7月28日、CNBCが「Nvidia and OpenAI in talks for up to $250 billion dollar backstop to fund AI infrastructure plans」と題した記事を公開した。NvidiaとOpenAIが最大2,500億ドル規模の債務保証を通じてAIデータセンター建設を資金調達しようとしている交渉の詳細が明らかになった。
最大2,500億ドルの「バックストップ」とは何か
今回の交渉の核心は、Nvidiaの信用力を担保にOpenAIが債務を調達するという仕組みだ。「バックストップ(backstop)」とは金融用語で、債務不履行などの万が一の際に損失を引き受ける保証の枠組みを指す。NvidiaがこのバックストップをOpenAIに対して最大2,500億ドルの規模で提供する方向で話し合いが進んでいる。
この資金は、OpenAIがオハイオ州パイク郡に計画する10ギガワット規模のデータセンターキャンパスの賃貸・建設費用に充てられる予定だ。パイク郡はオハイオ州南部に位置する農村地帯で、この用地はかつて米政府が運営していたウラン濃縮施設——かつてのポーツマス・ガス拡散プラント——として使われていた場所だ。現在はSoftBankとそのグループ会社SB Energyが米エネルギー省と共同で跡地の再開発を進めている。SoftBankは孫正義氏が率いる日本の大手投資持株会社であり、SB EnergyはそのSoftBankが出資する再生可能エネルギー・電力インフラ事業会社だ。大規模なデータセンター建設には安定した大電力が不可欠であり、エネルギーインフラの開発実績を持つSB Energyが関与している点は、このプロジェクトの規模と電力調達の難しさを示している。
10ギガワットという規模は、米国の約800万世帯の年間消費電力に相当すると、CNBCがエネルギー情報局(EIA)のデータを分析した結果として記事は伝えている。データセンターキャンパス全体のコストは5,000億ドルを超える可能性があるという。なお、バックストップはあくまでリースと建設債務をカバーするものであり、センター内に搭載するNvidiaチップの代金は別途交渉中だと、事情を知る関係者は述べている。
両社の関係とここに至る経緯
NvidiaとOpenAIの資本関係は複雑な経緯をたどっている。昨年9月、Nvidiaは最大1,000億ドルの投資をOpenAIに行うと発表していたが、その計画は実現しなかった。代わりにNvidiaは、今年3月にOpenAIが実施した過去最大の資金調達ラウンドに300億ドルを拠出した。
このラウンドにより、OpenAIの企業価値は民間投資家ベースで約1兆ドルに達している。ただし、中国発のオープンウェイト(モデルの重みを公開したオープンソース型)AIモデルの台頭——DeepSeekやQwenなどに代表される——が価格競争力を脅かしており、長期的なビジネスモデルには不確実性が残る。
Nvidia CEOのジェンセン・ファンは今年3月、今回の投資が「OpenAIのIPO前に行う最後の投資になるかもしれない」と発言している。OpenAIは6月にIPO(新規株式公開)を米SEC(証券取引委員会)に秘密裏に申請済みだが、上場の具体的な時期は明らかにしていない。
AI投資競争における今回の交渉の意義
OpenAIは2022年のChatGPTリリース以降、急増するモデル・サービスの需要に応えるべく計算資源の確保を急いでいる。競合するAnthropic、Google、Amazon、Metaも、それぞれ自社のAIインフラに向けて数千億ドル規模の設備投資を進めており、今回の交渉はその競争を象徴するものだ。
特筆すべきは、今回の枠組みが単純な株式投資や融資ではなく、Nvidiaの財務信用そのものをOpenAIのインフラ調達に活用するという構造にある点だ。NvidiaはAI半導体市場で圧倒的なシェアを持ち、その財務体力が金融的なレバレッジとして機能するという、AI時代特有の資本活用モデルといえる。OpenAI単独では困難な超大型インフラ調達を、チップ供給者であるNvidiaがバックストップとして支えることで、両社の利害が一致した構造だ。今後、同様の「チップベンダーによるインフラ保証」という形態が業界標準として広がる可能性もある。
※編集部の考察:上記の業界標準化の可能性については元記事に明示的な記述はなく、編集部による補足的見解である。
今回の交渉はまだ進行中であり、内容は変更される可能性があるとCNBCは伝えている。
詳細はNvidia and OpenAI in talks for up to $250 billion dollar backstop to fund AI infrastructure plansを参照していただきたい。




