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Deep Dive

AIコストを80%削減——AT&TがオープンモデルへAI利用の40%を移行、OpenAIとAnthropicの価格モデルに構造的圧力

9月6日、Inside AIが「AT&T Leads Corporate Shift to Open-Source AI as Usage Hits 58%」と題した記事を公開した。AT&Tをはじめとする米国企業がオープンソース/オープンウェイトAIモデルへと急速に移行し、AIコストを最大80%削減している実態について詳しく紹介されている。

9月6日、Inside AIが「AT&T Leads Corporate Shift to Open-Source AI as Usage Hits 58%」と題した記事を公開した。AT&Tをはじめとする米国企業がオープンソース/オープンウェイトAIモデルへと急速に移行し、AIコストを最大80%削減している実態について詳しく紹介されている。


AT&TのAIコスト、最大80%削減の実態

AT&Tの最高データ・AI責任者(CDAO)であるAndy Markusによれば、同社のAI利用に占めるオープンモデルの割合は今年初めの**20%から現在40%へと倍増した。数ヶ月以内に60%**に達する見込みだという。

「さらに、もっと高い割合になると見ている」——Andy Markus

コスト削減効果は明確だ。AT&Tは今年初めと比較して、AIコストを**最大80%削減できているとMarkusは述べた。同社はGoogleのGemmaとMetaのLlama**を採用し、通話の文字起こしやカスタマーサービス向けのツールを構築している。中国製モデルも調査対象としているが、規制およびデータプライバシー上の懸念から実際の利用は見送っている。


業界全体の数字:1年で10%→58%

**OpenRouter(複数のAIモデルへのAPIアクセスを提供するサービス)のデータによると、AIワークロード全体に占めるオープンモデルの割合は、1年前の10%から現在の58%**へと急拡大した。AT&T以外にもAirbnb、Deloitteが移行を主導している。

転換点となったのは、DeepSeek-V3のリリースだ。大幅に少ない計算リソースでクローズドモデルと対抗できることを示し、業界の前提を覆した。現在、Moonshot AIDeepSeekAlibabaといった中国系オープンモデルは、主要クローズドモデルの能力の80〜90%を、価格は20%程度で実現していると、Atlas CloudのCEO Jerry Tangは説明する。

「マツダで十分目的地に着ける。マセラティへの投資はペイしない」——Jerry Tang


AT&Tの事例から見る:「オープンウェイト」と「オープンソース」の違い

AT&Tが採用するGemmaやLlamaは、しばしば「オープンソース」と呼ばれるが、厳密にはオープンウェイトモデルだ。両者には重要な違いがある。

  • オープンソース:モデルのコード(アーキテクチャや学習ロジック)を公開
  • オープンウェイト:モデルの挙動を決める数値パラメータのみを公開

企業にとって実用上のメリットは大きい。独自の学習データやアーキテクチャを開示せずにファインチューニングできるため、特定業務への特化が容易になる。AT&Tの通話文字起こしシステムはその典型例だ。自社データを外部のAPIに送出せずにモデルを運用できる点は、通信事業者のような厳格なデータプライバシー要件を持つ企業にとって特に重要な利点となる。

また、WebAIのCEO David Stoutによれば、オープンモデルの一部はスマートフォンやラップトップ上でも動作するようになっており、インフラコストという最後の障壁も低くなりつつある。一方、クローズドモデルは高度化が進み、必要な計算リソースとコストは増大し続けている。


OpenAIとAnthropicへの構造的な圧力

この潮流は、IPO(新規株式公開)を準備中とされるOpenAIAnthropicに対して構造的な圧力をかけている。両社のビジネスモデルはサブスクリプション料金と従量課金に依存しており、無料または低コストのオープン代替品が業務用途で「十分」とみなされるようになれば、その差別化の根拠が侵食される。元記事が指摘するように、現状ではコーディングや画像生成といった高度タスクではクローズドモデルが依然として優位にあるが、シンプルな用途や特化型ワークロードではオープンモデルが急速に台頭しており、「クローズドでなければならない」領域の境界線が収縮し続けている点が、両社にとって中長期的な脅威となる。

AnthropicのCEO Dario Amodeiは安全保障上の観点から厳格なAI規制を主張している。これに対しMetaのCEO Mark Zuckerbergは以下のように反論する。

「外国製オープンソースモデルへのアクセス制限は有効な解決策だと思わない。米国のオープンソースモデルが世界最高水準であることを目指すべきだ」

Metaは最新AIシステムをオープンウェイトモデルとして公開し、他の主要米国モデルより低コストで提供すると発表した。OpenAIとAnthropicへの価格面での直接的な挑戦となる。


Nvidiaによるオープンエコシステムへの布石

この文脈で見逃せないのが、Nvidiaによる**Hugging Face129億ドル**での買収発表だ(元記事公開と同時期の報道)。Hugging Faceはオープンモデルの最大のライブラリおよびコミュニティプラットフォームであり、数万件のモデルやデータセットが集積している。NvidiaがこのプラットフォームをGPU事業と垂直統合することで、オープンAIエコシステムの中心的インフラを押さえる構図が生まれる。オープンモデルの普及が進むほど、それを動かすGPUとその配布プラットフォームの価値が高まるという点で、Nvidiaの今回の動きはオープンシフトの加速と表裏一体の戦略と言える。


現状、コーディングや高度な推論タスクではクローズドモデルが依然として優位にある。しかし、業務特化型ワークロードと価格感度の高い用途においては、オープンモデルの採用が標準的な選択肢へと変わりつつある。AT&Tの事例はその先行指標として位置付けられる。

詳細はAT&T Leads Corporate Shift to Open-Source AI as Usage Hits 58%を参照していただきたい。