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Deep Dive

AIエージェント開発6ヶ月の正直な評価 — 「10倍生産性」にはならなかったが、それでも使い続ける理由

6月28日、David Vujicが「Reflections: 6 months of Agentic Engineering」と題した記事を公開した。AIエージェントを使った開発スタイル「Agentic Engineering」を6ヶ月間実践して得た知見をまとめたものだ。「完璧ではないし、10倍にもならなかった。でも、うまく機能している」——この一文が、記事全体のトーンを象徴している。熱狂でも拒絶でもなく、懐疑と実利のバランスで使い続けるという姿勢は、AIエージェント導入を検討するエンジニアにとって参考になるはずだ。

6月28日、David Vujicが「Reflections: 6 months of Agentic Engineering」と題した記事を公開した。AIエージェントを使った開発スタイル「Agentic Engineering」を6ヶ月間実践して得た知見をまとめたものだ。「完璧ではないし、10倍にもならなかった。でも、うまく機能している」——この一文が、記事全体のトーンを象徴している。熱狂でも拒絶でもなく、懐疑と実利のバランスで使い続けるという姿勢は、AIエージェント導入を検討するエンジニアにとって参考になるはずだ。


「10倍生産性」にはならなかったが、十分に機能している

David Vujicは2026年初頭からAgentic Engineeringに全面移行した。その結論は率直だ——「完璧ではないし、10倍にもならなかった。でも、うまく機能している」

気になるのは開発時間の変化だが、意外な事実がある。開発時間と設計・レビュー時間の比率は、エージェント導入前とほぼ変わらないという。エージェントが実装を担うようになれば、人間がレビューに追われてボトルネックになると思われがちだが、実際には逆で、「エージェント導入前の方がレビューがボトルネックだった」とVujicは述べる。チームとしてレビューフローの改善に取り組んだことも一因だが、エージェント時代に入って状況が悪化したわけではないということだ。

また、「エージェントが週末に何百ものPRを量産する」といった話も、自身には当てはまらなかったと正直に書いている。AIで既存SaaSをゼロから作り直す、といったことも今のところ必要性を感じていないとのことだ。


「Vibe Coding」との決定的な違い

この記事で最も核心をつくのが、Agentic EngineeringとVibe Codingの対比だ。

Vibe Codingとはコードをブラックボックスとして扱う開発スタイルで、出力結果だけを見てよしとするアプローチを指す。Vujicはこれに否定的だ。コードの品質を気にしない開発は、長期的に保守が困難なソフトウェアを生む。

一方でAgentic Engineeringは、エージェントの作業過程を監視し、インクリメンタルな結果を見ながら人間がステアリングし続けるスタイルだ。「コードの品質とは何か、読みやすいコードとは何か、シンプルなコードとは何かを決めるのは、今も昔も人間だ」とVujicは言う。

エージェントは複雑なコードに混乱しやすく、複雑なコードをインプットにすると同様に複雑なコードを出力する傾向があると、CodeSceneの研究も示している(※リンク先はCodeSceneのリサーチ一覧ページ。元記事で言及されている具体的な研究については元記事本文を参照のこと)。品質管理を怠ると負のスパイラルに陥る、という警告だ。


静的解析ツールとオープンソースへの信頼

実用的なTIPSとして、静的解析ツールのAgenticワークフローへの組み込みが紹介されている。LinterやUnit Testは従来通り重要だが、さらにコードの複雑性・可読性をスコアリングするツールを追加し、Code Health MCPを活用しているという。エージェントはスコアが健全になるまで自律的に修正を繰り返し、人間のレビューに達する前に品質チェックが完了する仕組みだ。また、AIによるチェックよりも静的解析ツールを使う方がトークン消費を抑えられるという実利的な理由も挙げている。

もうひとつ強調されているのがベンダーロックインへの警戒だ。Vujicはかつて.NETがWindowsとMicrosoftに強く依存していた時代を経験しており、現在のAIプロバイダーに対して同じ過ちを繰り返したくないと述べる。そのため、エディタにEmacsを使い、AIプロバイダーに依存しないツールEcaを採用している。実際、AnthropicがダウンしているときにGeminiへ即座に切り替えて作業を継続できたと書いており、同僚が「Claude落ちてる」ミームを投稿している間も自分は手を止めなかったという。


6ヶ月後も懐疑的——それでも使い続ける理由

Vujicの姿勢は終始クールだ。6ヶ月が経った今もエージェントとLLMの出力を完全には信頼していないと明言する。ただ同時に、「自分のコンフォートゾーン外の開発に踏み込む際の自信が増した」とも述べており、懐疑と実利のバランスで使い続けているという。

熱狂でも拒絶でもなく、批判的に使いながら実務に組み込む——そのスタンスが6ヶ月の実践から導き出した結論だ。Agentic Engineeringを「魔法の生産性向上ツール」として捉えるのではなく、人間がステアリングし続けることを前提に、品質管理の仕組みごと設計する。この視点は、これからエージェント活用を本格化させようとするチームにとって、地に足のついた出発点になるはずだ。


詳細はReflections: 6 months of Agentic Engineeringを参照していただきたい。