7月30日、Search Engine Journalが「Head Of Anthropic's Claude Code Says Prompt Engineering Not That Important」と題した記事を公開した。AnthropicのClaude Code責任者がプロンプトエンジニアリングの重要性低下を主張し、AIコーディングの正しい使い方を語ったインタビューの内容を詳しく紹介している。
「プロンプトエンジニアリングより、難しいタスクを渡せ」
Y CombinatorのDiana HuがAnthropicでClaude Codeを作ったBoris Chernyにインタビューした。Chernyが繰り返し強調したのは一点だ。プロンプトエンジニアリングの時代は終わりつつある、ということだ。
Chernyはインタビューでこう述べている。
「1年前、最も人気のある求人の一つはプロンプトエンジニアだった。その後、コンテキストエンジニアという言葉が出てきた。こういった波は来ては去っていくと思う。今求められるスキルは、プロンプトエンジニアリングよりも、少し難しすぎると思えるようなタスクをどうClaudeに与えるか、そしてClaudeが途中で自分の作業を検証できるようにする方法を考えることだ。この検証が、おそらく多くの人が最もできていない、最も重要なことだ。」
ここで言う「検証(verification)」とは、AIが作業の途中経過や出力を自分でチェックできる仕組みを与えることを指す。人間のエンジニアがテストコードを書いたり、ビルドを走らせたりしながら作業を進めるのと同じ発想だ。
ElectronアプリをSwiftに書き換えた実例
Chernyは具体例として、Claude Tag(Claude Codeの実験的機能として試された、Slackチャンネル上で動作するClaude)にMacの仮想マシンへのアクセス権を与え、以下のタスクを与えた実験を紹介した。
Claude DesktopアプリをオープンソースのElectronフレームワークからAppleのネイティブ言語Swiftに書き換えること。そのプロンプトは複雑な指示や制約を詰め込んだものではなく、シンプルなものだった。
「ElectronアプリをSwiftで書き直してほしい。Mac仮想マシンでElectronアプリを起動してスクリーンショットを撮り、Swiftバージョンとピクセル単位で比較してほしい。終わるまで止まるな。」
Chernyはこう続けた。
「
/goalも/loopも必要ない。これらは助けになるが、本当に必要なのはモデルにタスクを渡し、作業の出力を検証する手段を与えることだけだ。そうすればモデルは勝手に動く。しかも今回、ClaudeはSlackチャンネルを作って、数分おきに進捗のスクリーンショットを投稿し始めた。」
また、内部で話題になった別の実験として、あるエンジニアがClaudeに画像処理ライブラリOpenCVへのアクセスを与え、「絵を描いてほしい」と指示したところ、実際に描いてしまったというエピソードも挙げた。誰も想定していなかった能力を自律的に発揮した事例として、モデルの潜在能力の広さを示している。
「LinkedInインフルエンサーのフォローを外せ」
Diana Huが「Claude使いのトップ1%になるにはどうすればいいか」と聞くと、Chernyは率直に答えた。
「LinkedInのインフルエンサーを聞くな。Twitterも読むな。みんな『一発で効く裏技』を探しているが、そんなものは存在しない。やるべきことは、難しいタスクを与える、作業の検証手段を与える、どこで詰まるかを観察する、それに応じてプロンプトを改善するか、不足しているコンテキストをMCP(Model Context Protocol)で補う。それだけだ。」
「過剰なプロンプト設計」が失敗パターン
Chernyが特に問題視しているのが、長年コードを書いてきたエンジニアが陥りやすい「過剰な仕様化」だ。
「昔のシステム構築では、細かく仕様を定義することが正しいやり方だった。だからキャリアの長いエンジニアほど、Claudeに対しても同じことをしようとする。これは非常によくある失敗パターンだ。モデルはそういう動き方をしない。今のClaudeは同僚に接するくらいの感覚で扱っていい水準にある。」
現在のClaude Codeに対しては、細かい制約を詰め込むより、目的とゴール確認の手段だけを与えてあとは任せるほうが結果が出る、というのがChernyの主張だ。
まとめ
Chernyの発言を整理するとシンプルになる。
- プロンプトの精緻さより、タスクの難度と検証手段の設計が重要
- 「特別なプロンプトテクニック」に頼るより経験的に試行錯誤するほうが上達が早い
- ベテランエンジニアほど「過剰な仕様化」に陥りやすい点に注意が必要
- Claudeを「同僚」として扱う感覚が今の実力水準に合っている
インタビュー全体を通じて一貫しているのは、「モデルへの指示の巧みさ」ではなく「モデルに何をさせるか・どう評価するか」の設計こそが本質だというメッセージだ。プロンプト最適化に時間をかけるより、難しいタスクを実際に渡して観察するサイクルを回すことが、Claude Codeを使いこなす近道だとChernyは繰り返し強調している。
詳細はHead Of Anthropic's Claude Code Says Prompt Engineering Not That Importantを参照していただきたい。




