7月31日、The Next Webが「Amazon winds down most of its Nova AI models」と題した記事を公開した。AmazonがフラッグシップAIモデル群「Nova」の大半を廃止し、単一の大型フロンティアモデル開発に経営資源を集中させる戦略転換について報じている。
NovaラインのほとんどがKTLOモードへ
Amazonは、自社開発のNovaモデル群のうち多くを段階的に廃止しはじめた。対象は高性能モデルのPremier・Omni、動画生成のReel、画像生成のCanvasなど。社内では「KTLO(Keep The Lights On=最低限の保守のみ)」モードと呼ばれており、既存顧客向けのサポートは継続されるが、新規開発は行われない。
この動きは突然ではない。Amazonは数ヶ月前にすでにAGI Labを閉鎖しており、フロンティアモデル競争からの撤退傾向が続いていた。ただ当時は「研究所閉鎖とレイオフ」という形でしか伝わっておらず、具体的にどの製品が犠牲になるかは不明だった。今回の報道で、その全体像が初めて明確になった。
廃止されない製品も存在する。Nova 2 Lite、Nova 2 Sonic、カスタマイズサービスのNova Forge、エージェントツールのNova Act は引き続き維持される。
一本化した大型賭け:Frontier Model Research
残存する開発リソースは、Frontier Model Research(FMR) と呼ばれる新組織に集約される。率いるのはPieter Abbeelだ。AbbeelはロボティクスAIスタートアップCovariantの共同創業者であり、Amazonが2024年にCovariantを買収したことに伴い、Amazonへ移籍した経緯を持つ。
Reutersの報道によれば、新たなフラッグシップモデルは今秋のre:Inventカンファレンスでお披露目される見込みで、Novaの名称が引き継がれる可能性もある。
旧AI責任者だったRohit Prasadの体制下では、テキスト・画像・動画と広くモデルを展開していた。2025年末にPrasadが退任し、12月にPeter DeSantisが統合グループを引き継いでからは、限られたコンピュート資源を少数のフロンティア開発に絞り込む方針へと転換している。AGI Lab創設者のDavid Luanも今年2月に離脱している。
Amazonの本当の強みはインフラにある
Novaは結局、OpenAI・Anthropic・GoogleのモデルのようなブランドとしてのAIモデルにはなれなかった。運用コストが見合わないという問題も指摘されており、The Next Webは以前、AmazonのAIコスト超過問題を報じている。
一方でAmazonが圧倒的な強みを持つのはインフラだ。AWSはOpenAIとの大規模なコンピュートコミットメント契約を結んでおり、Anthropicへの投資も含め、業界全体のクラウド基盤として機能している。Jeff Bezosが「第4の柱」と呼ぶカスタムチップTrainiumは数十億ドル規模のビジネスに育っている。
こうした構図は、Amazonが自前のAIモデルを正面から競争させるより、他社の有力モデルを乗せるプラットフォームとして収益を得る方向へ軸足を移していることを示唆する。Amazonの広報担当者は「AIモデルは引き続き最重要課題のひとつ」と後退を否定しているが、モデル開発への投資を絞りながらインフラ収益を拡大するという構造的な方向性は、今回の再編から読み取れる。
Claude、Gemini、GPTではなくAmazon自身のモデルを開発者が積極的に選ぶようになるか——その問いへの答えを、re:Inventが試す場となる。FMR体制のもとで新フラッグシップがどう評価されるかは、Amazonが「プラットフォーム企業」にとどまるのか、それとも「モデル企業」としても存在感を示せるのかを占う試金石になる。
詳細はAmazon winds down most of its Nova AI modelsを参照していただきたい。




