9月16日、CBS Newsが「OpenAI backs measure that would require independent audits of AI models」と題した記事を公開した。AI開発をリードするOpenAIが、自社モデルへの第三者独立監査を義務付ける連邦法案を支持するという、一見逆説的な動きが業界内外で注目を集めている。「規制は技術革新の妨げ」という従来の業界論理とは一線を画す姿勢であり、Sam Altman率いるOpenAIがなぜ今、政府規制の受け入れに踏み込んだのかが問われている。
OpenAIが連邦レベルの規制を初めて支持
OpenAIのチーフグローバルアフェアーズオフィサー(最高渉外責任者)であるChris Lehaneは、米議会に提出されているFRONTIER法案の一部を支持する立場を表明した。同社がAIモデルへの第三者監査を義務付ける連邦レベルの規制を支持するのは、これが初めてである。
OpenAIはこれまで、州レベルのAI規制法案を支持してきた実績はある。しかし今回の声明は、独立した第三者機関がAI開発者の作業を評価することを義務付ける連邦法案への支持という点で、一線を画する。
Lehaneは、ワシントンD.C.で行われた議員との円卓会議でこの立場を表明した。なお、OpenAIのCEOであるSam Altmanはかねてから議会公聴会に出席し、AI規制の必要性を訴えてきた人物であり(2023年5月の上院公聴会など)、今回の法案支持表明はその延長線上にある動きとも読める。元記事のURLにも「sam-altman」が含まれており、Altmanの従来からの規制容認姿勢がOpenAI社としての立場に反映されたものと考えられる。
FRONTIER法案の概要
FRONTIER法案は、カリフォルニア州選出の共和党議員Jay Obernolteと、マサチューセッツ州選出の民主党議員Lori Trahanが共同提案した超党派の法案だ。共和・民主の両党議員が連名で提出している点は、AI規制をめぐる党派対立が根強い米国議会において注目に値する。
主な内容は以下の通りである。
- 独立機関による監査の義務化:AI企業の安全プロトコルが、法案の定義する「許容可能な壊滅的リスクのレベル」を十分に低減できるものかどうかを、独立組織が判定する。
- モデルに関するレポートの公開義務:AI開発者は自社モデルに関する報告書を公開しなければならない。
- 安全インシデントの開示義務:問題が発生した際の情報開示を義務付ける。
ただし、OpenAIは法案全体を支持しているわけではなく、あくまで第三者監査の部分を支持しているとのことだ。どの条項を受け入れ、どの条項に異議を唱えるのかについては、今後の議会審議の中で明らかになっていくだろう。
「政府が主導しなければ、企業はやらない」
OpenAI自身も、規制の必要性を公式に認め始めている。Lehaneは9月9日のブログ投稿で、AIの能力向上に伴うリスクについて次のように記した。
「モデルをより有用にする能力は、リスクも伴う。そしてそれは、一部のフロンティアラボに限定されたままではいられない。」
一方、AI開発の減速を求めるグループ「PauseAI UK」の創設者でAI安全性研究者のJoseph Millerは、今回の動きを評価しながらも、AI企業が自発的に十分な安全措置を講じる可能性には懐疑的だ。
「政府が介入しなければ、おそらく企業はやらないだろう。政府が主導する必要がある。」(CBS Newsへのコメント)
業界主導から規制受容へ — 国際的な文脈
大手AI企業が政府による第三者監査の義務化を自ら支持する姿勢は、業界の立場の変化を示すものとして受け止められている。これまでAI開発の現場では「自主規制で十分」という声が根強かった。OpenAIの今回の表明は、その流れが変わりつつあることを示す一例だ。
国際的な文脈で見ると、EUのAI Actはすでに2024年に成立しており、高リスクAIシステムに対する第三者適合性評価や透明性要件を義務化している。米国はこれまで連邦レベルの包括的AI規制を持たず、NIST AI RMF(AIリスク管理フレームワーク)のような任意基準に依拠してきた。FRONTIER法案はそのギャップを埋める試みの一つであり、OpenAIの支持表明はこの立法の追い風となる可能性がある。
※編集部の考察:GoogleやMeta、Anthropicといった他の大手AI企業が同法案に対してどのような立場をとるかは現時点では明らかでない。業界全体の賛否の構図が今後の審議を大きく左右するだろう。
もっとも、OpenAIがFRONTIER法案の全条項を支持しているわけではない点は押さえておく必要がある。「規制を受け入れる姿勢を見せつつ、都合の悪い条項は排除する」という企業ロビー活動の一形態である可能性も、冷静に見ておく必要がある。
詳細はOpenAI backs measure that would require independent audits of AI modelsを参照していただきたい。




