7月24日、WccfTechのHassan Mujtabaが「AMD Unleashes Instinct MI455X GPU, A 320 Billion Transistor Behemoth That Is Designed to Tackle NVIDIA's Rubin With 50% More HBM4 Memory & Up to 40 PFLOPs of AI Compute」と題した記事を公開した。大規模LLMの推論・学習コストが膨張し続ける中、「より多くのメモリを積んだGPU1枚でどこまで処理を集約できるか」はインフラ設計の核心的な問いになっている。AMDが今回発表したInstinct MI455Xは、NVIDIAのRubinに対してメモリ容量で1.5倍という明確な優位を打ち出してきた。その数字が実運用でどのような意味を持つのかを、詳細スペックとともに見ていく。
3200億トランジスタ、432GB HBM4——MI455Xの核心スペック
AMDが発表したInstinct MI455Xは、最新のCDNA 5アーキテクチャを採用し、3200億トランジスタ(320 billion)を搭載するAIアクセラレーターだ。NVIDIAのRubinチップ(3360億トランジスタ)には160億トランジスタ届かないが、AI推論・学習性能の主要指標では拮抗する数値を打ち出している。
コンピュート性能はFP4で40 PFLOPs、FP8で20 PFLOPs。これは前世代のMI350シリーズ(FP4: 20 PFLOPs、FP8: 5 PFLOPs)の2倍に相当する。NVIDIAのRubinはFP4で50 PFLOPs、FP8で17.5 PFLOPsであり、FP4では差があるものの、FP8ではMI455Xが上回る。
最大の差別化ポイントはメモリだ。MI455XはHBM4を432GB搭載する。前世代MI350シリーズの288GB HBM3eから50%増であり、NVIDIAのRubin(288GB HBM4)を大きく上回る容量を持つ。メモリ帯域幅は23.3 TB/s(公称19.6 TB/sから更新)で、MI350の8 TB/sの約3倍。大規模モデルのKVキャッシュやアクティベーションをより多くオンチップに保持できるため、長コンテキスト推論や大規模トレーニングで効いてくる数値だ。
AMDは対Rubin比較を以下のように整理している。
- メモリ容量: 1.5倍(競合比)
- メモリ帯域幅: 同等
- FP4/FP8演算性能: 同等
- スケールアップ帯域: 同等
- スケールアウト帯域: 1.5倍
「同等」と「1.5倍」が混在するが、メモリ容量とスケールアウト帯域でNVIDIAを上回ることをAMDは前面に押し出している。
MI400シリーズの製品構成
Instinct MI400シリーズには、用途の異なる3製品が揃う。
MI455XはスケールAIトレーニング・推論向けのフラッグシップで、AMDの「Heliosラックスケールソリューション」を駆動する。MI450Xも同じくスケールAI向けで、コスト最適化を意識した6-HBM構成のバリアントが存在する(MI455Xが8スタック構成を採るのに対し、HBMスタック数を削減することで価格帯を下げたモデルと位置づけられる)。
MI430XはHPC(高性能計算)とSovereign AI(国家機関・研究機関向けAI基盤)向けに設計される。最大の特徴はFP64で288 TFLOPsというハードウェアベースの倍精度浮動小数点性能で、科学計算領域においてNVIDIAのRubinを超えると主張している。メモリはMI455Xと同じHBM4を搭載する。
世代比較:ロードマップの加速
以下の世代比較表(元記事より)は、AMDのアクセラレーターがいかに急速に進化しているかを示している。
| 項目 | MI300X | MI350X | MI455X (MI400) | MI500(予定) |
|---|---|---|---|---|
| アーキテクチャ | CDNA 3 | CDNA 4 | CDNA 5 | CDNA 6 |
| プロセスノード | 5nm+6nm | 3nm | 2nm+3nm | 2nm |
| FP8性能 | 2.6 PFLOPs | 5 PFLOPs | 20 PFLOPs | TBD |
| FP4性能 | N/A | 20 PFLOPs | 40 PFLOPs | TBD |
| HBM容量 | 192 GB | 288 GB | 432 GB | HBM4E |
| メモリ帯域 | 5.3 TB/s | 8 TB/s | 23.3 TB/s | TBD |
MI500シリーズは2027年投入予定で、CDNA 6アーキテクチャと2nmプロセス、HBM4Eを採用する見通しだ。AMDはNVIDIAと同様の年次更新サイクルへの移行を明言しており、標準版と「Ultra」版に相当する2ラインアップ構成を示唆している。
ソフトウェアとセキュリティ
MI400シリーズはAMDの**ROCm**ソフトウェアスタックで動作する。オープンな実装を志向し、ベンダーロックインを避けられる点をAMDは強調する。ただしROCmのエコシステム成熟度については、CUDAとの差が依然として課題として指摘されることが多い。
セキュリティ面では、セキュアブート、GPU間の暗号化リンク、ハードウェアベースの保護機構を組み込む。Sovereign AIのユースケースを意識した設計だ。
AIインフラの文脈で読む
大規模LLM(大規模言語モデル)の学習・推論コストが増大する中、HBM容量の優位性は実運用上の意味が大きい。より大きなモデルをより少ないGPU台数で扱えれば、ラック数・消費電力・ネットワーク構成の全てに波及する。AMDが「1.5x Memory Capacity」を対Rubin比の最大の訴求点として打ち出した背景はそこにある。




