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Deep Dive

「マネー・ショート」の投資家が警告するAIブームの死角 — クラウド収益の35%がOpenAIとAnthropicの2社に集中するリスク

8月13日、CNBCが「'Big Short' investor Steve Eisman sees an Achilles heel in the AI boom」と題した記事を公開した。映画『マネー・ショート』でも知られる投資家スティーブ・アイズマンが、AIブームには「アキレス腱」があると警告している。その正体は、OpenAIとAnthropicという2社への異常な収益集中と、中国発オープンウェイトモデルによる価格競争リスクだ。

8月13日、CNBCが「'Big Short' investor Steve Eisman sees an Achilles heel in the AI boom」と題した記事を公開した。映画『マネー・ショート』でも知られる投資家スティーブ・アイズマンが、AIブームには「アキレス腱」があると警告している。その正体は、OpenAIとAnthropicという2社への異常な収益集中と、中国発オープンウェイトモデルによる価格競争リスクだ。


AIクラウド収益の最大35%が2社に集中

アイズマンの警告の核心は、数字にある。

彼によれば、OpenAIとAnthropicの2社だけで、Microsoft、Amazon、Google(Alphabet)、Oracleが得るAI関連収益の**約70%を占めており、さらにこれら大手のクラウド収益全体の25〜35%**にまで及ぶという。

「これらの巨大企業の未来は、ある意味でOpenAIとAnthropicが成功するかどうかへの賭けだ」とアイズマンはCNBCの番組「Fast Money」でこう述べた。

ハイパースケーラー(超大規模クラウド事業者)と呼ばれるMicrosoft・Amazon・Googleが、AIインフラへの巨額投資を続けていることはよく知られている。しかしその収益の源泉がこれほど少数の企業に集中しているとなると、リスク構造は根本的に変わる。各社のAI関連投資額は2024年以降に急拡大しており、Microsoftは2025年度だけで約800億ドルの設備投資を計画するなど、業界全体でインフラへのコミットメントは増す一方だ。それだけに、収益の源泉が2社に依存するという構造は、一種のシングルポイント・オブ・フェイラー(単一障害点)として機能しうる。


アキレス腱は中国のオープンウェイトモデル

アイズマンが「アキレス腱」と呼ぶのは、中国発のオープンウェイトAIモデルの台頭だ。

「OpenAIやAnthropicに何か悪いことが起きたとすると……中国のオープンウェイトモデルははるかに安価だ。もし本当に大きなシェアを奪い始めたら——実際そうなりつつあると聞いている——大規模な価格競争が起きる。そうなったら問題だ」とアイズマンは述べた。

※「オープンウェイトモデル」とは、モデルの重み(パラメータ)を公開しているAIモデルの総称で、「オープンソース」とは厳密に区別して用いられることが多い。

DeepSeekに代表される中国系オープンウェイトモデルは、2025年1月の「DeepSeekショック」を機に一気に注目を集めた。DeepSeek R1はOpenAIのo1と同等水準の性能を持ちながら、APIコストが大幅に低いと報告されており、エンタープライズ用途での採用が急速に広がりつつある。この価格破壊的な競争環境は、OpenAIやAnthropicのビジネスモデルに直接的な圧力をかける要因となっている。アイズマンの警告は、このDeepSeekショック以降の価格競争の実態を踏まえたものとして読む必要がある。


バリーも同調——「循環的な需要」への疑問と空売りポジション

同じく『マネー・ショート』に登場するマイケル・バリーは、アイズマンよりさらに悲観的な見方をとっている。

バリーはAI需要の相当部分が実際のエンドユーザーからではなく、「循環的な取り決め」によって作られた見かけ上の需要に過ぎないと主張している。具体的には、クラウドプロバイダーがAIスタートアップに資金を提供し、そのスタートアップが同じクラウドサービスにその資金を使うという循環構造が、実態よりも大きな需要を演出しているという見立てだ。

その姿勢は言葉だけでなく、ポートフォリオにも反映されている。バリーはNvidiaをはじめとするAIブームの受益企業に対する空売りポジションを取っており、元記事によれば半導体・クラウドインフラ関連の複数銘柄が対象に含まれているとされる。かつてサブプライム住宅ローン危機を的中させた手法と同様、バリーは今回もデリバティブを活用した構造的な弱点への賭けを実行に移している。


構造的なリスクとして読む

アイズマンの発言は、AIバブル論の文脈で語られがちだが、その本質はより具体的だ。「バブルかどうか」という問いではなく、特定の2社への収益集中という構造問題を指摘している点が、投資家・エンジニア双方にとって示唆深い。

OpenAIやAnthropicが競合に押されてシェアを失ったり、価格を大幅に引き下げざるを得なくなった場合、その影響はGPUメーカーや半導体セクター全体に波及する可能性がある。Nvidiaの2025年度決算に見られるように、データセンター部門の爆発的成長はAIモデルのトレーニング・推論需要に強く依存しており、その需要の質が問われ始めている局面と言える。

2社依存・価格競争・需要の循環性という三重の構造リスクを、複数の著名投資家が同時期に指摘しているという事実は、現在のAIブームを評価するうえで無視できない視点を提供している。

詳細は'Big Short' investor Steve Eisman sees an Achilles heel in the AI boomを参照していただきたい。