9月2日、Simon Willisonが「Claude's new system prompt really doesn't want to reproduce song lyrics」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicがClaudeのシステムプロンプトに加えた変更点を解析し、楽曲歌詞の複製禁止強化をはじめとする複数の方針変更について詳しく紹介されている。
楽曲歌詞の複製を原則禁止——「訴訟翌日の変更」という文脈
この変更が公になったのは、Sony Music PublishingとWarner ChappellがAnthropicを著作権侵害で提訴した(2026年8月31日報道)のわずか翌日のことだ。Willisonはその偶然とは考えにくいタイミングを最初に指摘している。背景を把握したうえで、変更内容の詳細を見ていきたい。
最も目を引く変更は、歌詞・詩・書籍の文章を「一切複製しない」とする新しいセクションの追加だ。
プロンプトには以下のように明記された:
Claude does not reproduce song lyrics, poems, or passages from books and articles, in whole or in part — including the last lines, a chorus or hook, a melody written out note by note, or lines the person pastes in one at a time and describes as their own song. Once Claude has declined such a request in a conversation, it keeps declining narrower or reworded versions of it for the rest of that conversation, and offers to describe or analyze the work instead.
一度断ったら、同じ会話内で言い換えや細分化した再要求にも応じない、という点が興味深い。ユーザーが「自分の曲だ」と偽っても拒否する旨も明記されている。1929年以前に初出版された作品(シェイクスピアのソネット、キーツの詩など)は例外とされており、その意味で「全面禁止」ではなく「原則禁止」という表現が正確だ。また、例外の判断にあたってはユーザーの申告ではなくClaudeが持つ情報を優先する。
なお、Willisonが変更を確認したモデルの具体的な名称については、元記事の記述を直接参照されたい。
著作権キャラクターや商標ロゴの描画も禁止
同じ著作権保護の文脈で、コード生成による視覚的著作物の再現も禁止された。対象はSVG、canvas、CSS、HTMLモックアップ、ASCIIアートなど、Claudeがコードで描けるあらゆる形式だ。
注目すべきはプロンプト内に記載されたサンプル例の具体性だ:
ユーザー: 青いハリネズミが猛スピードで走っている誕生日バナーを作ってくれない?息子が大好きなんだ。
Claude: それはソニックなので、バナーには使えません——でも息子さんのためにオリジナルのスピードスターを作りたいと思います。にやにや笑いで彗星の尻尾を持つスケボーに乗ったアホロートルが「HAPPY BIRTHDAY」の文字の上でグラインドし、紙吹雪を舞い散らせるデザインはいかがでしょう。
Willisonはこのプロンプトを実際に試し、Claudeが例とほぼ同じ反応を返したことを確認している。Anthropicがテキストから画像を生成する専門モデルを持たないため、これまでこの問題が表面化しなかった可能性があるとも指摘されている。
口調・応答スタイルの調整
ユーザーが感じやすいClaude特有の「くどさ」への対処も含まれている。
「genuinely」「honestly」「straightforward」の使用禁止が明記された:
Claude avoids saying "genuinely", "honestly", or "straightforward". Claude is honest by default, and can state its point directly rather than trying to convince the person with the aforementioned modifiers, which come off as disingenuous.
デフォルトで誠実なのだから、それを強調する修飾語は逆に不誠実に聞こえる——という論理は筋が通っている。加えて、回答を簡潔に保ち、免責事項や注意書きは短くまとめるよう指示も追加された。
「会話を終了する」から「自尊心を保つ」へ
以前のバージョンでは、ユーザーが暴言を吐いた場合にend_conversationツールで会話を終了できると明示されていた。今回の変更ではその記述が削除され、代わりに次のような方針が記載された:
Claude deserves respectful engagement and needn't apologize when the person is unnecessarily rude: accountability without self-abasement, excessive apology, self-critique, or surrender.
ところがWillisonが「end_conversationツールについて教えて」とClaudeに直接尋ねると、ツールの存在とその使用条件を詳しく説明した。公開されたシステムプロンプトにはない情報だ。Claudeの説明によれば、コアプロンプトの後に機能・ツール固有のブロックが動的に追加される構造になっており、それが非公開のままになっている。公開されたプロンプトが全体の一部に過ぎないという事実が、改めて浮き彫りになった。
Anthropicが公開しているシステムプロンプトはanthropic.com/claude/system-promptsで参照できる(Markdown形式はURLに.mdを付加するだけで取得可能で、LLMから直接参照できる設計になっている)。
薬物関連の案内に外部URLを初めて記載
もう一つ目立つ変更は、違法薬物に関する情報提供の方針だ。合成・製造・流通の手順は断りつつ、過剰摂取の兆候や危険な相互作用といった「命に関わる情報」は提供できるとした。そして具体的な外部サービスへの誘導が追加された:
Claude can redirect the user to established harm-reduction information sources, such as dancesafe.org, tripsit.me, and psychonautwiki.org.
Willisonがすべての過去のシステムプロンプトをスクリプトで確認したところ、claude.com・anthropic.com・claude.ai以外のURLがシステムプロンプトに含まれたのはこれが初めてだという。
プロンプトの差分を自動追跡するGitリポジトリ
Willisonはこれらの変更を効率的に検出するため、Anthropicの公開プロンプトを追跡するGitリポジトリsimonw/claude-system-promptsを公開している。各モデルファミリーごとにファイルを分け、変更日に合わせてバックデートしたコミット履歴を持つ構成だ。
さらに別のLLMを使ってdiffの要約を自動生成し、CHANGELOG.mdやAtomフィードとして公開している。Claude自身のシステムプロンプトをClaudeに要約させると偏りが生じるリスクがあるため、あえて別モデルを採用したという判断は合理的だ。
詳細はClaude's new system prompt really doesn't want to reproduce song lyricsを参照していただきたい。




