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Deep Dive

AnthropicのエンジニアはAIで「1年かかるリライト」を11日で終わらせた — 変わったこと・変わらなかったことの現場報告

7月29日、The Pragmatic Engineerが「How building software is changing at Anthropic」と題した記事を公開した。筆者のGergely Oroszは、AnthropicのサンフランシスコHQを実際に訪問し、4人のエンジニアにヒアリングを行った。単なるプレスリリースではなく、現場の声から「AIで開発がどう変わるか」を探った内容だ。

7月29日、The Pragmatic Engineerが「How building software is changing at Anthropic」と題した記事を公開した。筆者のGergely Oroszは、AnthropicのサンフランシスコHQを実際に訪問し、4人のエンジニアにヒアリングを行った。単なるプレスリリースではなく、現場の声から「AIで開発がどう変わるか」を探った内容だ。


最大のインパクト:500K行のZigコードを11日でRustに書き換え

この記事で最も衝撃的なエピソードが、Bunの作者であるJarred Sumnerによるリライトだ。

BunはJavaScriptランタイムで、月間2,200万ダウンロードを誇り、Claude Codeも依存している。もともとZig(パフォーマンス重視だがメモリ安全でない言語)で書かれていたが、メモリ問題が繰り返し発生していた。

Jarredはこう述べている:

「歴史的に、リライトはひどいアイデアだ。コメントを除くと、BunのZigコードは535,496行ある。別言語へのリライトは、小さなチームでも丸1年かかる。その間、バグ修正もセキュリティ修正も機能開発も止まる。」

ところが現実には、AIコーディングツール「Fable」(Anthropicが内部開発したエージェント型コーディングツール。元記事ではGitHubリポジトリとしてanthropics/fableが参照されているが、一般公開の状況については元記事を直接確認されたい)を使い、**$165K分のトークンを消費することで、Jarred一人が11日でRustへの機械的な移植を完了**させた。$165KはAnthropicのAPIをコスト換算した目安であり、執筆時点のレートで約2,400万円相当にあたる。従来なら小チームで1年かかる作業だ。

ポイントは「機械的な移植」という点で、BunのテストスイートはTypeScriptで書かれているため、言語に依存せず既存のテストをそのまま流用できた。これがAI支援リライトを現実的にした要因の一つだ。


6ヶ月かかった複雑なインフラプロジェクト:Claude Managed Agents

一方で、「AIで何でも爆速」という話だけではないことも示されている。

Claude PlatformチームのEngineering HeadであるKatelyn Lesseが語ったプロジェクト「Claude Managed Agents」は、アイデアから2025年4月のローンチまで約6ヶ月を要した。エージェントがクラウド上やオンプレ環境で動くためのハーネスインフラを提供するもので、Anthropicの内部では最も複雑なプロジェクトの一つに位置づけられている。なお、元記事内でリンクされているドキュメントURLはパスが変更されている可能性があるため、最新の公式ドキュメントはAnthropicのデベロッパーポータルから確認されたい。

Katelynが強調したのは、計画フェーズの重要性は変わっていないという点だ:

「Managed Agentsに関しては、まず何をするかを把握することから始める必要があった。私たちの計画プロセスは、AI以前の典型的なプロセスに近いものだった。PRD(製品要件文書)はGoogleドキュメントで作った。これはなくなっていない。」

プロジェクト途中でアーキテクチャの再設計も発生した。Claudeの「脳」(モデルとハーネス)と「手」(サンドボックスとツール)と「セッション」(イベントログ)を明確に分離するインターフェース設計に変更。クレデンシャル管理では、エージェントやサンドボックスには認証情報を直接見せず、プロキシ経由でのみ注入する設計を採用している。

Katelynは「AIがなければこのプロジェクトは2年かかっていた」とも語っており、6ヶ月という数字は遅いのではなく、AIによって短縮された結果だという見方だ。


変わったこと、変わらないこと

Anthropicの現場から浮かび上がるのは以下の変化だ:

変わったこと

  • プロトタイピングの流動性が高まり、チーム間の調整がドキュメント主導からスタブサービスを立ててその場でインターフェースを詰める形に
  • コードレビューとテストをAIが担う割合が増加
  • デザインが「事前に確定させるもの」から「継続的に進化するもの」へ
  • 1プロジェクトあたり最大2エンジニアという体制
  • Claude Platformのコア部分でPythonからRustへの移行が進行中(シングルスレッドの限界から。なお、この移行はBunとは別のコンポーネントに関する話として元記事では位置づけられている)

変わっていないこと

  • ツーピザチーム(Amazonが提唱した「ピザ2枚で足りる人数=少人数」を理想とするチーム編成の原則)の考え方
  • 複雑なプロジェクトではPRDは依然有効
  • コンテキストスイッチのコストは課題のまま
  • コーディングとテストの時間比率はそれほど変わっていない
  • 計画フェーズの重要性

「AIに仕事を奪われる」恐怖は薄まる

記事の最後で興味深い観察が紹介されている。AIをより深く使いこなしているエンジニアほど、仕事がなくなる恐怖を感じていないという点だ。Anthropicのエンジニアたちは、AIツールに最も近い環境にいるにもかかわらず、むしろ楽観的な見方をしている。

また、「優秀なエンジニア」の定義として今後重視されるのは、自分が扱うレイヤーの一つ下まで深く理解する能力と、AIが生成したコードを横断的にコーディネートする能力だという見解も示されている。


詳細はHow building software is changing at Anthropicを参照していただきたい。