8月12日、TechSpotが「Workers at OpenAI, Anthropic, and Meta say AI is making their jobs harder, not easier」と題した記事を公開した。同記事はBBCの取材報道をもとにまとめたもので、OpenAI・Anthropic・Meta・GoogleなどAI企業の現役・元社員が「AIで仕事が楽になるどころか、むしろ過酷になった」と証言している実態を詳しく紹介している。
「週4日勤務」を推奨しながら、自社では週90時間超
AIベンダーの公式メッセージと現場の実態の乖離が際立っている。OpenAIは今年初め、「AIが仕事の多くを加速させる」として企業に週4日勤務の実験を推奨した。Googleも数年前、AIによって週4日勤務が実現可能になると予測していた。
しかしBBCの取材に応じた当事者たちの証言は、まったく別の現実を示している。
OpenAIの元テクニカル社員は、在籍中は週70時間以上働くことが通常だったと語る。同氏はその後別のAIスタートアップに移り、「スプリント(集中リリース期間)以外は週50〜60時間程度」になったという。それでも楽とは言い難い水準だ。
「土曜か日曜に出てきて、遅れを取り戻すか、何かが壊れていないか確認するんです」
OpenAIとAnthropicでは、大規模な開発フェーズが数週間続き、週90時間超の労働が発生することもあると複数の社員が証言している。同氏が在籍中、週4日勤務は試みられなかった。「クライシスミーティング」が常態化し、「超競争的な」人事評価によって突然解雇されるケースもあったという。OpenAIとAnthropicはBBCのコメント要請に回答していない。
「拒否したければ辞めるしかない」——Metaの強制異動
Metaでは、AIチームへの異動が事実上の強制として行われていたと元社員が明かす。このプロセスは社内で「ドラフト」と呼ばれていた。
「いきなり移される。断れない——断りたければ辞めるしかない」
異動先では、AIがソフトウェアエンジニアリングなどの「人間がやっていた仕事」を再現するチームに配属される。深夜作業、週末出勤、勤務外でも常時待機状態という環境が続いたという。
Mark ZuckerbergはAIによって「小規模チームがより多くの仕事をこなせる」と発言しているが、現場の社員はその分の仕事量が自分たちに上乗せされていると感じている。Metaのスポークスパーソンはコメントを断った。
AIモデル開発チームの外側でも疲弊は広がる
影響はモデル開発チームだけにとどまらない。元Google社員のAmin Shaliは、今年5月にGoogleを退職した理由として、社内エンジニアリングシステムの障害頻度の増加を挙げている。GoogleがGPUやメモリなどのリソースをAIプロジェクトに集中させた結果、他チームのシステムが不安定になり、夜通しの障害対応が常態化したという。
「Google退職後、睡眠と健康状態が改善した」とShaliは語る。大企業でのAIツールの過剰な活用は「エンジニアへの過度なプレッシャーを生む悪い文化を作り出す」と指摘する。
「20%の効率化」は休暇ではなく、新しいタスクになる
UCバークレーの研究が、この構造的問題を裏付けている。米国のあるテック企業の数百人の社員を8ヶ月間追跡した結果、AIを使う社員は作業ペースが上がり、より多くのタスクをこなし、より遅い時間まで働いていた。さらにAIが生成したアウトプットの確認作業も新たに加わった。
MITのイノベーション研究者Neil Thompsonはこう指摘する。
「20%の仕事が減れば週4日になると人々は思う。しかし新しい仕事が生まれるだけだ」
効率化の恩恵は、企業が新たな期待値と要求量の引き上げに転換することで吸収され、労働者の手元には残らない——というのが現場の実態だ。
AIが「働き方を楽にする」という約束と、それを作っている当事者たちの体験の間にある溝は、業界全体の構造的な問題として今後も議論の対象であり続ける。
詳細はWorkers at OpenAI, Anthropic, and Meta say AI is making their jobs harder, not easierを参照していただきたい。




