8月25日、Appleが「Apple introduces M6 and M5 Ultra for a big leap in performance and AI compute」と題した記事を公開した。新チップ「M6」と「M5 Ultra」の仕様・性能・AI処理能力について詳しく解説されている。
NVIDIA H100/H200を搭載したサーバーなしでLLMを動かしたい——そのニーズに対し、Appleは今回のチップ発表で明確な答えを出した。M5 Ultraを搭載するMac Studioは最大512GBの統合メモリと1.2TB/sのメモリ帯域幅を実現し、LlamaやMistral系の数百億パラメータモデルをまるごとメモリに乗せたまま推論できる環境をデスクトップPCとして提供する。M6はApple初の2nmプロセス採用、M5 UltraはMシリーズ初のクアッドダイ構成と、それぞれ設計上の大きな転換点を持つ。
M6:2nmプロセスで何が変わったか
M6の最大の変化は2nmプロセスへの移行だ。トランジスタ密度が高まり、同じダイサイズでより多くの回路を詰め込める。CPUコアとGPUコアはそれぞれM5比で2コアずつ増加している。
CPUは12コア構成で、シングルスレッド性能はM5比1.2倍・M1比2.4倍、マルチスレッドもM5比1.2倍。コードのコンパイルや大量ファイルのインデックス処理など、開発者が日常的に回す処理で効いてくる数字だ。
AI推論面では、Neural Engineを2基(各16コア)搭載する構成をMシリーズとして初めて採用した。ピーク演算性能は従来世代比で最大2倍となり、システムフレームワークが2基を自動で同時活用できるため、アプリ側で特別な対応をしなくても推論速度の恩恵を受けられる設計になっている。
12コアGPUには各コアにNeural Acceleratorが内蔵されており、AI向けのGPU演算性能はM5比で約30%向上・M1比では8倍超となる。オンデバイスLLMのプロンプト処理速度向上にも寄与するとAppleは説明している。
メモリ仕様は次の通りだ。
- 統合メモリ:最大32GB
- メモリ帯域幅:170GB/s(M5比10%増、M1比2.5倍)
M5 Ultra:クアッドダイ構成と512GBメモリの意味
M5 UltraはMシリーズ史上初のクアッドダイ構成を採用する。2つのデュアルダイM5 MaxをUltraFusionインターコネクト技術で接続して1チップとして動作させる仕組みで、OSやアプリからは単一プロセッサとして見える。今回はダイ間の帯域幅が4.4TB/s超、接続密度は従来の6倍以上に高まっている。
CPUは最大36コアで、シングルスレッドはM3 Ultra比1.25倍、マルチスレッドは1.3倍となる。
特に注目されるのはGPUとメモリの仕様だ。
- GPUコア数:最大80コア(各コアにNeural Accelerator内蔵)
- AI向けGPUピーク演算:M3 Ultra比4.5倍、M1 Ultra比6倍超
- グラフィックス性能:M3 Ultra比40%高速
- 統合メモリ:最大512GB
- メモリ帯域幅:1.2TB/s(M3 Ultra比50%増)
512GBの統合メモリと1.2TB/sの帯域幅は、数百億パラメータ規模のLLMをオンデバイスでメモリに丸ごと乗せて動かすことを想定した仕様だ。モデルの重みがメモリに収まることで、CPU-GPU間のスワップが発生せず推論レイテンシが安定する。クラウドAPIへの依存を減らしたいチームや、データをローカルに留めたいエンタープライズ向けの選択肢として現実的な水準に達しつつある。
Neural Engineは32コアで、Apple Intelligenceの処理をオンデバイスで完結させる。メディアエンジンはH.264・HEVC・ProRes(エンコード・デコード各4エンジン)・AV1デコードのハードウェアアクセラレーションに対応している。
開発者向けの対応
Appleの各フレームワークはM6・M5 Ultraの新ハードウェアに直接アクセスできる。対応フレームワークには以下が含まれる。
フレームワーク側がCPU・GPU・Neural Engineをまたいで自動的に最適化するため、開発者はApple Foundation Models・App Intents経由のApple Intelligence機能、あるいは独自のAIモデルをオンデバイスで実行・ファインチューニングできる。Xcodeでの複数シミュレータ同時起動や、大規模モデルのローカルファインチューニングが想定ユースケースとして示されている。
搭載製品と提供開始
M6はMac miniに、M5 UltraはMac Studioに搭載され、8月25日より提供が開始されている。LLMのローカル実行や大規模データ処理を検討している開発者・研究者にとって、今回のスペック更新は選択肢を大きく広げるものになりそうだ。
詳細はApple introduces M6 and M5 Ultra for a big leap in performance and AI computeを参照していただきたい。




