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Deep Dive

UberがAIコストに月1,500ドルの上限設定、7万CPUコア削減も実現した「ハードウェアを増やさずにスケールする」戦略とは

7月28日、InfoQが「Uber's Zero Growth Stack: Scaling Services, While Optimising Infrastructure and AI Cost」と題した記事を公開した。Uberが打ち出した「Zero Growth Stack」は、ビジネスが成長してもハードウェアを増やさないという逆張りの前提から出発している。AIコストが2年で6倍に膨らむ中、Uberはいかにして効率化と普及を両立させているのか。

7月28日、InfoQが「Uber's Zero Growth Stack: Scaling Services, While Optimising Infrastructure and AI Cost」と題した記事を公開した。Uberが打ち出した「Zero Growth Stack」は、ビジネスが成長してもハードウェアを増やさないという逆張りの前提から出発している。AIコストが2年で6倍に膨らむ中、Uberはいかにして効率化と普及を両立させているのか。


ビジネス成長とインフラ増強を切り離す

Uberの「Zero Growth Stack」は、ビジネス需要に比例してハードウェアを増やし続けるという従来の発想を捨て、既存リソースの効率化によってスケールを実現するアプローチだ。その中核となる施策が、Goランタイムのガベージコレクション(GC)チューニングの自動化である。

Uberのサービス群はメモリフットプリントが100MBから1GBまで幅広く、静的なGCチューニングでは対応しきれなかった。そこで開発されたのが、OSSライブラリ**GOGCTunner**だ。GitHubリポジトリ名はgogctunner(小文字)であり、Uber公式のOSSとして公開されている。このライブラリはcgroupのメモリ制限とライブオブジェクトの使用量をリアルタイムで監視し、GOGC値(ヒープ成長に対するGCサイクルの頻度を制御するパラメータ)を動的に調整する。

制御ロジックの目標は明確で、ヒープサイズをライブオブジェクトの1.25倍に維持しつつ、メモリ使用率を70%以下に抑えることでOOM(メモリ不足によるプロセス終了)を回避する。この自動化により、30のミッションクリティカルなサービスで合計7万CPUコアを回収することに成功した。


AIコストが6倍に膨らんだ現実

インフラ効率化と並行して、Uberは生成AIを開発フローに深く組み込んでいる。その構成は以下の4層からなる。

  • Platform Layer: Michelangelo AIをモデルゲートウェイとして利用
  • Context Layer: MCP Gatewayで社内ソースコードをコンテキストとして注入
  • Specialised Layer: MinionやShepherdといったバックグラウンドエージェントを展開
  • Review Layer: uReviewやCode Inboxによるコードレビュー支援

この4層構成はそれぞれが独立して機能するが、コスト観点では相互に増幅関係にある。Context LayerがソースコードをAIへ大量に注入するほどトークン消費は増え、Specialised Layerのバックグラウンドエージェントが並列稼働することで課金単位が積み上がる。Review LayerのAIコードレビューも常時稼働することで、アイドル時間にも課金が発生しやすい構造だ。つまり各層の普及が進むほど、トークン課金モデルの下でコストが指数的に膨らみやすい設計になっている。

普及度は高く、エンジニアの92%が月次でAIエージェントを活用しており、新規コードの31%はAIが生成したものだ。テスト自動生成ツールのAutocoverは月5,000件超のユニットテストを生み出している。

しかし、急速な普及はコスト面で大きな摩擦を生んだ。AIコストは2024年以降で6倍に増加し、2026年初頭には開発者一人当たりの月間コストが2,000ドルに達するケースも出た。トークン課金モデルが予算の急速な消費を招いたのが主因だ。


コスト統制と「効果の定量化」へのシフト

この状況を受け、Uberは無制限の利用から開発者一人当たり月1,500ドルの上限設定に切り替えた。単なるキャップの導入にとどまらず、AIが生成したコードの品質を体系的に評価する取り組みも始まっている。

指標の軸として提案されているのが「net code quality ratio」だ。これはAI生成コードと人間が書いたコードを比較し、リリース後のホットフィックス発生頻度を測るものだ。さらに「compute efficiency per feature」という指標で、AIによる冗長なテスト生成も含めたオーバーヘッドが、長期的なインフラ持続性の目標と整合しているかを判断できるようにしている。

集計コストの追跡から粒度の細かい指標へ移行することで、AIの自動化がもたらすスループットとインフラオーバーヘッドのトレードオフを定量的に把握しようとしている点が、この取り組みの本質だ。


Uberのアプローチが示すのは、AIツールの導入フェーズが「とにかく使う」から「費用対効果を厳密に問う」段階に入ったという現実だ。GOGCTunnerはUber公式OSSとして公開されており、Goを使う組織にとって参照価値は高い。

詳細はUber's Zero Growth Stack: Scaling Services, While Optimising Infrastructure and AI Costを参照していただきたい。