にして作ったように見えるかもしれない。実際には、AIがこの課題を作ったのではない。まったく新しいスケールで露わにしただけだ」

日本市場においても、ECサイトの価格監視や競合情報収集、ニュースソースのリアルタイム取得といった用途でWebスクレイピングインフラへの需要は拡大しており、AIエージェントの普及がその需要をさらに加速させる可能性がある点は注目に値する。※編集部の考察


勝者はモデルではなく、信頼されるシステムを作る企業

Savickas氏の結論はシンプルだ。

「AIで勝つ企業は、必ずしも最大のモデルを構築する企業ではない。ユーザーが最も信頼するシステムを構築する企業だ」

モデル性能の競争が続く一方で、「現実世界への接続性」という軸での差別化が始まっているというのが同氏の見立てだ。これはデータインフラを本業とするOxylabs CEOの立場からの主張である点は割り引く必要があるが、エージェントの普及が加速するほど、この論点の重みは増す。


詳細はAI won't be powered by better models alone, says Oxylabs CEO Vytautas Savickasを参照していただきたい。