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ビジネス・マーケット

GoogleがAnthropicのAIチップ数百億ドル分のリスクをオフバランス化 — バランスシート記載はわずか8億ドル、残りはSPVと機関投資家に分散

8月5日、The Decoderが「Google moves billions in Anthropic chip risk off its balance sheet」と題した記事を公開した。Googleが全リースデフォルト時に負う潜在負債は最大440億ドルに上るが、バランスシートに計上されているのはわずか8億1500万ドル——この数字の非対称性が、今回明らかになったファイナンス構造の核心だ。Broadcom・Apollo・Blackstoneなど複数の大手金融・インフラプレイヤーと組んだ大規模なスキームによって、残りの数百億ドル規模のリスクはオフバランスに置かれている。

8月5日、The Decoderが「Google moves billions in Anthropic chip risk off its balance sheet」と題した記事を公開した。Googleが全リースデフォルト時に負う潜在負債は最大440億ドルに上るが、バランスシートに計上されているのはわずか8億1500万ドル——この数字の非対称性が、今回明らかになったファイナンス構造の核心だ。Broadcom・Apollo・Blackstoneなど複数の大手金融・インフラプレイヤーと組んだ大規模なスキームによって、残りの数百億ドル規模のリスクはオフバランスに置かれている。


総額2000億ドルが依存する複雑な構造

FT(フィナンシャル・タイムズ)が「史上最大級のインフラ・ファイナンスの一つ」と評するこのスキームの背景は、単純だ。AnthropicはAIチップを大量に必要としているが、信用格付けがないため銀行から十分な融資を受けられない。一方でGoogleも過去最高水準の設備投資を続けており、これ以上バランスシートを膨らませたくない。Broadcomも同様だ。

誰もチップを自分の帳簿に載せたくない——この課題を解決するために組成されたのが、モルガン・スタンレーが設計した特別目的会社(SPV: Special Purpose Vehicle)を中心とした枠組みだ。

※ SPVとは、特定の資産や取引を切り出すために設立される法人で、オリジネーター(ここではGoogle)のバランスシートからリスクを切り離す目的で広く使われる。FASB ASC 842(リース会計基準)などの規制強化を受け、現代のSPVスキームはエンロン事件(2001年)以降の会計不正への反省を踏まえた形式的要件を満たしつつも、オフバランス効果を最大化する設計が一般化している。

具体的な仕組みはこうだ。

  1. 「Compute SPV」と呼ばれるSPVがチップを購入し、Anthropicにリースする
  2. 資金はApollo・Blackstoneなどの機関投資家が拠出する
  3. BroadcomはAnthropicのリース支払いが止まった場合の保証(バックストップ)として約300億ドルをカバーする

この構造においてBroadcomのバックストップは、SPVへの出資者である機関投資家にとっての信用補完として機能する。Googleはリースの最終保証者としてオフバランス上の潜在負債(最大440億ドル)を抱えるが、Broadcomの300億ドルのバックストップがその一部をカバーする形となっており、Google単体の実質的なエクスポージャーはその差分となる。

2025年6月に最初の取引が成立。SPVが約1ギガワット分のTPUハードウェアを350億ドルで購入した(FTの試算では約100万TPU相当)。

その後、このスキームはテンプレートとして拡大。直近の最大案件は2025年4月合意の3.5ギガワット分のTPU売却で、Broadcomの財務ファイリングには2028年までの購入コミットメントとして1280億ドルが計上されており、そのほぼ全額がGoogle TPUに紐づいているとFT筋は報じている。


チップだけでは足りない——電力確保のためにクリプトマイナーを活用

チップのファイナンスが解決しても、次の問題は電力と土地だ。大量のTPUを稼働させるには膨大な電力が必要で、Googleはすでに大量の電力アクセスを確保しているクリプトマイニング企業に目を向けている。

最初に契約したのはTeraWulfだ。ニューヨーク州に360メガワットのデータセンターを建設し、GoogleがTeraWulfに対してリース支払いの保証を提供。モルガン・スタンレーはその保証を裏付けとして32億ドルの建設債券としてパッケージ化し、機関投資家に販売した。その対価としてGoogleはTeraWulfの株式持分を取得している。すなわちGoogleは保証提供によってオフバランスのリスクを引き受けつつ、株式によるアップサイドも確保する構造となっている。

同じモデルはCipher DigitalHut 8など他のクリプトマイナーにも展開されており、FT筋によればGoogleは現在合計2.4ギガワット相当の10プロジェクトを支援済みだ。


バランスシートに載っているのはわずか8億1500万ドル

この構造の核心的な問題はリスクの非対称性だ。

  • 全リースがデフォルトした場合のGoogle潜在負債:最大440億ドル
  • Googleがバランスシートに記載している負債:8億1500万ドル

残りの数百億ドル規模のリスクはオフバランスに置かれている。

また、GoogleはAnthropicに対して投資家でありチップ供給者でもあるという二重の立場にある。さらに、Anthropicはこの構造と別に、Googleクラウドに対して5年間で約2000億ドルを支出するという契約を結んでおり(5ギガワットのサーバー容量と引き換え)、これはGoogleのコミット済み将来クラウド収益の40%超を占める。

Jefferiesのアナリストは、Google支援を受けたデータセンターの平均借入金利が**7.1%であるのに対し、Nvidiaチップを使うネオクラウド事業者は9.3%**と指摘し、この差を「Nvidiaエコシステムにとっての構造的な資本コスト上の不利」と表現している。


全体の前提:Anthropicの収益が20〜30倍に成長すること

この構造全体は、AnthropicとOpenAIがそれぞれ2029年までに収益を20〜30倍に拡大するという前提の上に成り立っている。両社を合わせると、Amazon・Microsoft・Google・Oracleのクラウドバックログ合計約2兆ドルの半分近くを占める。

成長が鈍化あるいは停止すれば、2000億ドル規模の契約に依存するこの仕組み全体が崩壊するリスクがある。

詳細はGoogle moves billions in Anthropic chip risk off its balance sheetを参照していただきたい。