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Google DeepMindのロボットAI「Gemini Robotics 2」— 腕・脚・指先を1モデルで統合制御し、数時間で別のロボット本体に乗り換えられる

7月31日、Google DeepMindが「Gemini Robotics 2 brings whole body intelligence to robots」と題した記事を公開した。最大のポイントは「数時間分のデータさえあれば、全く別のロボット本体に即座に乗り換えられる」という高速適応能力だ。ロボットAIの世界では、Boston Dynamicsのように特定のハードウェアに最適化されたソフトウェアスタックを構築するアプローチや、Figure・1X・Agilebots各社がそれぞれ独自モデルを整備するアプローチが主流だった。Gemini Robotics 2はこれに対し、モデルをハードウェアから切り離す方向性を明確に打ち出している点で、業界のトレンドと一線を画している。「全身制御」はなぜ難しいのかロボティクスの文脈で「全身制御(whole-body control)」が難題とされる理由は、腕・脚・胴体を協調させながら、把持と移動という性質の異なる動作を同時に最適化する必要があるためだ。従来のアプローチでは移動系と操作系を別々のシステムで制御することが一般的であり、Boston Dy...

7月31日、Google DeepMindが「Gemini Robotics 2 brings whole body intelligence to robots」と題した記事を公開した。最大のポイントは「数時間分のデータさえあれば、全く別のロボット本体に即座に乗り換えられる」という高速適応能力だ。ロボットAIの世界では、Boston Dynamicsのように特定のハードウェアに最適化されたソフトウェアスタックを構築するアプローチや、Figure・1X・Agilebots各社がそれぞれ独自モデルを整備するアプローチが主流だった。Gemini Robotics 2はこれに対し、モデルをハードウェアから切り離す方向性を明確に打ち出している点で、業界のトレンドと一線を画している。

「全身制御」はなぜ難しいのか

ロボティクスの文脈で「全身制御(whole-body control)」が難題とされる理由は、腕・脚・胴体を協調させながら、把持と移動という性質の異なる動作を同時に最適化する必要があるためだ。従来のアプローチでは移動系と操作系を別々のシステムで制御することが一般的であり、Boston DynamicsのSpotのように移動と操作が分離した設計が広く採用されてきた。FigureやPhysical Intelligenceのような新興プレイヤーも、Vision-Language-Action(VLA)モデルを使って統合制御に挑んでいるが、ヒューマノイド全身をカバーしつつ複数ロボットへの汎用的な適応まで示したシステムはまだ限られている。Gemini Robotics 2はVLAモデル1つでこれを統合的に扱う方向性を示している。

3モデル構成で「全身」を制御する

Gemini Robotics 2はこの課題に正面から取り組むため、3つのモデルで構成されている。

Gemini Robotics 2(VLAモデル)は、視覚と言語の入力をモーター制御コマンドに変換し、ロボットが実際に行動を起こせるようにする中核モデルだ。足先から指先まで、ヒューマノイド全体を単一モデルで制御できる点が最大の特徴で、両手および両グリッパーでの精密なマニピュレーション(物体操作)にも対応する。具体的には、ヒューマノイドが歩く・しゃがむ・手を伸ばす・物をつかむといった動作を組み合わせ、散らかった部屋を片付けるような複合タスクを実行できる。

Gemini Robotics ER 2(Embodied Reasoning モデル)は、VLM(Vision Language Model)として高水準の認知・推論機能を担うモデルだ。人間との自然言語対話や物理世界の状況理解を行い、その結果を「どのロボットが何をすべきか」という行動計画に落とし込む役割を持つ。単純な一手順の命令実行にとどまらず、数分にわたる複数ステップのタスクを計画・実行できる。今回の新機能として、複数のロボットがチームとして役割を分担しながら協調して作業する能力が加わった。ER 2はいわばロボットチームの「司令塔」として機能し、VLAモデルが実際の身体動作を担当するという分業構造になっている。

Gemini Robotics On-Device 2(オンデバイスVLAモデル)は、クラウドへの通信なしにロボットデバイス上でローカル実行できるよう最適化されたモデルだ。最大の進化は「数時間分のデモデータを与えるだけで、全く新しいロボット本体への高速適応が可能」になった点で、これは本記事タイトルの「数時間で別ロボットに乗り換え」の核心をなす機能だ。従来、あるロボット本体で学習したスキルを別のハードウェアに移植するには、大量の再学習データと長期間の調整が必要だった。この課題に対する直接的な解答として位置づけられる。

先代モデルからの進化と今後の文脈

Google DeepMindは今年3月、初代Gemini RoboticsでGeminiのマルチモーダル理解をロボットの実世界行動に結びつけることを示した。Gemini Robotics 2はその後継として、制御対象をヒューマノイドの全身に拡張し、複数ロボットの協調とオンデバイス高速適応という2つの実用的な軸を加えた形だ。

ロボットAI全体の潮流として、Physical Intelligenceのπ0やOpenAIのロボティクスへの再参入など、大規模言語モデル由来の汎用推論能力をロボット制御に持ち込む動きが加速している。その中でGoogleは、Geminiというマルチモーダル基盤モデルをそのままロボットの「脳」として転用しつつ、オンデバイス推論によるハードウェア非依存の展開可能性を強みとする戦略を鮮明にしている。

※編集部の考察:ハードウェアを選ばない汎用ロボットAIが実用化されれば、ロボットメーカーとAIソフトウェア会社の役割分担が大きく再編される可能性がある。Gemini Robotics 2の「数時間で乗り換え」という特性は、その布石として注目に値する。

詳細はGemini Robotics 2 brings whole body intelligence to robotsを参照していただきたい。