9月4日、The Next Webが「Coworker.ai launches OM2, an organizational memory layer promising to slash enterprise AI token burn by 9x」と題した記事を公開した。社内AIエージェントは起動するたびにSlackのスレッド、CRMエントリ、ドキュメント群をゼロからプロンプトに詰め込む——この「健忘症AI」の構造的な無駄が、企業のAIトークン予算の50%以上を食い潰しているとされる。Coworker.aiが発表したOM2(Organizational Memory 2)は、企業知識を事前計算してグラフ構造に蓄積しておくことでこのサイクルを根本から断ち切ることを狙う製品だ。
毎回コンテキストを再構築する「健忘症AI」の問題
エンタープライズAIの現場で静かに膨らんでいるコストがある。社内情報に答えるAIエージェントが起動するたびに、Slackのスレッド、SalesforceのCRMエントリ、膨大なドキュメント群をプロンプトウィンドウに詰め込む——この繰り返しだ。この「コンテキストの力技再構築」が、企業のAIトークン予算の50%以上を消費していると推定されている。
Coworker.aiが発表したOM2(Organizational Memory 2)は、このサイクルを根本から断ち切ることを狙う製品だ。
「事前計算された記憶」がコアアーキテクチャ
OM2の肝は、AIがクエリを受けるたびに情報を引っ張り直すのではなく、企業知識をあらかじめ構造化して蓄積しておく点にある。
Salesforceで案件がクローズされる、Slackで製品方針が変更される、会議の議事録で戦略決定が下される——こうした情報が発生するたびに、OM2はそれを「誰が関与したか」「何が決定されたか」「どのアカウントに影響するか」という離散的な事実として抽出し、パーミッション付きのニューラルグラフ(ノードとエッジで概念間の関係を表現するグラフ構造にニューラル表現を組み合わせた知識ストア)に書き込む。
このグラフは50以上のエンタープライズプラットフォームからデータを継続的に取り込み、常に最新状態を維持する。AIエージェントがクエリを受けると、ゼロからコンテキストを再構築するのではなく、この事前計算済みのグラフを参照する。
Coworker.aiが公表している数字は以下の通りだ:
- トークン消費量:9分の1に削減
- レスポンス速度:64%高速化
- 回答品質のユーザー選好率:**84.5%**(OM2の回答が好まれた)
モデルルーティングで最大51分の1のコスト削減
OM2にはさらに「Optimized Routing」エンジンが組み合わさる。これは、タスクの複雑さに応じて使用するLLMを動的に振り分けるしくみだ。単純なデータ検索は安価・高速なモデルに任せ、複雑な推論が必要な場合のみフロンティアモデル(GPT-4oやClaudeといった最上位モデルの総称)を使う。
最大51倍というコスト削減幅は、この2つの効果の掛け算として導かれる。事前計算されたコンテキスト層によるトークン削減(最大9倍)に、Optimized Routingによるモデル単価の最適化を組み合わせることで、理論上の上限として51倍の削減が生じるとCoworker.aiは説明している。
ベンダーロックインの回避とセキュリティ
OM2が「組織の知識を単一ベンダーのエコシステムに閉じ込めない」設計になっている点も特徴だ。MCP(Model Context Protocol)(AnthropicがオープンソースとしてリリースしたAIエージェントとデータソースを接続するための標準規格)またはネイティブアプリ経由で、Claude、ChatGPT、Gemini、Perplexity、あるいは自社開発エージェントに直接接続できる。
セキュリティ面では、グラフ内のすべてのノードとエッジにアクセスポリシーが直接埋め込まれる。ジュニアエンジニアがエージェントに質問しても、CEOのM&A関連情報には触れない設計だ。インフラはシングルテナント(顧客ごとに独立した隔離環境を用意する方式で、マルチテナント型と異なりリソースを他社と共有しない)の隔離環境で動作し、SOC 2、GDPR、CASA Tier 2に準拠している。
早期導入企業のRapidSOS(緊急通報インフラを提供するスタートアップ)では、Revenue Operationsチームがこれまで手動でSalesforceのレコードと通信ログを突き合わせて数時間かけていた作業が、「質問した瞬間に最新かつ正確な答えがある」状態になったと報告している。元記事では具体的な時間削減の数値は開示されていないが、「数時間単位の手作業がゼロになった」という定性評価が示されている。
「トークンを多く燃やすインセンティブを持たない」
CEOのAlex Calder氏はリリースでこう述べている:
「トークンコストは爆発的に増えているのに、ほとんどのAIは実際の企業の中でどう機能すべきかをまだ理解していない。我々はAI業界の多くとは異なり、ユーザーにトークンを多く燃やさせることにインセンティブがない。少なく使わせることにインセンティブがある」
Coworker.aiには、Google元SVPのJeff Huber氏(元Google検索・広告担当上級副社長)と、テクノロジー投資家のRamtin Naimi氏が出資している。コンテキストウィンドウを大きくする方向へ競い合うLLM各社の動きとは対照的に、「より大きな脳ではなく、より良い記憶」というアプローチを取るスタートアップだ。
詳細はCoworker.ai launches OM2, an organizational memory layer promising to slash enterprise AI token burn by 9xを参照していただきたい。




