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ビジネス・マーケット

「ソフトウェアAIの次はロボット・自動運転」— 2026年上半期のPhysical AI投資が半年で過去3年分を超えた(Waymoの160億ドルが牽引)

8月18日、Crunchbaseが「VCs Pour Billions Into Physical AI As The Next Wave Of AI Investing Takes Shape」と題した記事を公開した。2026年上半期におけるPhysical AI分野へのベンチャー投資が急拡大し、過去の水準を大幅に超えた実態について詳しく紹介されている。

8月18日、Crunchbaseが「VCs Pour Billions Into Physical AI As The Next Wave Of AI Investing Takes Shape」と題した記事を公開した。2026年上半期におけるPhysical AI分野へのベンチャー投資が急拡大し、過去の水準を大幅に超えた実態について詳しく紹介されている。


2026年上半期、Physical AI投資が前期比4倍に

Crunchbaseのデータによると、2026年上半期のPhysical AIへのグローバルVC投資総額は474億ドル(521件)に達した。2025年下半期の120億ドル(470件)と比較するとほぼ4倍、2025年上半期の264億ドルと比べても約80%増という急伸だ。

さらに衝撃的な数字がある。2022年から2024年の3年間の合計が419億ドルであるのに対し、2026年上半期だけでそれを上回った。つまり半年で過去3年分以上の資金が流入したことになる。

ただし、この数字を額面どおりに受け取る際には注意が必要だ。後述するとおり、Waymoの160億ドルという単独ラウンドが上半期全体の約3分の1を占めており、1件の超大型調達が全体を大きく押し上げている構造になっている。Physical AI全体が均等に盛り上がっているというより、一部セクターへの集中投資が数字を引き上げているという側面がある点は留意したい。

なお、ここでいう「Physical AI」は、ロボティクス、自動運転車、航空宇宙、ドローン、産業自動化、センサーといった分野を指す。純粋なソフトウェアのAIとは異なり、現実世界に物理的に作用するシステムを対象とする概念だ。


投資額の3分の1をWaymo単独で占める

今回の急増を牽引した最大の要因はWaymoの160億ドルシリーズD(2月)だ。Alphabet、Sequoia Capital、DST Globalらが共同でリードしたこのラウンドは、評価額1,260億ドルという規模で実施された。1件で上半期全体の約3分の1を占める。

他の大型ラウンドも続いた。

  • Anduril Industries(防衛テック):5月に50億ドル調達、評価額610億ドル。1年未満で評価額が2倍に
  • Shield AI(自律型航空機):3月に20億ドルのシリーズG、評価額127億ドル
  • Saronic(自律型海上艦艇):3月に17.5億ドルのシリーズD、評価額92.5億ドル。シリーズCから評価額2倍超

Waymo以外に目を向けると、防衛テック寄りのスタートアップへの大型投資が目立つ構成だ。AndurilやShield AI、Saronicはいずれも自律型の軍事・防衛用途システムを手がけており、Physical AI投資の一翼を防衛領域が担っていることがわかる。


エグジット面ではSpaceXが圧倒的

2026年上半期のエグジット動向ではSpaceXの6月IPOが際立っている。調達額750億ドル、評価額1.77兆ドルという規模は歴史的な水準だ。他にも宇宙情報企業のHawkEye 360が4.16億ドル、自律型ドローンメーカーのAevexが3.2億ドルをIPOで調達した。

M&A面では、自動運転技術企業のMobileyeがイスラエルのヒューマノイドロボット企業Mentee Roboticsを約9億ドルで買収した。MobileyeはこのディールをPhysical AI戦略と明示的に結び付けており、自動運転にとどまらない方向性を示している。


投資家が語る「なぜ今か」

Edison Partnersのゼネラルパートナー、Ryan Zieglerは、Physical AIの機会はロボティクスや防衛だけでなく、製造、サプライチェーン、農業、公益事業、政府など幅広い分野に広がると述べた。変化の核心はAIがセンサーデータを大規模かつ高速に処理して有用なオペレーショナルインサイトを生成できるようになった点にあり、それを支えるハードウェアコストが低下していることだという。

「今やスマートフォンにもLIDARスキャナーが搭載されており、物体や空間をマッピングする能力が民主化されている」(Ryan Ziegler)

LIDAR(Light Detection and Ranging)はレーザー光を使って周囲の距離・形状を三次元計測するセンサー技術で、自動運転やロボットの空間認識に広く使われている。かつては高価な専用機器だったが、スマートフォンへの搭載(Apple LiDARなど)が示すようにコストが急速に低下している。

Zieglerはこの変化をクラウドインフラがSaaSにもたらした変革に例え、「ハードウェアはソフトウェアとデータのデータインテリジェンス・フライホイールを生み出す流通モデルになる」と説明する。ハードウェアを販売するビジネスではなく、ハードウェアをデータ収集の接点とみなす視点だ。

Eclipse CapitalのパートナーJoe Fathは、Physical AIを「現実世界で知覚・推論・行動するシステムに組み込まれたインテリジェンス」と定義し、単独のLLMプロバイダーへの投資は避けると述べた。同社の投資対象はチップ・コンピュート・エネルギー・データセンターなどの「インフラ側」と、AIを活用して物理世界に新たなビジネスを構築する「アプリケーション側」の両方だという。

Fathが強調するのは技術の優位性よりも商業スケールでの信頼性だ。「顧客が重視するのは運用効率、信頼性、収益であり、技術的な洗練度だけではない」とし、技術をそれ単体で終わらせず事業に転換できる企業が最も価値を獲得すると見ている。


Physical AI分野は、ソフトウェアAI投資の次の波として明確に位置づけられつつある。数字のインパクトの大部分はWaymoという1社に依存しているとはいえ、Anduril・Shield AI・Saronicといった防衛系、MobileyeによるM&Aなど、複数のセクターで大型案件が相次いでいる事実は無視できない。投資家コメントが示すとおり、VC側でもソフトウェア・インターネット専業からPhysical AI領域へのシフトが起きており、2026年後半以降の動向が注目される。

詳細はVCs Pour Billions Into Physical AI As The Next Wave Of AI Investing Takes Shapeを参照していただきたい。