7月15日、The Next Webが「Dimon says AI already eliminated 30 to 40 percent of jobs in some JPMorgan divisions」と題した記事を公開した。JPモルガンのCEO・ジェイミー・ダイモンが決算説明会で「一部部門でAIによる雇用削減がすでに30〜40%に達している」と数字を明言した一方、「AIが利益率を改善することはない」とも断言しており、AI投資の効果をめぐる経営トップの率直な発言として注目を集めている。
「AIによる雇用削減30〜40%」——ダイモンが初めて数字で認めた
JPモルガン・チェースのCEO、ジェイミー・ダイモンは7月15日の第2四半期決算説明会で、銀行の一部部門においてAIの活用により雇用が最大40%削減されたと明言した。
AIが利益率の改善につながるかを問うアナリストに対し、ダイモンは否定的な見解を示した。
「AIから一方的に恩恵を受けることはできない。もしそれが可能なら、過去20年間のコンピュータ化によって、今頃利益率は80%になっていたはずだ。」
つまり、競合他行も同様にAIを導入して顧客サービスを向上させるため、コスト削減の恩恵は顧客側に流れていき、特定の銀行だけが利益を独占することにはならない、という論理だ。また、影響を受けた従業員の多くは社内の別のポジションに配置転換されたとも述べている。
削減が進む一方で、純利益は41%増
この発言は、JPモルガンが第2四半期に純利益210億ドル超(前年同期比41%増)を報告した同日に行われた。増益の要因の一つはVisa株への投資で得た数十億ドル規模の利益だが、全事業部門が過去最高収益を記録し、投資銀行手数料は前年比30%増と2021年以来の最高水準に達した。
なお、同日にはウォール・ストリートの大手6行が1四半期で合計1万5,000人を削減しつつ470億ドルの利益を計上したことも報じられており、AI活用による構造的なリストラがセクター全体で進んでいる状況が浮き彫りになっている。
AI投資の現状:約200億ドルの技術予算と150万人規模の社内活用
JPモルガンのAI活用の規模感は以下のとおりだ。
- 技術予算:約200億ドル(年間)
- AI活用ユースケース:約1,000件(不正検知、マーケティング、議事録作成など)
- 社内LLM(大規模言語モデル)利用者:週次で150万人以上(全従業員30万人超のうち)
5月にはダイモン自身が、今後は銀行員の採用を減らしAIスペシャリストの採用を増やす方針を示しており、人材獲得も積極的に進めている。その一例として、野村證券からシニアAI戦略人材を引き抜いたことが報じられている。野村證券はアジア有数の金融機関であり、JPモルガンがグローバルなAI人材市場で競合金融機関とも渡り合っている様子がうかがえる。
次の注目コスト:「トークン費用」
CFO(最高財務責任者)のジェレミー・バーナムは、新たなコスト項目としてトークン費用(AIモデルの推論実行コスト)に言及した。現時点では無視できる水準で、2026年末まではその状態が続く見込みだが、年後半から急加速すると予測している。「どの目的にどのモデルを使うか」の選定が、今後のコスト管理において重要になってくると述べた。
矛盾の構造
この決算説明会が浮き彫りにしたのは、ウォール・ストリート全体に広がるある矛盾だ。AIは確かに雇用を削減し、測定可能なコスト削減をもたらしている。しかし銀行業界の競争構造上、その恩恵は利益率ではなく顧客サービスの向上に吸収される。投資家にとっては「AI=利益率改善」という期待が裏切られる構図であり、一方で30〜40%の雇用が削減された部門の従業員にとって、その区別は意味を持たない。
詳細はDimon says AI already eliminated 30 to 40 percent of jobs in some JPMorgan divisionsを参照していただきたい。




