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ビジネス・マーケット

AIは「作る」より「使う」時代へ — 推論市場がトレーニング市場を逆転、2030年には2.5倍の規模に

8月19日、Techstrong.aiが「Report: Size of Managed AI Inference Market Eclipses AI Training」と題した記事を公開した。調査会社Futurum Groupのレポートをもとに、マネージドAI推論(AIインフェレンス)市場がAIトレーニング市場を2025年末に初めて上回り、2030年には推論市場1,068億ドル対トレーニング市場422億ドル——約2.5倍の差にまで広がるという予測を詳述している。

8月19日、Techstrong.aiが「Report: Size of Managed AI Inference Market Eclipses AI Training」と題した記事を公開した。調査会社Futurum Groupのレポートをもとに、マネージドAI推論(AIインフェレンス)市場がAIトレーニング市場を2025年末に初めて上回り、2030年には推論市場1,068億ドル対トレーニング市場422億ドル——約2.5倍の差にまで広がるという予測を詳述している。


推論市場がトレーニング市場を逆転、2025年末に「クロスオーバー」完了

Futurum Groupのレポートによると、2025年末時点でマネージドAI推論市場は231億ドルに達し、AIトレーニング市場の163億ドルを初めて上回った。

なお、Futurum Groupは企業・クラウド・AI領域に特化した独立系アナリスト調査会社であり、本レポートは同社が企業AI意思決定者を対象に実施した定量調査に基づいている。調査対象者の詳細な属性(地域・業種内訳など)は元記事では開示されていないが、対象規模は820人のエンタープライズAI意思決定者とされている。

この逆転自体は業界内でかねて予想されていた。しかし、Futurum GroupのAIプラットフォーム担当プラクティスリードであるNick Patience氏は、そのスピードが市場の当初予測を大きく超えていたと指摘する。

「方向性は2年前から明らかだった。だが、クロスオーバーが2025年に完了したということは、企業がパイロット段階から本番運用へ、市場の予想よりも速く移行したことを示している。」
— Nick Patience(Futurum Group)

生成AIの急速な普及を背景に、ChatGPTに代表される大規模言語モデルのエンドユーザー利用が爆発的に拡大した結果、推論(inference)——すなわちすでに学習済みのモデルを用いて実際にアウトプットを生成する処理——に費やされるコンピューティングリソースとコストが急増している。GPU需給の逼迫もこうした流れを加速させており、クラウドプロバイダー各社が推論専用インフラへの投資を強化していることとも符合する。


2030年には推論市場が1,068億ドルへ——トレーニング市場の2.5倍

Futurum Groupの予測では、マネージドAI推論市場は2030年に1,068億ドル(CAGR 36%)に達する見込みだ。一方、AIトレーニング市場の2030年予測は422億ドル(CAGR 21%)にとどまる。

両者を比較すると、2030年時点で推論市場はトレーニング市場の約2.5倍の規模となる計算だ。タイトルにある「2.5倍」は、この1,068億ドル対422億ドルの比率を指している。成長率の差(36% vs 21%)も歴然としており、エンタープライズ投資の重心がモデルを「作る」フェーズから「使う」フェーズへと明確にシフトしていることを裏付ける数字だ。


クラウドへの依存が深まる実態

Futurum Groupが820人のエンタープライズAI意思決定者を対象に実施した調査では、プロバイダー管理型クラウド(マネージドクラウド)の採用率が、AI活用の「実験段階」では57%だったのに対し、「変革段階」では73%まで上昇している。

自社でAI推論モデルをセルフホストする組織も存在するが、多くの企業に共通する課題は社内AI専門人材の不足だ。この制約から、マネージドサービスプロバイダー(MSP)への依存が自然と高まる構造になっている。マネージドAIインフェレンスとは、モデルの実行環境・スケーリング・最適化をクラウドプロバイダー側が管理する形態を指し、AWS・Google Cloud・Azureといった主要プラットフォームがそれぞれ専用サービスを提供している。


次の焦点:クラウドから「エッジ」へ

記事では、AI推論の展開場所が今後多様化することも指摘されている。クラウドに加え、ネットワークエッジや最終的にはハンドヘルドデバイスへの展開が見込まれる。その場合、アプリケーションのレイテンシ要件に応じてどこで推論を走らせるかが主要な技術的判断となる。

また、次の2つのシナリオが現実的なものとして示されている点も注目に値する。

  • 蒸留(Distillation):大規模なファウンデーションモデル(基盤モデル)の知識を、より小型・軽量なモデルへ転移させる技術。エッジ展開において特に重要性が増している
  • フェデレーション(Federation):同一のファウンデーションモデルから派生した複数の推論モデルが連携・分散して動作する形態。クラウドとエッジにまたがるハイブリッド構成で活用が見込まれる

当初クラウドに展開された推論モデルがエッジへ移行するケースも増えており、推論インフラの設計はより複雑かつ戦略的な判断を要するものになりつつある。


エンジニアへの示唆

「トレーニングより推論」という市場の構造変化は、インフラ設計の優先順位にも直結する。モデルを作ることより、モデルをどこで・どう動かすかが事業競争力に直結する時代に入ったと言える。

マネージドクラウドへの集中傾向はコスト管理やベンダーロックインのリスクとも隣り合わせだ。推論コストはリクエスト数・モデルサイズ・レイテンシ要件によって大きく変動するため、自社の推論ワークロードの所在とコスト構造を把握しておくことは、エンジニアにとって避けられない課題になりつつある。クラウド・エッジ・オンプレミスのどこで推論を走らせるかという設計判断が、今後のシステムアーキテクチャの中核に位置付けられていくだろう。


詳細はReport: Size of Managed AI Inference Market Eclipses AI Trainingを参照していただきたい。